モルホリン

モルホリンとは

モルホリンの基本情報

図1. モルホリンの基本情報

モルホリン (英: morpholine) とは、分子式がC4H9NOで表される環状構造を持つ有機化合物です。

テトラヒドロ-2H-1,4-オキサジン (英: Tetrahydro-2H-1,4-oxazine) とも呼ばれます。モルホリンは皮膚に対する刺激性や引火性を持つため、取り扱いには注意が必要です。長期的なモルホリンの暴露で、腎臓や肝臓へ悪影響を与える可能性も指摘されています。

労働安全衛生法で名称等を表示・通知すべき有害物質、危険物・引火性の物に、消防法で第4類引火性液体、第二石油類水溶性液体に指定されています。

モルホリンの使用用途

モルホリンは加硫促進剤として用いられます。加硫促進剤は合成ゴムの製造過程に必須で、世界中で大量に使用されてきました。しかし、モルホリンを加硫促進剤として用いる際に発生するニトロソアミンは発がん性があり、近年ではモルホリンの使用に対する規制が強化されつつあります。それに伴い、ニトロソアミンを発生させない新たな加硫促進剤の開発が進められています。

モルホリンは様々な医薬品の骨格としても利用可能です。モルホリンを用いて製造される医薬品は、鎮痛剤、鎮静剤、局所麻酔薬などです。

モルホリンの性質

モルホリンの融点は−5°Cで、沸点は129°Cです。常温常圧でアミン臭を持った無色の液体で、吸湿性を有します。引火点は38°Cで、発火点は310°Cです。

水溶性が比較的高いです。窒素は塩基性を有し、水溶液中では水素イオンを受け取って陽イオンになり、モルホリニウムイオン (英: morpholinium ion) が生じます。モルホリニウムイオンは、pKa = 8.33です。

モルホリンの構造

モルホリンはアミンとエーテルの両方の官能基を持っています。シクロヘキサンの持つ炭素原子の中で向かい合う2つの炭素原子が、酸素原子と窒素原子によって置換された構造を有します。

モルホリンは複素環式アミンの一種です。分子量は87.12で、密度は1.007g/cm3です。

モルホリンのその他情報

1. モルホリンの合成法

モルホリンの合成

図2. モルホリンの合成

工業的にモルホリンは、主にジエタノールアミン (英: Diethanolamine) を硫酸で脱水して生産されています。ジエタノールアミンはDEAと略される場合もあり、ジオールと二級アミンの有機化合物です。

2. モルホリンの塩基性

モルホリンの反応

図3. モルホリンの反応

モルホリンの共役酸はモルホリニウムと呼ばれます。例えばモルホリンを塩酸で処理すると、モルホリン塩酸塩 (英: Morpholine Hydrochloride) を生成可能です。モルホリン塩酸塩は無色の液体で、弱いアンモニア臭または魚臭があります。モルホリンの名称は、ルートヴィヒ・クノール (英: Ludwig Knorr) がモルヒネ (英: morphine) の構造の一部だと誤ったためです。

モルホリンは一般的な二級アミンと同じ化学反応が起こります。ただしエーテル酸素が存在するため、窒素原子の電子密度が低下して、構造的に類似したピペリジン (英: piperidine) のような二級アミンよりも求核性や塩基性が低いです。そのため安定したクロラミン (英: chloramine) を形成します。

3. モルホリンの反応

有機合成でモルホリンは広く使用されています。具体的には、抗生物質のリネゾリド (英: linezolid) 、抗がん剤のゲフィチニブ (英: Gefitinib) 、鎮痛剤のデキストロモラミド (英: dextromoramide) の製造に用いられます。

一般的にモルホリンは、エナミン (英: Enamine) の生成に利用可能です。エナミンを合成中間体として、多種多様な化合物を合成できます。工業的にモルホリンは、化学反応の溶媒にも使用されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0995.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です