タッピングペースト

タッピングペーストとは

タッピングペーストとは、塗布性と保持力を改善した切削油剤です。

広範囲な材質に適応可能で、タップ作業や低速切削作業等に最適です。一般的に、塩素タイプと非塩素タイプが市販されています。塩素タイプは、加工性が優れますが、加工により発生した熱によりダイオキシンが発生する可能性があると指摘されています。一方で、非塩素タイプは、塩素タイプに比べて有害性はありませんが、加工性が劣ります。使用方法によって適切なタイプを選定する必要があります。

タッピングペーストの使用用途

タッピングペーストは「ドリル」「リーマ」「ねじ切り作業」など、あらゆる低速切削作業や難削材に利用可能です。また、材質によって油種を変える必要がありません。例えば「炭素鋼」「合金鋼」「ステンレス」「鋳鉄」「アルミ合金」などにも適用でき、汎用性が高いです。特に「ステンレス」「耐熱鋼」などの難削材のタッピングには絶大な威力を発揮します。

さらに、常温でペースト状のため、取り扱いが容易で横穴加工にも適します。タッピング作業のみではなく、あらゆる低速切削作業に利用が可能です。刷毛塗り、筆付けが可能なため、ねじ切り、ヘール仕上げ、フライス、ドリル、リーマ、ダイス通し、オーバーバイブねじ切りなど、切削困難な場合こそ十分な効果を発揮します。

タッピングペーストの原理

金属材料の加工時に、熱や切子が発生します。それらは、作業環境を悪化させたり、道具・工具の変形・破損につながります。そこで、金属材料を切削する際に、切削油を用います。この切削油は、摩擦を抑える潤滑効果、発生した熱を放冷する冷却効果、切削により発生した微粉を洗い流すクリーニング効果があります。そのため、切削油は、常温ではペースト状のため、液状の切削油のように作業時に飛び散りません。したがって、大量に使用する必要がありません。

また、取り扱いが容易で、タップしたい部分に保持できるため面倒な作業が不要です。さらに、タップ加工をほどこしている時に発生する熱で、ペーストが液体に変化します。これにより、切削箇所に浸透するため、手加工やタッピング機での加工に最適です。

硫黄および塩素系の化学物質で構成されているため、粘性が高過ぎず切削がスムーズです。ただし、銅板腐食の中でも強い効果を発揮する活性硫黄系は、銅系において変色するので、および銅合金には適用できません。リーマ、タップ、ブローチ等の低速で仕上げ面重視のタイプなので、加工する材質や加工方法で選んだほうが好ましいです。

タッピングペーストの使い方

タッピングペーストは、ブラシや刷毛に少量つけてタップの刃先や下穴に塗って使用します。あまり大量につけすぎると穴加工時の視認性が悪くなる他、清掃が大変になり効率が悪くなりますので少量で十分です。

また、冬季などの寒い環境だとペーストが固まりやすくなり、浸透性や食いつきが低下するので不水溶性切削油などを加えて攪拌することで適切な濃度に調整して使用します。

穴加工ごとにタップに塗布する必要があるので、マシニングセンタを使用した連続的なタッピング加工にはタッピングペーストではなく切削油を常時出して加工します。

タッピングペーストのその他情報

タッピングペーストの洗浄

タッピングペーストの洗浄には、脱脂洗浄剤を使用します。

加工後の切りくずをエアブローで除去し、ウエス等で穴からはみ出したタッピングペーストを拭き取ります。

固形状のため切削油を使用した場合と比べると加工後の穴や表面、治具などに余ったタッピングペーストが付着しがちで汚れが頑固なため、脱脂洗浄剤を使用して清掃する必要があります。

タッピングペーストは材料を問わず優れた保護性能と潤滑性を発揮する反面、加工後の清掃に手間がかかるといったデメリットがあります。

ハンドタップにて少量の穴加工を手で加工するときはタッピングペースト、マシニングセンタを用いて大量のタッピング加工をするときは切削油といった使い分けが必要です。

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