導電性ペースト

導電性ペーストとは導電性ペースト

導電性ペーストとは、金属粒子 (フィラー) と有機物 (各種樹脂) 、界面活性剤やポリマー (バインダ) の混合物です。

導通させたい部分に導電性ペーストを塗布し、熱処理することで接合と同時に電気が通るようになります。導電性を付与する方法としては、他にもはんだづけや導電性テープによる接着などがありますが、導電性ペーストに期待される要素として、鉛フリー、低温化、耐熱性、軽量化などが挙げられます。

特に近年では、低温化の技術革新が目覚ましく、半導体分野での応用が盛んに行われています。はんだの溶融温度が約183℃ (鉛フリーで約217℃) であるの対し、現在、導電性ペーストでは、処理温度が100℃を切る素材も実用化されています。また、導電性ペーストでは、はんだによる接着よりも柔軟性があるのも特徴です。

導電性ペーストは、低温で容易に使用できるメリットがあるため、応用的な場面だけでなく、理学実験にも広く使用されています。例えば、走査型トンネル顕微鏡 (STM) など試料台と試料間に導通させる必要がある場所で、導電性ペーストを塗布することで、試料に過剰に熱を与えることなく、接合が可能となります。

導電性ペーストの使用用途

導電性ペーストは主に、スマートフォンやPCなどに用いられる電子機器の導電接着剤として用いられます。また、理学実験にも使用される場合が多いです。

電子機器の小型化や軽量化が進む中、導電接着を行う際の低温化が半導体業界の必須課題となりました。導電性ペーストが鉛フリーであることに加え、そのような背景も導電性ペーストによる低温接着が脚光を浴びている理由として挙げられます。

また、導電性ペーストはドライブレコーダーなどの車載モジュールにも使用されており、こちらは導電性ペーストの優れた耐熱性により日中高温になる車内でも製品の品質劣化防止が期待されています。

導電性ペーストの原理

導電性ペーストは、導電率の高い金属のナノ粒子を有機物内に分散させ、樹脂の硬化により、接合した物体間に導電性を付与することができます。導電性ペーストに混ぜられる金属粒子としては、熱伝導率の高いAg (銀) が使用されているものが主流です。

導電性ペーストに銀の粒子を使用したものは、銀ペーストと呼ばれます。その他の金属としてNi (ニッケル)、Au (金) 、Cu () 、C (カーボン) などが挙げられます。

一方、導電性ペーストに混ぜられる有機物やポリマーは用途や各メーカーにより多種多様です。例えば、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられます。

凝集対策として金属ナノ粒子と有機物を混ぜていますが、混ぜる有機物やポリマーの組み合わせで導電性ペーストの安定性や耐熱性などの特性は大きく変化します。

導電性ペーストの選び方

導電性ペーストは、処理温度が低いため、高温に加熱される場所で使用することはできません。しかし、中には高温耐性の高いものやデガスが少ない製品もあるため、用途に合わせて導電性ペーストの種類を選択することが重要です。

導電性ペーストは熱処理を施さなければ、有機物で被覆されているため、導電性がないことも特徴として挙げられます。種類によっては、熱処理を施さずに乾燥させるだけで、樹脂が硬化して使用できるものもあります。使用されるバインダーの種類により、作業性や長期保存安定性、硬化条件、接着強度、耐湿耐熱性などが異なるため注意が必要です。

導通させる場所に合ったバインダーが使用されている導電性ペーストを使用することをおすすめします。保存には冷蔵が必要なものや、長期間保存していると硬化してしまい使用できなくなくなってしまう場合もあるため、使用している導電性ペーストの取扱説明書を確認する必要があります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep/19/4/19_234/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/11/1/11_1_93/_pdf/-char/ja
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