クラッド鋼

クラッド鋼とは

クラッド鋼

クラッド鋼とは、母材の片面に異種類の鋼を重ね合わせた複合材料です。

母材には炭素鋼や低合金鋼が用いられます。異種金属接合により、単体の金属にはない機能も発現可能です。新規の機能発現だけではなく、高価な金属に安価な金属を組み合わせることで、コストダウンも実現できます。

母材と鋼を組み合わせた後に、加熱と延伸の実施により製造されます。クラッド鋼の製造は古くからあり、日本刀や包丁にも技法が用いられています。

クラッド鋼の使用用途

クラッド鋼は、産業において幅広く使用されます。

1. 重要設備

化学プラントなどの重要設備では、高温高圧や腐食物質を取り扱うため材料には耐食性が求められます。クラッド鋼はそのような環境下でも耐食性を発揮するため、安全かつ長期にわたる設備の運用が可能です。

2. 海洋プラントや船舶の構造材料

海洋プラントや船舶の構造材料としても使用されます。通常の鋼材料は、海水中の塩分や海洋生物からの侵食によって腐食しやすくなりますが、クラッド鋼は表面のステンレス鋼によって腐食から守られて耐久性が高いです。

3. 包丁

包丁に使用される場合もあります。クラッド鋼で作製した包丁は、刃の部分のみ高硬度の炭素鋼を使用し、それ以外の部分は軟質なステンレスなどを使用しているため、落下した場合も欠けや全体の折れなどが起きにくいです。また、高硬度部分が限られた範囲に限定されており、比較的簡単に研ぐことが可能です。

クラッド鋼の原理

クラッド鋼は母材と鋼を組み合わせた後に、加熱をすることで、異種素材が接着されます。加熱方法は熱間圧延、溶接、爆発圧着などがあります。

1. 熱間圧延

熱間圧延は、異種金属を圧力によって接合する方法です。圧力をかけることで金属原子が互いの材料側に入り込み、界面で剥離しにくくなります。最後に圧延し、必要な厚さまでクラッド鋼を伸ばします。

2. 溶接

溶接は母材側の表層を熱で溶かし、その後合わせ材料側の表層も熱で溶かして貼り合わせる方法です。用途や合わせ材料の性質により、合わせ材料側の溶かし方を変える必要があります。

3. 爆発圧着

爆発圧着は、爆薬が爆発する際の瞬間的な高エネルギーを利用して、異種金属を瞬間的に接合させる方法です。熱間圧延や溶接が不可能な金属同士の接合に用いられます。鋼とアルミニウム間の接合などで使用され、加熱加工が難しい素材について適用が可能です。

クラッド鋼の種類

クラッド鋼は組み合わせる素材に応じて様々な種類があります。以下はクラッド鋼の種類一例です。

1. ニッケル合金クラッド鋼

ステンレス鋼に、ニッケル及びニッケル合金を貼り合わせたクラッド鋼です。ニッケルはピンホールができにくく、耐食性に優れます。また、チタンよりも製造コストが抑えられます。主な用途はコネクターや輸送ラインパイプです。

2. 銅合金クラッド鋼

ステンレス鋼に、銅及び銅合金を貼り合わせたクラッド鋼です。優れた電気特性を示し、ニッケルよりも密度が小さいため、軽量化に繋がります。主な用途は同軸ケーブルの芯やダイオードのリード線など、導電性を求められる製品です。

3. チタン合金クラッド鋼

ステンレス鋼に、チタン及びチタン合金を貼り合わせたクラッド鋼です。ニッケル同様、耐食性に優れます。特に海水や高腐食性溶液を取り扱う環境下で有効です。主な用途は海水淡水化装置などです。

4. アルミクラッド鋼

アルミニウムに鉄鋼材料を張り合わせたクラッド鋼です。比重を半分以下に軽量化できるため、自動車などのモビリティ業界で軽量化による燃費の向上が期待できます。また、アルミニウム合金の使用量を減らすことが可能で、材料コストも下げられます。

強度としても鋼材が使用されているため、アルミニウム合金よりも高い機械強度が要求される構造部材としても広く利用できるのがメリットです。アルミニウム合金も鉄鋼材料も成形加工性に優れるため、両材料から構成されるアルミクラッド鋼も容易に成形加工が可能です。

クラッド接合後の板材を曲げ加工プレス加工することで、比較的複雑な形状でもクラックなしでの成形加工ができます。鉄鋼材料とアルミニウム合金を高温に加熱し、拡散により接合するため、薄く脆い中間層の形成も少ない点もメリットの1つです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/53/1/53_27/_pdf
https://www.jfe-steel.co.jp/products/atuita/b10.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/53/1/53_36/_pdf
http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0050020660
https://www.kobelcokaken.co.jp/tech_library/pdf/no02/d.pdf

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