ベーンポンプ

ベーンポンプとは

ベーンポンプ

ベーンポンプとは、ベーンと呼ばれる平板や羽根状板を複数個用いて、ポンプ内体積を変化させて輸送する容積式ポンプです。

偏心ローターの遠心力によってベーンが遠心方向に伸びます。このとき、ベーン間の流体は体積が変化し、吸い込んだ流体を圧縮して吐き出すことでポンプとして機能します。

構造がシンプルかつ低騒音で安全性が高く、比較的低価格の製品が多い点が特徴です。

ベーンポンプの使用用途

ベーンポンプは、産業においてさまざまな用途で使用されます。以下はベーンポンプの使用用途一例です。

  • 半導体製造工程における洗浄液や冷却水の輸送
  • 潤滑剤・潤滑油の輸送
  • 飲料水の工場における飲料水の輸送
  • 印刷機のインクの輸送
  • 自動車の油圧システムにおける動作油の輸送

ベーンポンプ選定の際は、吐き出し量や動作時の圧力、使用する電源、サイズ、騒音の度合いなどを考慮する必要があります。

ベーンポンプの原理

ベーンポンプは、複数枚のベーンが付いた偏心ローターとケージング、吸い込み口、吐き出し口で構成されます。ベーンは遠心方向に動作し、スプリングを介してローターの接合部に取り付けられます。このスプリングによってケージングに押さえつけられている製品が多いです。

ベーンポンプ回転時は、吸い込み口から吸い込んだ流体がベーン間に流れ込みます。ベーン間の流体は吸い込み口よりも低圧であるため、流体が流れ込みます。

吸い込まれた流体の移動中にベーン間体積が減少して圧力が高くなります。高圧となった流体を吐き出し口から出すことで、ポンプとして揚程を与えます。構成部によって機能が異なるため、使用される素材も異なります。

1. ベーン材質

ベーンは最も摩耗する構造部のため、耐摩耗性に優れる素材が求められます。同時に耐焼付き性と相手材への攻撃性が低いことも重要です。

この要求を満たす素材として、SUS304、SUS306などのオーステナイト系ステンレス鋼が広く利用されています。オーステナイト系ステンレス鋼は耐食性と耐摩耗性に優れ、成形性も良いことから高い精度が必要なベーンにマッチした素材です。

2. ローターシャフト材質

ローターシャフトは回転部品のため、優れた耐摩耗性と耐食性が求められます。そのため、SUS304・SUS306などのオーステナイト系ステンレス鋼や、SCM435などの比較的安価な低合金鋼が利用されます。形状は円筒でシンプルなため、ベーンほど加工性が高い必要はありません。

3. ケーシング材質

ローター部分を覆う部品はケージングと呼ばれ、FCD450などの黒鉛鋳鉄やSC460などの炭素鋼鋳鋼の鋳物が使用されます。ローターやそのほかの部品を固定し支える機能が求められ、構造強度は求められます。

ただし、ベーンやローターシャフトのように耐摩耗性の要求が高くないことが特徴です。軽量化のニーズが高い自動車用途では鋳鋼の代わりに軽量なアルミダイキャスト材が利用されます。

ベーンポンプのその他情報

ベーンポンプの故障

ベーンポンプが故障すると異音が発生したり、ポンプの吐出量が低下するなどの症状が発生します。主な故障の原因は、部品の摩耗と流体異常の2つです。

ベーンポンプは回転によって流体を吐出する仕組みで、回転部品は常に摩擦・摺動を繰り返しているため、使用期間が長くなると摩耗が進行します。部品が摩耗すると摩耗粉が流体に混ざるため、正常な流れが発生せずに異音が生じます。

また、摩耗して気密が低下すると流体をロスするため、吐出量が低下します。適正な運転条件を守り、定期的な部品交換での対策が重要です。

流体の異常によって故障する場合もあります。摩耗粉の混入や温度が低下したりすると、流体の粘度が高くなります。その結果、負荷掛かり異音の発生や吐出量の低下が発生します。運転条件を適正に管理しつつ、ストレーナなどの洗浄機能を持つ部品をメンテナンスすることが重要です。 

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/11/6/11_6_346/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfps1970/25/7/25_7_850/_pdf
http://daidopmp.co.jp/products/v-series/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です