ガンドリルとは
ガンドリル (英: gun drill) とは、深穴をあけるためのドリルのことです。
ガンドリルの名称は、元は猟銃や小銃の穴あけに開発されたドリルであることからきています。ドリルの先端から高圧の切削油を吹き付けながら穴あけ加工を行います。切削油によって切り屑を吹き飛ばしながら加工ができるため、深穴加工や細穴加工をワンステップで行うことが可能です。
ガンドリルは直線性に優れており、高硬度材料や、ステンレス鋼、耐熱鋼などの穴あけ加工が困難な材料でも、深穴加工・細孔加工が可能です。ガンドリルを用いた加工は、速度と送りの事前検討が大切で、前加工と切削条件の条件出しをしっかりと行う必要があります。
ガンドリルの使用用途
ガンドリルは、径に対して5倍以上の深さの深穴加工、特にφ3~30mmの比較的小径の穴あけ加工に向いています。深穴加工を行う際、切り屑によって内部を傷つける恐れがありますが、ガンドリルは切り屑を吹き飛ばしながら加工を行うことができます。そのため、高能率・高精度の深穴加工が可能です。
ガンドリル加工の用途例は以下の通りです。
- 食品機械
液体充填機、冷却器部品、酪農用搾乳機、食品製造機械部品 - 輸送機器
自動車・鉄道車両・航空機部品 - 産業機械
スピンドル、シャフト、シリンダ、噴射機、油圧機器、減速機 - 電気
電機・電子機器部品、半導体関連熱板、液晶製造装置部品
ガンドリルの原理
ガンドリルは、ポンプを用いて高圧で切削油を噴射しながら切削を行うドリルです。そのため、ガンドリルの内部は空洞になっており、切削油が循環できるようになっています。切り屑を含む切削油は、ドリルの表面 (シャンク) に施されたV字の溝を通って外側に押し出される様になっており、切り屑は後方に設けられたチップボックスで濾過され、切削油は再び循環使用できる仕組みです。
ドリルの先端の穴は腎臓型 (キドニータイプ) や2穴タイプのものなど、様々なものがあり、形状によって送油量やヘッドの剛性などが変わるので、目的に合わせて選択します。ガンドリルはシャンクが長く、曲げ剛性を上げるため、加工箇所にドリルブシュの設置が必要です。
これによって、ヘッドの半径方向切削分力が支えられ、芯ずれが非常に少なく、高い直進性を得ることができます。50cmの深さに対して芯ずれは0.3mm程度の加工が可能です。
ガンドリルのその他情報
1. ガンドリルマシン
ガンドリルによる加工は、専用のガンドリルマシンで行います。ガンドリルマシンは旋盤の一種で、ガンドリルによる穴加工に特化した加工装置です。一般的な旋盤は、材料を回転させますが、ガンドリルマシンによる穴加工は、ガンドリルを回転させて行います。
深穴加工での懸念は、加工によって発生する切粉により加工穴がふさがったり、ドリルの回転を阻害することによるドリルの破損などです。その対策として、ドリル先端から切削油を連続して噴射し、加工穴内部に切削油の流れを作り、その流れで切粉を、穴から後方へ押し出します。ガンドリルにはドライバーと呼ばれるドリルの根元に保持部があり、保持部はガンドリルマシンの回転するチャック部に保持することが可能です。
切削油はドライバーの後部から供給され、ガンドリルのシャンク部を通り、ドリル先端の切れ刃部分から噴射されます。そのため、ガンドリルマシンは、ドライバーを保持する部分に、センタースルークーラント機能 (切削油を供給する機能) を設けます。
ガンドリルは、直径の数十倍の長さになります。加工深さにより、ガンドリルのシャンク部の振れが起きるので、それを抑制するためのガイドを、ガンドリルマシンに複数設けます。ガイドは加工に干渉しないように移動が可能です。
2. マシニングセンタによるガンドリル加工
加工穴の深さが、穴径のおおよそ40倍までのガンドリル加工は、 専用のガンドリルマシン以外でも、汎用のマシニングセンタ・NCフライス盤、またはNC旋盤などで可能です。この場合、センタースルークーラント機能を設けます。
ガンドリルは切れ刃の形状から、一般的なツイストドリルのような求心力が無いため、ガンドリル加工に入る前に、パイロット穴と呼ばれる下穴加工が必要です。パイロット穴加工は、ガンドリルの仕様に合った穴径のエンドミル・ドリルなどで、加工仕様で指定されている深さまで既定の精度で加工します。
参考文献
https://caddi.jp/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1933/49/10/49_10_1379/_pdf