ターポリン

ターポリンとは

ターポリン

ターポリン (英: Tarpaulin) とは、ポリエステル (PEs:polyester) の布の両面に合成樹脂のシートを配置して、ラミネート加工して作った生地の総称です。

建築工事用のシートに関する規格であるJIS A 8952において、防炎性、耐貫通性、引っ張り強さ等が規格化されており、ターポリンにも1類や2類があります。落下物による危険を防止するために用いられるのは同じですが、1類はシート単体、2類はシートと金網を使用します。

ターポリンの使用用途

ターポリンは、テントの生地や横断幕として用いられ、工事現場ではシートとしてよく見かけ、その他にバッグやリュック等に加工されています。また、高さ31m以上の高層建築物や、病院、旅館、飲食店、ガソリンスタンド、地下街、劇場、商業施設、イベント会場等では、防災機能が重要ですが、消防法第8条の3において不特定多数の人が出入りする施設や建築物では、防炎加工のあるものを使用することになっています。

上記のような場所においても、防炎表示が付いているターポリンを利用可能です。

ターポリンの原理

ターポリンは3層構造ですが、製造の際は長繊維としてポリエステル等を編み込んだ布を真ん中の芯繊維とし、ポリ塩化ビニル (PVC: polyvinyl chloride) で挟み込んで、ラミネート加工します。芯繊維としてポリエステルを利用すると、折り曲げに強い特徴を付加することが可能です。さらに、表と裏にポリ塩化ビニルを用いることで、耐候性の高い特徴が付加されます。

このように、3層の特徴を生かすことによって、屋外で利用しやすい耐候性、耐久性、引張り強度、防炎性などの機能が付加された生地になります。ターポリンは、両面の合成樹脂の機能と真ん中の芯繊維の機能を組み合わせることによって、各種機能の付加が可能です。

そのため、防炎ターポリンを作る場合は、芯繊維にガラスを加工した長繊維を用いて防炎性を高めます。高強度ターポリンを作る場合は、高強力高弾性繊維として知られるカーボンやアラミドを編み込むことで引張り強度を付加します。

ターポリンの種類

1. 防水ターポリン

防水ターポリンは、主に屋外で使用される防水性の高いシートです。水や湿気を通さない特性があり、屋外の荷物や装置、建設現場の保護カバー、キャンプ用シェルターなどで幅広く使用されます。耐久性があり、風雨や紫外線から物を守る役割を果たします。

2. 透明ターポリン

透明ターポリンは、透明性の高いシートで、内部の内容物を視覚的に確認できるため、特にショーケース、展示用のカバー、イベントテントなどに利用されます。防水性と透明性を併せ持ち、商品や展示物を保護しながら見栄え良く展示するための用途に適しています。

3. 耐寒性ターポリン

耐寒性ターポリンは、寒冷地での使用に適したタイプのシートです。低温による硬化や破損を防ぐために、特殊な添加剤や製造技術を用いて耐寒性を高めています。寒冷地での運搬、保管、屋外作業において、耐久性を確保するために利用されます。

4. 耐紫外線ターポリン

耐紫外線ターポリンは、長時間の屋外使用に適したタイプのシートです。紫外線による劣化や変色を防ぐために、特殊な紫外線吸収剤や抗酸化剤を添加しています。長期間の屋外保管や日射にさらされる場所での使用において、色や品質を保持するために利用されます。

5. 防炎ターポリン

防炎ターポリンは、火災のリスクを減らすために難燃性を持たせたシートです。特殊な防炎添加剤を含んでおり、火花や高温の環境にも安全に使用できます。屋外での火気の使用が多い建築現場やイベント会場、野外キッチンなどで使用され、火災の安全性を確保するための用途に適しています。

参考文献
https://www.tarpo-hiraoka.com/pdf/kasetukubunn.pdf
https://www.sunkou.co.jp/oudanmaku/material.html
https://kayo-corp.co.jp/common/pdf/pla_propertylist01.pdf

無機凝集剤

無機凝集剤とは

無機凝集剤とは、水や液体中の微小な粒子を凝集させて固まらせる無機材料から作られた化学物質です。

水中の微小な懸濁粒子同士を結合して粗大粒子 (フロック) を形成、ないし生じたフロックを大きく (粗大化) する薬剤を指します。凝集剤は、無機凝集剤と高分子凝集剤の2種類に分類されます。

無機凝集剤は、フロックを形成するために使われる薬剤です。主にアルミニウム系と鉄系に大別され、よく知られているものとしてポリ塩化アルミニウム (PAC) 、塩化鉄などが挙げられます。

高分子凝集剤は無機凝集剤と異なり、フロックの形成よりも形成されたフロックを粗大化するために添加されます。そのため、凝集助剤とも呼ばれています。ポリアクリルアミドを加水分解したものが代表的です。

無機凝集剤の使用用途

無機凝集剤は多くの場合、粉末や顆粒の形で市販されています。浄水場や廃水処理施設、工業プラントなどで広く使用されており、水質の浄化や廃液の処理に重要な役割を果たしています。

まず、浄水場においては、川や湖の水を浄化する際に使用されます。無機凝集剤は水中の微小な浮遊物や有機物を凝集させ、大きな塊にして取り除く効果があります。これにより、飲み水や産業用水の品質を向上させることが可能です。

また、廃水処理施設でも無機凝集剤は利用されます。廃水中の懸濁物や重金属など有害な物質を凝集させ、沈殿させることで、安全かつ環境に配慮した処理が行われます。これにより、地下水や河川への汚染を抑えることが可能です。

無機凝集剤は排水の処理で、汚水中の懸濁粒子等の除去に利用されます。凝集剤ごとにpHや水温などの使用条件が異なるため、処理を行う水の水質および組成に応じて最適な薬剤を選択しなければなりません。

無機凝集剤の原理

水中の懸濁粒子の表面は、一般に負の電荷を持ちます。これら負に荷電した粒子同士は相互に反発し合っているため、沈降せず分散します。一方、無機凝集剤に含まれているアルミニウムや鉄のイオンは、正に荷電しています。

懸濁粒子は、反対の荷電を持つこれらのイオンを添加して、粒子の表面電荷を中和して打ち消すことが可能です。反発力が減少し、粒子間の引力より小さくなると、粒子同士が結合してフロックが生じるようになります。また、フロックが沈降する速さは、粒子径の2乗に比例します。すなわち、粗大化して粒子径が大きくなるほど、フロックの沈降速度は増加します。

無機凝集剤の添加によって生じるのは、比較的小さい粒子径のフロックです。そこで、粒子の粗大化を促進するために、さらに高分子凝集剤を併用したりします。高分子凝集剤を加えると、フロック同士が凝集剤によって架橋されます。この架橋作用によりフロックの粗大化が起こるため、沈降速度がさらに増加し、結果として分離効率を高めることが可能です。

懸濁粒子のうち粒子径1µm以下の微粒子は、通常の沈殿処理や砂ろ過処理での分離・除去が困難です。無機凝集剤を利用すれば見た目の粒子径が大きくなり、本来であれば分離できない微粒子に対しても、これらの処理方法が適用可能になります。

無機凝集剤の種類

水を浄化する際に無機凝集剤を使用する例は多くありますが、原水の質と薬剤の種類には一般的な向き不向きがあります。無機凝集剤を選定するには、浄化したい水に対して様々な凝集剤を検討することが大切です。

無機凝集剤は大きく分類すると、アルミニウム系、鉄系、カルシウム系があります。いずれの場合も一概にすみ分けができる訳ではなく、原水の処理テストの中で可否を決定し、ランニングコストを考慮して選定します。

1. アルミニウム系

アルミニウム系無機凝集剤は、硫酸バンド (Al2(SO4)3) 、PACの略称で呼ばれるポリ塩化アルミニウム (Al2(OH)nCl6-n) などがあり、主に浄水場や廃水処理施設で広く使用されています。アルミニウム系無機凝集剤は、凝集力が強く、比較的低コストで入手できるため、広く利用されています。

アルミニウム系凝集剤は工業用水の軟水化や上水など重金属を含まない場合に使われることが多く、汚れの少ない水を更にきれいな水に浄化するイメージで使われます。

2. 鉄系

鉄系無機凝集剤は、塩化第二鉄 (FeCl3) 、塩化第一鉄 (FeCl2) などがあり、主に汚染物質の除去に使用されます。鉄イオンは、水中のリンや有機物などと結びつくことで凝集を促進します。

鉄系凝集剤は重金属を含む水を浄化する際に使われることが多く、処理困難な廃水の浄化に使われる印象が強いです。

3. カルシウム系

カルシウム系無機凝集剤の代表的なものに、消石灰 (Ca(OH)2) があります。他の無機凝集剤と異なり、水溶液が強アルカリ性なので、主に硬度の調整や酸中和などに使用されます。

カルシウムイオンは、水中のマグネシウムや重金属イオンと結合し、不溶性の塩を生成します。これによって、水中の硬度を調整したり、酸性を中和したりする効果があります。

無機凝集剤のその他情報

無機凝集剤の再生利用

塩化鉄水溶液は、金属のエッチングや表面処理に使用され、その廃液はメーカーにて回収後メタル分を取り除き、再生品として販売されます。アルミニウム系凝集剤もアルミニウム製造工程廃液から製造された廃液を利用しており、新液よりリーズナブルであることから、排水処理で使用する無機凝集剤としては再生品が使われています。

塩素系と硫黄系では、最終的な排水汚泥処理の方法に影響してきます。塩素系では、コンポスト向けに処理先を選べません。また、硫黄系では原水の質により悪臭を発生する場合もあり、処理先選定に影響します。塩素を含まず異臭を発生しないものであれば処理先は広がりますが、処理受け入れ先に対してはペナルティーとなり処理費用が増加します。

汚泥の含有成分により、売却も含めた価値を創造できる場合も多いです。製鉄所などは排水処理汚泥の大部分は鉄リッチであることから、鉄の原料としてリサイクルされています。無機凝集剤の選定は水を浄化できることが大前提ですが、汚泥の処理先まで含めたランニングコストを検討することも重要です。

参考文献
http://www.jwrc-net.or.jp/qa/10-65.pdf
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/012.html
https://www.jswa.go.jp/g/g5/g5m/mb/pdf02/167-1.pdf
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/012.html
https://www.asahi-chem.co.jp/products/muki/index.html
https://www.nittetsukou.co.jp/rdd/tech/tech_polyiron.html

ベントナイト

ベントナイトとは

ベントナイト

ベントナイトとは鉱物の一種 (モンモリロナイト) を主成分として石英、マイカ、カルサイトなど組成の異なる複数種の混合成分から構成される粘土の総称で、日本をはじめ世界各地で産出された粘土のことです。

ベントナイトは主成分のモンモリロナイトが持つ層状構造に起因した高い吸水性、膨潤後の高い粘性を持つ点が特徴です。このため、陶磁器をはじめ工業、建設業において広く利用されています。また、医薬品、化粧品や洗剤など日常生活に密着した製造品の添加剤としても一般的な成分です。

ベントナイトの使用用途

ベントナイトは高い吸水性、膨潤後の高い粘性を特徴とする粘土であり、窯業、土木建設業をはじめ日用品や医薬品など幅広い用途に用いられています。以下が主な使用例です。

  • 窯業:陶磁器の材料
  • 土木業:土木工事用防水材、掘削時泥水
  • 日用品:化粧品、洗剤、石鹸、農薬における分散性、粘度および保湿性を高める添加剤
  • 医薬品:医薬用軟膏の基剤
  • 食品:ワインや梅酒の濁り除去
  • その他:砂と混合して鋳型を形成、猫砂、石油精製工程の不純物吸着剤

ベントナイトの原理

ベントナイトは鉱物の一種 (モンモリロナイト) が主成分の粘土です。他の構成成分としては石英、オパールなどの珪酸鉱物、マイカ、ゼオライトなどの珪酸塩鉱物、カルサイトなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物などが挙げられます。

ベントナイト鉱床は日本国内では青森、宮城、山形、新潟、群馬、岡山、島根に、国外ではアメリカ、中国、ギリシャ、トルコなどです。国内外で採掘されている主要な鉱床が生じた理由として、約2億年から数百万年前に起きた火山噴火に由来する堆積物が地下深く埋もれている間に温度変化や圧力上昇による物理的、化学的な変成作用を受けたことが考えられます。

ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトは薄いシート状の鉱石が層状に積み重なった構造を持つ微細粒子で、約1nm間隔の層間に水分子やイオン成分を保持した構造です。ベントナイトの高い吸水性は主にモンモリロナイトが持つ層間構造に起因しており、さらにモンモリロナイト内のイオン成分が膨潤作用に重要な働きをすることがよく知られています。

ベントナイトの種類

ベントナイトの構造は、主成分であるモンモリロナイトの層構造により決まっています。このモンモリロナイトは、ケイ素と酸素よりなる四面体がシート状に連なっている四面体シートと、アルミニウムと水酸基よりなる八面体がシート状に連なった八面体シートにより構成されます。そして、1枚の八面体シートを2枚の四面体シートで挟み込んだ構造です。

実際には、この八面体シートのアルミニウムの一部がマグネシウムに置き換わった構造を有しています。このとき、アルミニウムが3価であるのに対し、マグネシウムが2価であるため、電荷のバランスをとるために、層内に層間陽イオンと称される陽イオンを取り込んでいます。

この層間陽イオンの種類としては、主にNa+、Ca2+、K+、Mg2+の4種類があります。この層間陽イオンの種類によりベントナイトの種類が分けられ、「Na型ベントナイト」と「Ca型ベントナイト」の2種類です。

1. Na型ベントナイト

Na型ベントナイトは、モンモリロナイトの層間陽イオンにNa+イオンを多く含むベントナイトで、膨潤性、増粘性や懸濁安定性に優れた特徴を持ちます。

2. Ca型ベントナイト

Ca型ベントナイトは、モンモリロナイトの層間陽イオンにCa2+イオンを多く含むベントナイトです。Ca型ベントナイトは、Na型ベントナイトに比べて膨潤性、増粘性、懸濁安定性の面で劣りますが、吸水性が優れています。

また、Ca型ベントナイトに対して数wt%の炭酸ナトリウムを加えて人工的にNa型化させたものもあり、これを活性化ベントナイトと呼びます。この活性化ベントナイト特性は、Na型ベントナイトに近い特性です。

ベントナイトのその他情報

1. ベントナイトの毒性

ベントナイトは日用品や医薬品などで使用されていることからもわかる通り、通常使用する場合の有害性は報告されていません。皮膚への刺激がほとんどなく、経口摂取しても問題ないので、食品添加物としても一般的な成分です。特に、ベントナイトの微粒子は不純物を吸着できるので、食品製造時の濾過助剤として使用されており、例えば、ビールなどの酒類や清涼飲料水などの濾過に使用されています。

ベントナイトの安全データシートによると、ラットの経口摂取におけるLD50 (半数致死量: 急性毒性の指標) の値は5,000mg/kgです。この値から、ベントナイトが毒物及び劇物取締法の分類において普通物に属すると判断できます。

一方で、ベントナイトの粉塵を鼻や口から大量に吸入すると、じん肺症になる可能性があります。じん肺症とは、粉塵が呼吸器系に蓄積することが原因で起こる疾病です。

最初は自覚症状がありませんが、時間経過とともに咳や痰、さらには息切れや呼吸困難の症状が現れます。一度じん肺症にかかると、治療方法がなく、正常な肺に戻ることがない疾病です。そのため、ベントナイトは日本産業衛生学会による粉塵の危険性レベルの分類においては、タルクなどとともに第一種粉塵に分類されています。

2. 土木工事におけるベントナイト

ベントナイトは建築物の基礎工事やインフラ補強工事において、掘削した地盤の壁面を保護するための泥水の原料として使用されます。単純に地面を掘削していくだけでは、堀った部分の側壁が崩壊する可能性があるためです。具体的には水とベントナイトを混ぜて調製した泥水を穴に満たしながら掘削して側面の崩壊を防止しています。

これは、ベントナイトに水を添加すると、膨潤し、粘性が増加することを利用しており、掘削面に入り込んで側壁を安定化すると同時に、表面に強くて薄い泥層を形成し、掘削部分崩壊の防止が可能です。また、掘削時に発生した土砂が底に沈殿するのを防ぐこともできます。このような性質から、安全に効率よく掘削したいときに使用されます。

また、ベントナイト泥水は安価で、作業性が良いというメリットがあります。一方で、土壌の塩分に弱い、温度に不安定である点がデメリットです。

側壁の崩壊を防止する効果があまり大きくないので、浅く掘削する場合の使用が好適です。また、掘削条件に合わせてベントナイト泥水に分散剤潤滑剤などの各種添加剤を加えて使用することもあります。

参考文献

https://www.hojun.co.jp/bentonite/
https://www.kunimine.co.jp/bent/basic.html
https://www.lion-pet.jp/info/
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuten/seizoyozai.html
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/02048350.pdf
http://www.cssj2.org/wp-content/uploads/clay_23.pdf
http://www.tac-co.com/business/slurry/features/
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/02048350.pdf
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2013/58-column.html

フランジボルト

フランジボルトとは

フランジボルト

フランジボルトとは座金(ワッシャー)を組み込まずに挿入できるネジのことです。フランジがボルトに付属しているためフランジボルトと呼びます。座面が付属するために緩みが生じにくく、座金を組む手間が省けるのが利点です。

フランジボルトの正式名称はJIS規格において、フランジ付き六角ボルトと呼びます。六角ボルトでは座面を組み込む必要がありますが、フランジボルトでは不要です。1種と2種が存在し、1種はフランジが平ワッシャー状のもの、2種はフランジ上面がテーパー状のものです。

フランジボルトの使用用途

フランジボルトは、自動車などの消費者向け製品から各種製造装置などの産業用製品まで幅広く使用されます。フランジボルトは六角ボルト比べて座面が大きいため、締結対象のボルト穴を陥没させず外観に配慮できます。

また、座金の組み込みが不要で、作業効率の改善を図ることができます。そのため、外観を綺麗に整えたい場合や、作業効率を向上させたい場合に使用されます。

フランジボルトの原理

フランジボルトのヘッド形状や高さなどはメーカーの裁量によって決められることが多く、多品種が存在します。JIS規格において1種(座面フラット)と2種(座面テーパー)が定められており、国内で多く利用されているのは2種です。

M6ボルトの場合、1種と2種いずれも「座面径14.0mm-六角頭10mm-頭高さ6.0mm」は共通しており、座面の表面形状のみが異なります。メーカーの規格の中には、座金の裏側に凹凸(セレート)を加工される場合もあります。セレートによって締結対象に噛みやすいため、安定度が向上します。

材質は鋼やステンレスが使用されるケースが多いです。ただし、周囲環境によってはチタン製を使用する場合もあります。多種あるフランジボルトから適切に選定することで、安定かつ効率的に締結できます。

フランジボルトの使い方

フランジボルトは使用法を誤ると、ナットの破損や締結対象機器の破損を招きます。これを防ぐために、下記の点を注意しながら使う必要があります。

  • 締結力が許容範囲内であること
  • フランジボルトに加わる繰り返しの力(振動などによる)が、許容範囲内であること
  • 座面に加わる圧力で締結対象物を陥没させないこと
  • フランジボルトの締結力で締結対象物を壊さないこと

フランジボルトのその他情報

1. フランジボルトの主な材質と主な表面処理

フランジボルトの材質にはスチール、ステンレス、チタンなどがあります。それぞれ強度に違いがあるため、機器の設計段階で十分に検討する必要があります。

また電蝕も重要な要素です。フランジボルトの材質と締結対象物の材質が異なると電蝕が生じます。特にアルミやステンレスの場合は注意が必要です。

フランジボルトの表面処理には銅メッキ、黒色塗装、三価クロメート、ユニクロメッキ、溶融亜鉛メッキ、クロメートメッキ、ニッケルめっき、クロームメッキ、パーカー、ダクロタイズドなどがあります。前述したように、電蝕対策や外観などに応じて選定します。

2. フランジボルトのゆるみ止め

フランジボルトにはゆるみどめの効果もありますが、経年により緩むことがあります。フランジボルトがゆるんで外れると、人命にかかわる大事故に発展する危険性もあります。ゆるみの発生原因には、下記の二つが挙げられます。

  • フランジボルトに加わる繰り返し振動
  • 外気温または締結対象物からフランジボルトに加わる発熱

フランジボルトを強く締めるとゆるみ止めの効果がありますが、フランジボルトが折損したりねじ穴がなめたりする危険があります。したがって、設計時に締結力の許容範囲を計算することが大切です。

増し締めで防止する場合は、定められたトルクに従って締め付けを行います。増し締め以外のゆるみ防止策は、ゆるみ止め用接着剤の使用やダブルナットなどがあります。絶対に緩まない防止策は存在しませんが、安全に機械を使用するためにはゆるみ止め対策が必要です。

参考文献
https://www.urk.co.jp/contents/elements/element21.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/special/huranjibolt.html
http://www.jikuryoku.net/tejyun.html
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-13-galvanic-corrosion/?SelectedLanguage=ja-JP

タレット旋盤

タレット旋盤とは

タレット旋盤

タレット旋盤とは、複数の工具を備えた回転可能なタレットを持つ旋盤の一種です。

タレットとは、複数の工具を収納して回転させることができる装置のことです。タレットには複数の工具が取り付けられていて、必要に応じて切削工具を切り替えられます。タレット旋盤は、一つの作業台で複数の工具を使って複雑な作業が高い精度でできるため、小ロットの生産にも適しています。

タレット旋盤は工具の交換作業が省略できるため、作業時間を短縮して作業を効率化できることが特徴です。最近では自動化が進んでおり、加工の精度や効率が向上すると同時に作業者の負荷も軽減できます。

タレット旋盤の使用用途

タレット旋盤の主な使用用途は下記の通りです。

1. 金属部品の加工

タレット旋盤は、スチール、アルミニウム、真鍮、銅、合金鋼などの多種類の金属材料を切削でき、部品に切削、旋削、穴あけ、ネジ切り、溝切りなどの加工ができます。自動車産業ではシャフト、ピストン、クランクシャフト、歯車など部品がタレット旋盤によって製造されています。

2. 高精度で一貫性のある加工

タレット旋盤は、多数の工具を自動的に交換でき、精度良く連続加工できます。特にエネルギー産業においてタービンブレード、コイル、バルブ、冷却水パイプなどの製造に用いられています。

3. 複雑な形状の部品の加工

タレット旋盤は、非常に複雑な形状を持つ部品を切削できます。ジェットエンジンのタービンブレード、ボルト、ナット、燃料噴射装置などの航空機産業向けの部品製造に使用されています。

4. プロトタイプの製作

タレット旋盤は、小ロットの製品やプロトタイプの製作に適しています。建設用部品のボルトやナット、ドアハンドル、柱、金属製の窓枠やドア枠などの製作に用いられています。

タレット旋盤の原理

タレット旋盤は、加工する材料に複数の切削工具を取り付け、工具の位置や進行方向、速度などをコントロールすることで、材料を削り出していく加工機械です。現在は、コンピュータによるNC (数値制御) 装置が搭載されたCNC旋盤が主流であり、以下の工程の一部または全部が自動化されています。

NCとは、Numerical Control (数値制御) の略称です。工作機械の加工プロセスを自動化する技術であり、加工機械の動きをコンピューターで制御して精度の高い加工ができます。CNCとは、Computer Numerical Control (コンピュータ数値制御) の略称です。CNCはNC技術の進化版でより高度で精密な加工が可能です。工作機械の制御方式の一つで、工作機械の動きをコンピューターで制御して高精度かつ高速で加工します。

タレット旋盤の使い方

タレット旋盤は下記のような手順で使用します。

1. 加工する材料を取り付ける

タレット旋盤の作業台に、加工する材料を固定します。

2. 切削工具を選択する

タレット旋盤には、複数の切削工具を取り付けられます。工具の種類によって切削する材料や形状が異なるため、作業前に適切な工具を選択します。

3. 切削工具の位置を調整する

工具を加工する材料に近づけたり離したり上下左右に動かしたりして、工具の位置を調整します。

4. 切削加工を開始する

工具の進行方向や速度を調整しながら、工具を加工する材料に接触させて切削します。

5. 切削加工後に工具を交換する

次の切削加工に必要な工具に交換します。

タレット旋盤の構造

タレット旋盤の基本構成は以下の通りです。

1. 主軸台

主軸を支える部分であり、主軸を回転させるためのモーターやギアボックスが取り付けられています。主軸とは、旋盤の中心となる回転軸であり、加工物を回転させます。主軸には、工具ホルダーやチャック (加工物を固定するための装置) などの工具を取り付けるためのシャンク (工具の取り付け部分) があり、先端には、加工物を固定するためのチャックが取り付けられます。

2. タレット (回転式の刃物台) 

タレットは、複数の工具を保持でき、旋盤の中心線に対して垂直に回転できます。切削工具を交換することなく、複数の工具を使用できるため、生産性が向上する点が特徴です。一つの作業台で多様な工具を使って加工できるため、多品種小ロット生産に適しています。

3. 往復台

往復台は旋盤の横方向に移動でき、加工物を削り出すための工具を運べます。また、縦方向にも移動でき、加工物を加工する深さを調整できます。

4. 送り装置

送り装置は、加工物を往復台に沿って正確に移動させるための装置です。送り装置には機械式送り装置や、コンピュータ制御送り装置 (CNC旋盤) などがあります。

5. ベッド

ベッドとは、旋盤の基本的な構成部分の一つであり、主軸や往復台を支える部分です。高剛性の鋳鉄や鋼材で製造されているため、旋盤全体の安定性が高く、高精度な加工が可能です。ベッドには、主軸や往復台が移動するためのレールが設置されています。

タレット旋盤のその他情報

1. 切削工具の種類

タレット旋盤で使用する工具には、外径切削工具、内径切削工具、ネジ切り工具、溝切り工具、面取り工具などがあります。これらの工具を組み合わせて、多様な形状を削り出せます。

2. 加工の種類

タレット旋盤は、切削加工だけでなく、穴あけや溝切りなどの加工も可能です。また、旋盤部分にドリルチャックを取り付けることで、ドリルやリーマなどの工具を使用して、精密な穴あけ加工もできます。

リーマとは、金属やプラスチックなどの加工品に対して精度の高い穴あけ加工を行うために用いられる工具の一種です。リーマは、円柱状の棒状部品であり、先端が円錐状に削られています。リーマの先端は、少しずつ大きくなる複数の刃で構成されており、回転させながら加工品に差し込むことで、加工品の内径を正確に拡大するできます。

参考文献
https://www.kousakukikai.tech/lathe/#NC
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machining/cutting/nc-lathe.jsp

ガスセンサー

ガスセンサーとは

ガスセンサー

ガスセンサーとは、空気中に存在する目に見えないガスを検知するためのセンサーです。

近年のIoTの活用や環境保全、省エネルギー化などによって、産業機器、自動車機器、家電機器などの幅広い業界において使われています。そのほか、匂い成分や大気汚染の検出にも利用されています。

ガスセンサーは化学反応や物理現象を利用することによって、様々な化合物を検出することが可能です。ガスセンサーの検出法には、半導体式や接触燃焼式、電気化学式、赤外線式などの方法が挙げられます。

ガスセンサーの使用用途

ガスセンサーの用途は幅広く、産業機器、自動車機器、家電機器など様々な業界で使われています。以下にその一例を示します。

  • 産業機器
    ガス事故の防止を目的に、大気汚染、化学工場生産、燃焼機関の排気ガス監視を行っています。
  • 自動車
    環境問題対策として排出ガスの浄化システムで酸素センサー、NOxセンサー、PMセンサーなどの排ガスセンサーとしてガスセンサーが用いられています。
  • 家電
    空気清浄機にはタバコ、化粧品、アルコール、ペットなどの匂いを検知するためのガスセンサーが搭載されています。

ガスセンサーの原理

ガスセンサーにはさまざまな種類があり、原理はそれぞれ異なります。ガスセンサーとして代表的な4つについて、原理を解説します。

1. 半導体式ガスセンサー

半導体式ガスセンサーは、半導体材料の特性を利用したセンサーで、大きく2種類あります。まず吸着型センサーは、酸化物半導体表面にガスが吸着した際に生じる抵抗の変化を利用したセンサーです。酸化スズなどが用いられています。

2つめの半導体式ガスセンサーは、酸化還元型です。酸化還元型のセンサーは、雰囲気が還元性や酸化性になることで抵抗が変化する性質を利用しています。金属酸化物半導体の表面に検出したいガスが吸着することで生じる抵抗値の変化からガスを検出します。

2. 接触燃焼式ガスセンサー

接触燃焼式ガスセンサーは、水素や炭化水素、一酸化炭素などの可燃性ガスが酸化触媒によって空気中の酸素と反応して、触媒燃焼する際に発熱する現象を利用したセンサーです。発熱量はガス濃度に比例するので、可燃ガスのセンシングとして用いられます。

3. 電気化学式ガスセンサー (定電位電解式) 

電気化学式ガスセンサーは、ガス透過膜を使って電解質中にガスを取り込み、ガスの電気化学反応を生じさせるガスセンサーです。酸化還元反応が起こる検知極と対極、電解液から構成され、検知するガスが存在すると触媒上で化学反応が起こります。このときに検知極と対極を接続した際の短絡電流を定量します。

4. 赤外線式ガスセンサー

赤外線式ガスセンサーは、多くのガスが各々固有の波長を吸収する性質を利用したセンサーです。検知するガスが吸収する波長域と吸収しない波長域の赤外線透過量を比較することによって、ガスを定量測定します。NDIR (非分散型赤外線) 式ガスセンサーとも呼ばれます。

ガスセンサーの種類

ガスセンサーの種類と検出するガスについて説明します。

1. 半導体式ガスセンサー

LPガス、都市ガス、一酸化炭素、水素ガス、酸素、アルコール、フレオンなど

2. 接触燃焼式ガスセンサー

水素ガス、炭化水素ガス、一酸化炭素などの可燃ガス

3. 電気化学式ガスセンサー

一酸化炭素、アルシン、オスフィンなどの半導体ドーピングガス、NOx、硫化物ガス

4. 赤外線式ガスセンサー

二酸化炭素、一酸化炭素、炭素水素、冷媒ガス、一酸化窒素、二酸化硫黄、六フッ化硫黄、エタノールなど

5. 熱伝導度式ガスセンサー

水素ガス、二酸化炭素、ヘリウムガス、メタンガス

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/54/4/54_4_351/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/67/12/67_628/_pdf
http://www.rikenkeiki.co.jp/cms/riken/pdf/support/PC9-0314-180610S.pdf

オイルフィルタ

オイルフィルタとは

オイルフィルタ

オイルフィルタ (英語:oil filter) とは、エンジンオイル・油圧機器オイルなどのスラッジ・摩耗粉・ごみなどを取り除くフィルタです。

自動車用はオイルエレメントと呼ぶこともあり、自動車や産業機械などで使用されることが多いです。オイルは機械が作動すると、徐々に酸化して汚れていきます。汚れたオイルを使用し続けると機械の故障を招くことがあるため、オイルフィルタでオイルをろ過しなければなりません。ろ過をすると汚れがフィルタに溜まるので、定期的な交換が必要です。

オイルフィルタの使用用途

オイルフィルタは、各種エンジンをはじめ、産業機械に広く使われます。具体的には、自動車のエンジン・オートマチックトランスミッション・船舶のエンジン・発電機のエンジン・ガスタービンなどです。

また、真空ポンプ・草刈り機や散布機などの農業機械・油圧機器の作動オイル・各種機械の潤滑オイル・工作機械の切削オイルなどにも使用されます。

オイルの汚れは、下記の3つが原因として挙げられます。

  1. 初めから、オイル回路に入っているもの
  2. 外から侵入するもの
  3. 機械作動中に発生するもの

1,2に関しては、機械の構造や取り扱い方法で防ぐことができます。しかし、3に関しては主に酸化などによりに発生する汚れであり、防ぐことができません。そのため、オイルフィルタを使用し、オイルを綺麗な状態に保つことが大切です。

オイルフィルタの原理

一般的にオイルフィルタは、多孔性のろ材にオイルを通過させて汚れを除きます。その他のフィルタリングとして、マグネットによる吸着や流速を早めて遠心力を利用する方法が挙げられます。汚れを除くにはろ材の孔が汚れよりも小さいこと、もしくはろ材の壁に汚れを付着させられることが必要です。

フィルタ式のオイルフィルタは下記の3タイプに分けられます。

1. フルフロータイプ

全てのオイルをフィルタでろ過させます。バイパスバルブが内蔵されているのが一般的で、現在の乗用車用エンジンはこのタイプが多く使われています。

2. フルフロー+バイパス併用型

オイルの流路をフルフローフィルタが設置された流路とバイバスフィルタが設置された流路に分けてろ過します。バイパスフィルタは通常よりも小さな汚れを除去できます。このタイプのフィルタは主にディーゼルエンジンに使われます。

3. コンビネーション型

フルフローフィルタとバイパスフィルタを一つにまとめたものです。流路を流れるオイルは、これら2つのフィルターに分けられます。大型のディーゼルエンジンなどに使われます。

オイルフィルタの種類

オイルフィルタの種類は、主に下記の3つです。

1. スクリーン式オイルフィルタ

オイルパン内のオイル吸入口に非常に目の細かい金属製のメッシュを取り付けてろ過を行います。現在のエンジンは、ほとんどがろ紙式オイルフィルタとスクリーン式フィルタとを併用しています。

2. 内蔵式オイルフィルタ

ろ紙で作られたオイルフィルタをエンジン内部やオイルパン内部のオイルストレーナー付近に内蔵する方式です。比較的旧式の設計のオートバイなどで使用されています。また、自動車用オートマチックトランスミッションや無段変速機には、ストレーナの部分に交換式ATFフィルターが内蔵されています。

3. カートリッジ式とスピンオン式

カートリッジ式は、着脱可能なカートリッジをエンジン外部に取り付ける方式です。カートリッジは何度も再利用を行いつつ、中のフィルタのみを定期交換します。内蔵式に比べてオイルパンなどを開ける必要がないために整備性が向上します。

スピンオン式は、1950年代に登場したもので、ケーシングの中に、ろ紙製オイルフィルターと各種バルブ類を全て内蔵しているタイプです。エンジン側のオイル通路上に直接回転させて取り付けられ、オイルフィルタを交換する度にろ材はケーシング毎廃棄します。交換作業が効率化できるため、現在のほとんどの自動車に採用されています。

オイルフィルタのその他情報

オイルフィルタの交換

オイルフィルタに汚れが溜まると、フィルタが目詰まりを起こし、オイルの循環量が減少します。 この場合、バイパスバルブが開き、オイルの循環は辛うじて行われますが、バイパスバルブを通るオイルは、フィルタでろ過されないため、オイルの劣化が進行します。

オイルの劣化とオイルフィルタの目詰まりが進行すると、機器の損傷が発生するため、オイルとオイルフィルタの定期交換が必要です。交換時期はメーカーの取り扱い説明書に明示されています。

自動車エンジンの場合、汚れたエンジンオイルの使用は、エンジンの損傷・燃費の悪化・パワーの低下などを引き起こすため、エンジンオイルとオイルフィルタの交換は適切に行う必要があります。多くのメーカーは、オイルの交換時期を明示し、オイルの交換2回ごとに、オイルフィルタの交換を推奨しています。

参考文献
https://www.nitto-kogyo.co.jp/oilfilter.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1954/8/4/8_4_271/_pdf/-char/ja
https://www.nitto-kogyo.co.jp/oilfilter.html

インサートナット

インサートナットとは

インサートナット

インサートナットは、樹脂部材の締結部の強度を上げるために使う部材です。締付ボルトに比べ樹脂は強度が低いので、樹脂の中に主として金属製のインサートナットを埋め込み、接合部を強化するために使います。

インサートナットの外面は樹脂に固着できるように、ローレットなどが刻まれ、内面がナットねじ仕様になった部材です。インサートナットの材料は、切削性や展延性に優れた快削黄銅や鉛レス黄銅などが一般的に使われます。アルミニウムステンレス鋼の場合もあります。樹脂製もあり、自動車用などに使われています。

樹脂部材に対して、インサートナットを樹脂の成形時にインサートする方法と樹脂の成形後にインサートする2種類の挿入方法があります。

インサートナットの使用用途

インサートナットは、樹脂部品の締結部を補強するために広範囲の用途があります。主な使用用途は、自動車・バイク・電車、航空機などの輸送機、スマートフォン、家電製品、産業機械などで、樹脂部品の締結部に使用されます。

特に自動車業界では、燃費向上のため樹脂部品を用いた軽量化が進んでいます。また、環境に優しいバイオプラスチックの採用が増えています。これらの樹脂部品の締結が増加しており、インサートナットが広く使われています。インサートナット自体も強度が高い樹脂製が開発され、軽量化に寄与しています。

工作機械では、マシニングセンタ、NC工作機器、サーボモーターインバーター等の制御盤筐体などに使用されることが多いです。アミューズメントの分野でも、パチンコ、スロットマシンの本体を始め内部機構部品、周辺機器、ゲーム機の本体シャーシ、周辺機器など、インサートナットの利用が広まっています。

インサートナットの自動車業界での使用例

インサートナットの種類

インサートナットには形状、材料、挿入方式などの組み合わせにより多くの種類があります。インサートナットの形状は、スタンダードタイプとフランジタイプの2種類です。スタンダードタイプは最も一般的なタイプであり、一番安価です。さらに、スタンダードタイプは、片面型と両面型の2種類に分けられます。

片面型は圧入時の取付け方向が決まっていますが、両面型は両側が面取りされているので、圧入時にどちらからでも挿入できる様になっています。フランジタイプは、片側にツバが付いたもので、一方向にのみ挿入が可能なタイプです。インサートナットを樹脂部材に挿入する方法にも種類があります。

インサートナットのその他情報

インサートナットの挿入方法

インサートナットを樹脂に埋め込む方法には、成形時インサートと成形後インサートの2つの方法があります。熱を加えると柔らかくなる熱可塑性樹脂には、主に成形後インサートが使われます。また、熱を加えると固くなる熱硬化性樹脂には、成形時インサートが多いですが、成形後インサートも使用できます。

1. 成形時インサート
樹脂素材を成形加工する時に、金型にインサートナットを取り付けて樹脂を流し込み、成形します。金型にインサートナットを組み付ける必要がありますが、樹脂が溶けた状態でインサートナットのまわりに入り込むため、冷却後の強度が優れています。

2. 成形後インサート
樹脂成形後に挿入する方法には、拡張方式、圧入方式、熱圧入方式の3つの方式があります。

拡張方式
インサートナットを樹脂部材の下穴に圧入して、ナットの先端部分を拡張することで樹脂部材に固定する方法です。インサートナットを樹脂部材にハンマーで打ち込んでから、専用ポンチなどのツールを使って拡張板と呼ばれる部分を下へ押して、インサートナットの先端部分を拡張します。

この方式は、素材側のナットをはめ込むボス形状にあまり影響を受けないことと、熱源が不要である特徴があります。

圧入方式
最も一般的な方法です。熱源を使用せずに、プレスやハンマーなどを使って樹脂部材へ圧入します。ボス径を太くすることでボス割れを防ぐことができますが、樹脂部材によっては熱圧入方式に変更する必要があります。

熱圧入方式
樹脂部材にインサートナットを圧入する際に熱源を使用する方法です。部材の下穴にインサートナットをセットして、ハンダごて、超音波溶着機や熱圧入機などでナットを加熱しながら圧入します。

インサートナットに熱を加えることで樹脂部材に熱が伝わり柔らかくなるので、インサートナットを所定の位置まで楽に圧入することができます。また、樹脂が溶けながら圧入されるため、溶けた樹脂がナットに回り込んで強度が高くなります。樹脂部材側のボス形状にはあまり影響を受けない方法です。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/insatonato_type/
https://newswitch.jp/p/7525

GPSセンサー

GPSセンサーとは

GPSセンサー (英: GPS sensor) とは、全世界的な位置測位システムであるGPS (Global Positioning System) に使用するセンサーです。

GPSは人工衛星を利用した高度なシステムにより、24時間誰でも場所問わず使用可能で、高精度に位置を測定できるシステムです。その性質を利用して、GPSセンサーはカーナビゲーションを代表とする一般的な測位から、正確な時刻の算出、地球物理的な観測といった分野に至るまで幅広く応用されています。

GPSセンサーの使用用途

GPSセンサーは、航空機や船舶、測量における位置測位のために用いられてきました。今日ではIT技術の発達により、スマートフォンやノートパソコン、カーナビゲーションシステム、デジタルカメラ、さらにスマートウォッチ、ドローンなどにも積極的に応用されています。

これらの一般的な測位だけでなく、mm~cmレベルの精密測位も実現されており、精密測量や地殻変動を精密測定するために利用されています。その他にも、国際的な標準時刻を決定する上で、全世界の国際原子時計で計測した時刻のデータを仲介する目的で、GPS衛星は利用されています。

GPSセンサーの原理

GPSでは地上の位置を特定するために、複数の人工衛星を用いて、それぞれの衛星との距離を測定しています。各衛星から発せられた電波を使い、地上までの伝搬時間を計測することで距離の測定が可能です。

GPSセンサーは、各衛星から発せられた電波を受信して、衛星との距離を計算して位置を特定する機能を有します。GPS衛星から送られてきたL1波とL2波の信号は、利用者のGPS受信機によって検出されます。GPS衛星における信号の送信時刻と、地上での受信時刻との差を算出します。

電波の速度は、光の速度と同じであり、伝播時間との積から、GPS衛星と地上のGPSセンサーとの距離を測定することが可能です。GPSは元々アメリカで軍事用に開発されたシステムでしたが、1996年に全世界に解放されて以降、様々な場面で使用されています。

GPSセンサーのその他情報

1. GPS衛星の動作原理

GPS衛星はある特定時刻に、L1波とL2波と呼ばれる2種類の信号を発信します。それぞれの信号はある周波数を持ち、1575.42MHzと1227.60MHzと決められています。2種類用いている理由は途中の伝送経路での遅延を補正するためです。

このときGPS衛星の時刻や軌道を監視したり、信号の送受信を適切に制御したりするのが、制御部分 (地上管制) です。メインの制御局を除いて、基本的に無人運用がなされています。

2. GPS衛星の個数

GPSセンサーの位置の特定は、3個のGPS衛星からの距離が分かれば、計算可能です。しかし、GPS衛星の時計は原子時計を使用して、精度が非常に高いのに対し、受信機の時計の精度は落ちます。このため、通常4個のGPS衛星を使用し、測定する方位を増やして精度向上を図ります。

3. GPSの精度

一般的に、スマートフォンやカーナビなどで利用されているGPSセンサーによる位置情報の精度は、数m単位の誤差があると言われています。大気の状態や遮蔽物などの影響がその一因です。

スマートフォンで位置情報を利用する際には、WiFi基地局との距離や、電子コンパスなどを複合的に利用して精度を高める工夫が行われています。

GPSを含めた衛星を使用した測位システムは、GNSS (全球測位衛星システム) と呼ばれ、その中には、QZSS (準天頂衛星) である日本版GPSの通称「みちびき」があります。

4. RTK

GPSを使った位置情報サービスの精度を高める新しい測位方式として、RTK (Real Time Kinematic) があります。GPSからの位置情報を基準となる基地局と移動局の2つの受信機で受信し、差分をもとに位置のずれを補正する方法です。

位置情報の精度が数cm単位の誤差にまで高めることができます。RTKによる高精度な位置情報のスマートフォンやドローンでの利用に期待が高まりますが、コストなどの問題もあることから、当面は産業分野での活用が期待されています。

ICT (情報通信技術) を活用した自動運転技術などと組み合わせて、新交通サービスや、スマート農業、スマート建設、ドローン配送サービスなど、様々な新しいサービスの実現の可能性を広げていきます。

5. GPS発信機

GPS発信機は、GPSの信号から位置情報を算出し、特定の宛先に位置情報を発信する機器で、リアルタイム追跡型と手動検索型があります。リアルタイム追跡型は、位置情報がGPS発信機から、自動で定期的に発信または発信機に保存されるため、現在地だけでなく、経路も確認することができます。

手動検索型は、所在を確かめたいときだけ、位置を検索できるタイプです。用途としては、老人や子どもの行動の見守り、スマートフォンや車、自転車などの盗難対策、落とし物や忘れ物対策、登山などの安否確認などが挙げられます。

参考文献
https://www.furuno.com/jp/gnss/technical/tec_what_gps
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1994/116/10/116_10_672/_pdf
https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/column/20200911_2/
https://peraichi.com/landing_pages/view/gps/
https://heim.jp/magazine/5978145

パルス電源

パルス電源とは

パルス電源 (英:pulse power generator) とは、きわめて短い時間の間に数キロボルトという高電圧を発生する装置のことです。

特徴として、電圧の立ち上がり時間が極めて速いにも関わらず、高電圧 (~30kV程度) の出力を高周波数 (~100kHz程度) で繰り返すことが挙げられます。また、連続出力でなく、冷却時間が存在するため、機器自体や空間の温度上昇を抑制できます。

高い電圧出力を要する学術・産業分野 (プラズマ発生の電源装置など) において、利用される装置です。

パルス電源の使用用途

1. プラズマ発生用

プラズマ発生には高い出力電圧を必要とし、パルス電源はプラズマ発生用の電源として最適です。供給するパワーは、パルス幅と周波数を変えることでコントロール可能であり、プラズマ発生などの高密度エネルギーが必要な場合には好都合です。

パルス電源は、プラズマ応用機器の電源として多く利用されています。プラズマから発生した光・電子・イオンといった荷電粒子を対象物に作用させたり、パルス放電による衝撃波発生を用いた殺菌や水処理などに利用されたりしています。

2. エキシマレーザー用

エキシマレーザーのような大出力高効率レーザーを駆動させる上で、レーザーガスを瞬間的に励起する必要があるため、短時間・高出力のパルス電源が必要です。このような大出力のレーザーを駆動させるための用途もあります。半導体露光技術の発展に貢献しています。

3. その他

パルス電源は、EUV用パルス電源や薄膜や微粒子を基材・基板の表面に吸着・堆積させるプラズマCVDにも、使用されます。EUVは極端紫外線のことです。

プラズマCVDは、半導体の絶縁膜や保護膜として使われます。また、切削工具の刃先部やギアの接触部に、窒化炭素や窒化チタンをコーティングするのに有用です。

小形のパルス電源は、計測器の用途もあります。走査電子顕微鏡SEMや質量分析MSなどへ、高速・高電圧パルスを供給します。

パルス電源の原理

パルス電源は、充電器部分とパルス発生部分に分けられます。

1. 充電器

パルス電源に入力した交流電源は、まず整流回路により直流へ変換され、インバータを通して昇圧され出力します。そして、パルス発生部にある初段コンデンサに充電されます。

2. パルス発生

充電された電力は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ (IGBT) でパルス状に変換されます。IGBTとはパワー半導体の1種で、大電力の高速スイッチングが可能です。

IGBTに加え、可飽和リアクトルと呼ばれる素子を用います。可飽和リアクトルは、電流が小さい領域では透磁率が高く、電流を通しませんが、電流が増加して磁束密度が一定以上になると、電流を透過させることができるようにな流のが特徴です。この回路を磁気圧縮回路と呼びます。

次に、発生したパルス電圧を次段に用意された可飽和リアクトルに誘導します。そして、昇圧し磁気圧縮回路を用いて、100ns以下にまで圧縮した短パルスを負荷へ出りょぅ可能です。コンデンサの充電速度と、可飽和リアクトルの飽和値との関係によって、回路の充電電圧特性が決まります。

リアクトルのインダクタンスを初段より小さくしておけば、より短時間でパルス電圧を発生させられます。より短いパルスが必要な場合は、多段の過飽和リアクトルを用意します。

パルス電源の特徴

1. 瞬間的な出力

パルス電源は、出力が0の時にコンデンサーにエネルギーを蓄えることができるので、ONの時に瞬間的な高出力のエネルギーの発生が可能です。

2. 高速立ち上がり・高速繰り返しが可能

一般の電源は、ONの時、出力の上限値に達するまでに時間を要します。一方、パルス電源は、立ち上がり時間が非常に短く、マイクロ秒~ナノ秒程度の時間で上限に達します。また、この出力を高速に繰り返すことも可能です。

3. 少ない発熱

パルス電源は、出力時間の制御が可能なので、断続的に運転して冷却時間を設けることができます。これにより、機器や空間の温度上昇を抑えることができます。その為、熱に弱い機器の電源に使用することが可能です。

4. 長寿命

オールソリッドステートで、長期間安定したパルス出力を供給できます。

参考文献
http://pekuris.co.jp/technology/pulse.php