シーブ

シーブとは

シーブとは、ロープやワイヤーロープを通すための車輪または滑車のことです。

シーブは、通常クレーンのブーム (アーム) の先端やブームの途中に取り付けられたブロックとして機能します。ロープやワイヤーロープはシーブの溝に沿って通されるため、ロープを引っ張ることで、クレーンの荷重を持ち上げたり降ろしたりすることが可能です。

また、高い強度と耐久性を持ち、クレーンの正確な操作を可能にする重要な要素です。クレーンの種類や用途によって、単一の溝から多数の溝があるものまで、様々なタイプが存在します。

シーブの使用用途

以下はシーブの使用用途の一例です。

1. 荷重の持ち上げと降ろし

シーブは、クレーンのブームに取り付けられたブロックとして機能し、ロープやワイヤーロープを通して荷重を持ち上げたり降ろしたりします。シーブを使うことで、荷重を持ち上げる力が均等に分散され、効率的に荷物を操作することができます。

2. 荷物の移動と配置

クレーンにシーブを使用することで、荷物を移動させ、特定の場所に正確に配置することができます。特に、重いまたは大きな荷物を取り扱う際には、シーブが荷物の運搬や配置を容易にします。

3. 高所作業

クレーンのブームを延長することで、高所にある物体を届かせることができます。シーブは、ブームの先端に取り付けられることで、高所から荷物を持ち上げたり、高い場所に荷物を配置したりするのに役立ちます。

4. 吊り作業の補助

シーブは、複数のロープやワイヤーロープを使用して複雑な吊り作業を行う際に役立ちます。複数のシーブを組み合わせて使用することで、より高い荷重を持ち上げることが可能になります。

シーブの原理

シーブの原理は、滑車の原理に基づいています。滑車の原理は、力の方向を変えることによって力を増幅する仕組みです。シーブを使用することで、物体を持ち上げるために必要な力を減らすことができます。

これは、シーブがロープやワイヤーロープを複数回巻き付けることにより、力を分散させることができるためです。

1. 単純な滑車

シーブが単一の車輪で構成されている場合、入力される力 (引っ張る力) と出力される力 (持ち上げる力) は同じ方向になります。力の増幅は行われませんが、ロープの方向を変えることによって、クレーン操作が容易になります。

2. 複数の滑車

シーブが複数の車輪で構成されている場合、ロープがシーブを複数回巻き付けられます。この場合、ロープの張力が分散されるため、同じ荷重を持ち上げるために必要な引っ張る力が減少します。この効果により、少ない力で重い荷物を持ち上げることが可能です。

滑車の原理によって、シーブはクレーンの効率を向上させ、大きな荷重を持ち上げる能力を高めることができます。

シーブの種類

以下は、一般的なシーブの種類です。

1. 単一シーブ

最も基本的なタイプのシーブで、単一の車輪からなるものです。ロープをシーブに通し、ロープを車輪に巻き付けることで荷物を持ち上げます。力の増幅は行われませんが、ロープの方向を変えることでクレーンの操作が行えます。

2. ダブルシーブ

2つの車輪が並べて取り付けられたシーブです。ロープがシーブを2回巻き付けられるため、荷重を持ち上げる際に必要な引っ張る力が減少します。ダブルシーブは、単一シーブよりも大きな荷重を持ち上げるのに適しています。

3. トリプルシーブ

3つの車輪が並べて取り付けられたシーブです。ロープがシーブを3回巻き付けられるため、さらに力を増幅し、大きな荷重を持ち上げることができます。トリプルシーブは、非常に重い荷物を持ち上げる必要がある場合に使用されます。

4. ブロックシーブ

複数の車輪が内蔵された一体型のシーブです。通常、ダブルブロック (2つの車輪) またはトリプルブロック (3つの車輪) があります。ブロックシーブは、高い荷重を持ち上げる能力を持ちながら、コンパクトなサイズで操作が容易です。

5. ハイトンシーブ

特殊な形状のシーブで、ロープがシーブの外側に巻き付けられるタイプです。ハイトンシーブは、クレーンのブームの先端に取り付けられ、高所作業や曲がった場所での吊り作業に適しています。

 

これらは一般的なクレーンのシーブの種類ですが、特定のクレーンや用途によってカスタマイズされたシーブが使用されることもあります。

参考文献
https://www.jbia.or.jp/about/illust/pdf/sheave.pdf
https://www.nbk1560.com/products/pulley/ropesheave/service/about/?SelectedLanguage=ja-JP
https://kikakurui.com/b8/B8807-2003-01.html
http://www.crane-club.com/study/mobile/wording.html

ロータリーアクチュエータ

ロータリーアクチュエータとは

ロータリーアクチュエータとは、圧縮空気圧や油圧を回転運動に変換するアクチュエータの1種です。

直線で駆動するアクチュエータに比べて、小さいスペースで使用できることが特徴であり、特に油圧を使用した場合は、高トルクでの駆動が可能です。ロータリーアクチュエータの種類には、直線歯車と円形歯車を用いたラックピニオン型、シャフトとばね、回転シャフトを用いたスコッチヨーク型、円形のチャンバーの中にあるシャフトとベーンを用いたベーン型などがあります。

エアシリンダなどと同様に、圧縮空気によって回転力を生み出すもので、生産現場で活躍しています。

ロータリーアクチュエータの使用用途

ロータリーアクチュエータは、鉄鋼や建機、生産工場などであらゆる機械類を駆動するために使われています。それらの現場における実際の活用方法として、撹拌や位置決め、引張、持ち上げ、開閉などの動作が挙げられます。

ロータリーアクチュエータの使用実例は、次の通りです。

  • 自動走行リフトにおける、持ち上げと回転動作
  • 潜水艦内のハッチの開閉やバルブの操作
  • 鉱山で使用する機械におけるドリルの位置決め
  • クレーンの旋回部、ドア・ハッチの作動

用途に応じて、トルクや回転数、振動や熱などの耐久性、サイズなどを、選定の際には考慮する必要があります。

ロータリーアクチュエータの原理

ロータリーアクチュエータは、動力源として一般に空気圧や、油圧、および電動力が用いられています。その種類に応じ、圧縮空気 (エア) や配管からの油圧、および電動力を機械的な回転運動に変換するために、さまざまな機構を活用しています。

例えば空気圧の場合、ベーン型はチャンバーと呼ばれるアクチュエータ本体の内部の空間に圧縮された空気を送り込み、ベーンと呼ばれる空間の間仕切りが圧縮空気で押されることで、接続されている出力回転軸を回すトルクを活用しています。ラックピニオン型は、圧縮空気で動作するシリンダピストンが直線歯車を回しその力で円形歯車につながる出力回転軸が動作する仕組みです。

油圧の場合は、スコッチヨーク型と呼ばれるピストンと回転シャフトからなる機構がよく利用され、電動の場合はブラシレスモーター他、各種モーターがロータリーアクチュエータの出力回転力を得るために用いられています。

一般には、空気圧、電動、油圧の順に回転トルク力は得やすくなります。ただし、特に油圧の場合は配管設備やポンプ、油に関する各種メンテナンスなどが必要であり、エネルギー効率も低いために、最近は電動化への流れが主流になっている状況です。環境問題への配慮もあり、油圧と電動力の良い箇所を兼ねたハイブリッド型のロータリーアクチュエータを扱うメーカーも存在しています。

ロータリーアクチュエータの種類

1. ラックピニオン型

ラックピニオン型は、ラックと呼ばれる直線歯車とピニオンと呼ばれる円形歯車、圧縮空気で動作するピストン、ピストンの両サイドにあるチャンバーで構成されています。チャンバーに圧縮空気が満たされ、ピストンを押し、ピストンと連動して直線歯車が動作し、円形歯車が回転します。

その回転によって、回転運動を行うアクチュエータとして機能する仕組みです。構造的にシール性が高く、比較的エア漏れは少なくなりますが、構造が複雑で高価な点がデメリットとして挙げられます。

2. スコッチヨーク型

主に油圧で用いられる、スコッチヨーク型は、ピストンとばね、回転シャフトがその構成要素です。油圧によってピストンが上下に運動し、その運動を回転シャフトによって回転運動に変換して、ロータリーアクチュエータとして機能します。

3. ベーン型

ベーン型は、円形のシャフト内にチャンバーがあり、そのチャンバーにベーンが接続されている構造です。チャンバーには、ベーンによって2つの空間があり、片側に圧縮空気を充填することでシャフトが回転方向に動作し、回転運動に変換されます。

ベーンが1つで構成さるものをシングルベーンと呼び、ベーンが2つあるものをダブルベーンと呼びます。ダブルベーンは、揺動角度に制限ができますが、シングルベーンの2倍の回転トルクを得ることが可能です。

参考文献
https://www.technology.org/2019/03/31/pneumatic-rotary-actuator/
https://www.hydraulicspneumatics.com/

フロースイッチ

フロースイッチとは

フロースイッチとは、パイプやダクト内の流体流れを検知して接点出力する装置です。

flow (流れ) を検知するスイッチという意味です。流量が一定値以上または以下になったときに信号を発信します。ポンプやバルブなどの制御装置と組み合わせて使用する場合が多いです。

ポンプの故障防止や設備安全の観点から重要な装置で、流体が途切れた際の警報や安全装置として活用します。

フロースイッチの使用用途

フロースイッチは産業分野で広く使用される装置です。以下はフロースイッチの使用用途一例です。

1. 化学プラント

化学プラントでは、液体や気体などの流体を制御するためにフロースイッチが使用されます。フロースイッチは、プロセス制御や異常検知などの目的で使用されることが多いです。

2. 配管システム

配管システムでは流体制御に使用され、特に流量が急激に変化する場合や流量が不足している場合などに重要な役割を果たします。

3. 冷却装置

冷却装置では、フロースイッチが使用されることが多いです。冷却水の流量を制御するために使用され、過熱を防止するために重要な役割を果たします。

4. エアコンシステム

エアコンシステムでも、使用される場合があります。空気の流れなどを制御して、エアコンの効率を向上させます。

5. 消火システム

消火システムでもフロースイッチが使用されることがあります。火災発生時の消火剤流量制御に使用され、迅速かつ正確に火災を鎮火することが可能です。

フロースイッチの原理

フロースイッチには、流れる流体を検知するセンサーが取り付けられます。センサーは一定量の流体が通過するとスイッチが作動する仕組みです。流量が一定以上になった場合にスイッチがONになり、一定以下になった場合はOFFになります。

このスイッチのON/OFFの状態に応じて、制御装置が動作することで流体の流れを制御することが可能です。フロースイッチは流量の異常を検知し、機器の故障や停止を防止するために重要な役割を果たしています。

フロースイッチの種類

主要なフロースイッチの流量や圧力の検出方法はフロート式、超音波式、ベーン操作式などです。

1. フロート式フロースイッチ

フロート式は、流量や圧力によって浮くフロートを用いて検知します。フロート内部に永久磁石が埋め込まれており、フロートが設定している場所に移動するとリードスイッチが動作し、接点出力します。

2. 超音波式フロースイッチ

超音波式は超音波が流体を通過することによる周波数の変動を検知して接点出力します。パイプやダクトに外付けできるため、メンテナンス性が非常に高いことが特徴です。

超音波式の場合はスイッチとしてだけではなく、アナログ伝送器として使用される場合も多いです。

3. ベーン操作式フロースイッチ

パイプやダクトにベーンと呼ばれる板状の物体を設置し、液体と共に動きます。ベーンの動きが設定値よりも大きくなれば、接点出力する仕組みです。

フロースイッチの選び方

フロースイッチを選ぶ際には、流体の種類、必要な精度、環境条件、電気的な接続方法など、多くの要素を考慮する必要があります。

1. 流体の種類や精度

フロースイッチは、液体や気体などの流体に応じて適切なものを選択する必要があります。各種流体の粘度や流量、温度、圧力などの条件を考慮して、適切なフロースイッチを選ぶ必要があります。

また、流量の測定精度によって必要なフロースイッチは異なり、高い精度が必要な場合は高価なフロースイッチを選択します。

2. 環境条件

フロースイッチを使用する環境条件に応じて選定します。高温・低温、高圧力、高湿度など、特定の環境下での使用を想定しているフロースイッチが販売されています。使用環境に応じて選定します。

3. 接続方法

フロースイッチの接続方法は、配線式とコネクタ式の2種類です。施工性などを考慮して選定する必要があります。また、メンテナンス性も重要な要件であり、可能な限りメンテナンス性が高い製品を選定します。

参考文献
https://uk.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/flow-switches-guide

フォトリフレクタ

フォトリフレクタとは

フォトリフレクタとは、発光器と受光器を同一方向に向けて並べて発光器から光を投射し、物体により反射された光を受光器が検出して物体の存在を検知するデバイスのことです。

光を使って物体を検知する仕組みは一般にフォトインタラプタと言われ、一組の発光器と受光器を用いて光によって物体の有無や位置を検出する機能を持った装置を指します。フォトインタラプタには透過型と反射型に分けられ、透過型のフォトインタラプタは、発光器と受光器の間を物体通過する際に光を遮断することにより検知するものです。

また、反射型のフォトインタラプタは発光器が発する光を物体が反射し、その反射光を受光器が検出することで検知するものです。通常透過型をフォトインタラプタ、反射型はフォトリフレクタと呼び両者を区別していますので、本記事では後者に限定して解説します。

フォトリフレクタの使用用途

フォトリフレクタは、主に至近距離の物体の検出に使われます。その他、物体の表面色により光の反射率が異なることを利用して白黒のパターンを検出する用途や、物体とフォトリフレクタの距離により信号の強さが変化することから距離の測定にも使用可能です。

具体的な例として、所定の位置に物体があるかないかの判定機能が挙げられます。ディスクプレイヤーにおけるメディアの装着状態の検知などです。また、様々な機器で使われているエンコーダでは、回転軸にスリットが刻まれた円形のスリット板が取り付けられていますが、このスリットをカウントして回転量を検出する機構にもフォトリフレクターが利用されています。

スリットの欠けの部分には物体がないため、受光部の信号から欠けの部分の数をカウントすることができます。色の違いを検出する例として、自走ロボットが白色のガイド線上を移動する際に、経路を検出する機構のセンサーとして使われる場合がそれにあたります。

また、大まかな距離を測ることもフォトリフレクターの用途の一つで、プリンターのインクやトナーの残量検出がその一例です。

フォトリフレクタの原理

フォトリフレクタは、近赤外LEDである発光素子とフォトトランジスタやフォトダイオードの受光素子を同一方向に向けて配置したものです。発光素子から照射されている光が検出対象の物体によって反射され、その反射光を受光素子が検知することにより物体を検出します。

反射光の強度は、1つには物体とフォトリフレクタ間の距離に応じて決まります。物体とフォトリフレクタ距離が近ければ、それだけ反射光は強くなるので物体とフォトインタラプタの距離は反射光の強さから大まかに求めることが可能です。

また、光の反射率は物体の色や濃度によって異なるため、光の強さを検知することで、色の違いや濃淡の検出もできます。

フォトリフレクタのその他情報

反射形フォト・マイクロセンサを採用する上での注意点

1. 外乱光
フォトリフレクタは、構造上受光素子が外側に向かって組み込まれているため、外乱光が受光部に回り込みやすいことを考慮する必要があります。通常フォトリフレクタの受光部には、波長700nm以下の光を遮断する可視光カットフィルタを設置して外乱光の影響を低減ようにしていますが、それでも完全に防ぐことはできません。

2. 背景
背景の影響とは、検出物体がなくとも背景物体が発光素子の光を反射して、受光素子が誤検知することです。例えば、ステンレスや亜鉛メッキのフレームの上を紙が通過し、その紙の通過を検出するような場合だと、紙検出時の受光信号レベルよりも紙のないときの受光レベルの方が大きくなることが起こり得ます。

そのため、背景は真黒もしくは大きくスペースが空いていることが望ましいものです。

3. 検出対象の光反射率
出力レベルについて注意すべきは、検出物体の種類や距離、大きさにより反射光量が大きく変化することです。もともと反射形フォト・マイクロセンサの光電流は、物体を検出しているときでも数十μA~数百μA程度の電流レベルしか得られないので、受光素子の出力レベル自体が低いということを認識する必要があります。

周囲が暗黒であっても、受光素子には暗電流や漏れ電流が流れ、これらが温度上昇で10μA以上に達することがあり、これらのノイズレベルが信号レベルに対して無視できないことを留意しなければなりません。特に反射率の低い物体は、ノイズに対する信号の割合が極めて小さくなるため注意が必要です。

4. 小さな物体や透明な物体の検出
検出対象の物体が小さい場合や透明な物体は反射光が弱いので、受光素子の出力信号レベルが小さく、ノイズに紛れてしまう可能性があります。検出物体の大きさに関しては、フォトインタラプタの仕様を確認しておくことが大切です。

蒸留装置

蒸留装置とは

蒸留装置

蒸留装置とは、沸点の違いにより混合物から単一成分を取り出す装置です。

実験室レベルの蒸留は、何度も蒸発と凝縮を繰り返して分離を行いますが、工業レベルでは蒸留塔とよばれる連続的に蒸留が可能な装置が用いられています。酒類の蒸留では、一度蒸発と凝縮をするだけの単蒸留と呼ばれる蒸留方法が使用されます。

蒸留装置の使用用途

蒸留装置はさまざまな産業分野で使用されています。以下にそのいくつかの使用用途を紹介します。

1. 石油精製

原油はさまざまな成分から成り立っていますが、それらを分離するために蒸留装置が使われます。異なる沸点を持つ成分は、蒸留装置によって分離され、異なる製品として利用されます。

2. アルコール製造

アルコールの製造でも蒸留装置は重要な役割を果たします。発酵によって得られた液体を蒸留して、アルコールを高濃度で得ることができます。

3. 製薬業界

製薬業界では、有効成分を抽出したり、不純物を取り除いたりするために蒸留装置が使われます。これにより、薬品の品質を確保できます。

蒸留装置の原理

蒸留装置の構成要素は、蒸留塔、凝縮器、蒸発缶、流量調整弁などです。蒸発缶で蒸留対象の液体を蒸発させ、蒸留塔に送られます。蒸留塔では連続的に蒸留を行い、分離した液体は再び蒸発缶へ輸送され、分離した気体は凝縮器へ輸送されます。凝縮器では冷却水などによって冷却され、分離された気体が液化されて分離されます。

蒸留塔の構造は、棚段塔と充填塔の2つです。棚段塔は内部がトレイと呼ばれる棚段で仕切られており、各段で気体と液体が接触するようになっており、分離が行われます。充填塔は内部に充填物が上側が不規則に、下側が規則正しく詰められています。充填物により液体の表面積が大きくなることで、気体と液体がより接触しやすくなり蒸留の効率が高まります。また、圧力損失が棚段式に比べて少ないことが特徴です。

蒸留装置の選び方

蒸留装置の選定の際には、蒸留対象物の沸点や融点に十分対応できるかどうかの強度、蒸留対象物への耐久性があるか、サイズや蒸留速度などを考慮する必要があります。

蒸留装置は実験室レベルでは、フラスコとバーナー、冷却管の構成になっていますが、工業レベルではその規模が大きくなります。処理量が多く、目的の純度まで精製する必要があるため、フラスコを何段も重ねたような蒸留塔で連続蒸留を行います。

蒸留装置では目的生成物を得るために、蒸留塔の低沸点成分、高沸点成分の中でキーになる成分を決めて、蒸留塔を設計しているので、その成分の沸点が制御温度です。蒸留装置で処理する流体の組成によっては、腐食などに強い材質を選定する必要があります。費用面から材質のクオリティーを落とす場合は、防食用のケミカルを注入するなど対策を取らなければければなりません。

蒸留装置のその他情報

1. 蒸留装置の使い方

蒸留装置は実験室レベルのものであれば、ガラス器具で組み立てます。装置構成は、原料を仕込むフラスコ、蒸気を冷却する冷却管、温度計、ヒーター (バーナー) 、保温剤、低沸点成分を受け入れるビーカーです。また、攪拌混合が必要であれば、スターラーを設置します。

蒸留操作では、フラスコに仕込んだ原料を温めるために、ヒーターの温度を設定します。バーナーを使用するのであれば、火炎を出して温度計を確認しながら調整を行います。

冷却管への水の導入は、フラスコから遠い側の導入口から流し入れます。これは、向流の方が並流より同じ冷却管の大きさで効率的に冷却できるからです。実験室スケールの装置の場合、外気の温度の影響を受けやすいので、蒸気が通る配管部分の保温も重要です。

2. 蒸留を行う上での注意点

蒸留装置を設計する上で、温度計の測定位置は重要です。塔内の気液のどの部分を測定しているかによって、温度が異なるたため、ヒーター制御につなぐ温度計の測定位置が異なると、蒸留塔そのものの分離に影響してきます。

また、コンデンサー (冷却器) に流す冷却水の温度にも注意が必要です。冷却水に海水を使用する場合は、夏場は目的温度まで冷却できなくなる恐れがあります。そのため、冷却装置で温度コントロールされた冷却水を利用するのが理想的です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/6/66_300/_pdf
https://www.kce.co.jp/tec-info/distillation/distillation-facility.html
https://www.nikkaki.co.jp/products/about_plant
https://www.kiriyama.co.jp/dcms_media/other/

ベーンポンプ

ベーンポンプとは

ベーンポンプ

ベーンポンプとは、ベーンと呼ばれる平板や羽根状板を複数個用いて、ポンプ内体積を変化させて輸送する容積式ポンプです。

偏心ローターの遠心力によってベーンが遠心方向に伸びます。このとき、ベーン間の流体は体積が変化し、吸い込んだ流体を圧縮して吐き出すことでポンプとして機能します。

構造がシンプルかつ低騒音で安全性が高く、比較的低価格の製品が多い点が特徴です。

ベーンポンプの使用用途

ベーンポンプは、産業においてさまざまな用途で使用されます。以下はベーンポンプの使用用途一例です。

  • 半導体製造工程における洗浄液や冷却水の輸送
  • 潤滑剤・潤滑油の輸送
  • 飲料水の工場における飲料水の輸送
  • 印刷機のインクの輸送
  • 自動車の油圧システムにおける動作油の輸送

ベーンポンプ選定の際は、吐き出し量や動作時の圧力、使用する電源、サイズ、騒音の度合いなどを考慮する必要があります。

ベーンポンプの原理

ベーンポンプは、複数枚のベーンが付いた偏心ローターとケージング、吸い込み口、吐き出し口で構成されます。ベーンは遠心方向に動作し、スプリングを介してローターの接合部に取り付けられます。このスプリングによってケージングに押さえつけられている製品が多いです。

ベーンポンプ回転時は、吸い込み口から吸い込んだ流体がベーン間に流れ込みます。ベーン間の流体は吸い込み口よりも低圧であるため、流体が流れ込みます。

吸い込まれた流体の移動中にベーン間体積が減少して圧力が高くなります。高圧となった流体を吐き出し口から出すことで、ポンプとして揚程を与えます。構成部によって機能が異なるため、使用される素材も異なります。

1. ベーン材質

ベーンは最も摩耗する構造部のため、耐摩耗性に優れる素材が求められます。同時に耐焼付き性と相手材への攻撃性が低いことも重要です。

この要求を満たす素材として、SUS304、SUS306などのオーステナイト系ステンレス鋼が広く利用されています。オーステナイト系ステンレス鋼は耐食性と耐摩耗性に優れ、成形性も良いことから高い精度が必要なベーンにマッチした素材です。

2. ローターシャフト材質

ローターシャフトは回転部品のため、優れた耐摩耗性と耐食性が求められます。そのため、SUS304・SUS306などのオーステナイト系ステンレス鋼や、SCM435などの比較的安価な低合金鋼が利用されます。形状は円筒でシンプルなため、ベーンほど加工性が高い必要はありません。

3. ケーシング材質

ローター部分を覆う部品はケージングと呼ばれ、FCD450などの黒鉛鋳鉄やSC460などの炭素鋼鋳鋼の鋳物が使用されます。ローターやそのほかの部品を固定し支える機能が求められ、構造強度は求められます。

ただし、ベーンやローターシャフトのように耐摩耗性の要求が高くないことが特徴です。軽量化のニーズが高い自動車用途では鋳鋼の代わりに軽量なアルミダイキャスト材が利用されます。

ベーンポンプのその他情報

ベーンポンプの故障

ベーンポンプが故障すると異音が発生したり、ポンプの吐出量が低下するなどの症状が発生します。主な故障の原因は、部品の摩耗と流体異常の2つです。

ベーンポンプは回転によって流体を吐出する仕組みで、回転部品は常に摩擦・摺動を繰り返しているため、使用期間が長くなると摩耗が進行します。部品が摩耗すると摩耗粉が流体に混ざるため、正常な流れが発生せずに異音が生じます。

また、摩耗して気密が低下すると流体をロスするため、吐出量が低下します。適正な運転条件を守り、定期的な部品交換での対策が重要です。

流体の異常によって故障する場合もあります。摩耗粉の混入や温度が低下したりすると、流体の粘度が高くなります。その結果、負荷掛かり異音の発生や吐出量の低下が発生します。運転条件を適正に管理しつつ、ストレーナなどの洗浄機能を持つ部品をメンテナンスすることが重要です。 

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/11/6/11_6_346/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfps1970/25/7/25_7_850/_pdf
http://daidopmp.co.jp/products/v-series/

トロコイドポンプ

トロコイドポンプとは

トロコイドポンプ(英語:trochoid pump)とは、外歯車と内歯車とがかみ合って流体を輸送する内接型の容積型ポンプです。日本オイルポンプ株式会社の商標登録になっています。

外歯車と内歯車の歯形がトロコイド曲線の形状をしているので、トロコイドポンプと呼ばれています。トロコイド曲線は、円をある曲線に沿って滑らないように転がしたとき、その円の内部又は外部の定点が描く曲線のことです。

内歯車を駆動すると、かみ合っている外歯車も同じ方向に回転します。このため、小型になり、歯車のすべり速度が小さく低騒音で圧力脈動が少ないなどの特徴があります。オイルの移送に多く使用されますが、クーラント、燃料、特殊液体にも対応できます。

トロコイドポンプの使用用途

トロコイドポンプは、建設機器や産業機器、工作機械、食品機械、印刷機械、環境設備、レジャー施設、船舶などで主として潤滑油の供給に使用されます。輸送する液体は、揮発性の油やガソリン以外の、油圧システムや研磨剤などの油、燃料、クーラント、薬液などです。

トロコイドポンプの選定の際には、動作時の圧力、回転数、吐出し量、温度、輸送に対応している液体の種類などを考慮する必要があります。

トロコイドポンプの原理

トロコイドポンプは、円形のケージングに歯形がトロコイド曲線の2つの歯車、軸、軸受け、吸い込み口、吐き出し口、軸シール、リリーフ弁、吸入ストレーナなどで構成されています。

内側にある円形のケージングに収まる歯車と、外側の歯車の内側に収まる歯車の2つがあります。内側の歯車の歯数は、外側の歯車より1枚少なく、両歯車は偏心しています。内側の歯車の中央に軸が接続され、回転させます。

内側の歯車が回転すれば、歯車がかみ合う外側の歯車も回転しますが、外側の歯車は内側の歯車の回転速度よりも遅く回転します。そして、両歯車で仕切られた空間の体積が変化します。その体積変化によって、吸い込み口から流体を吸い込み、吐き出し口で流体を吐き出す様に作用し、ポンプとして機能します。

トロコイドポンプは、一定吐出量のポンプです。回転数が一定の場合、吐出量と圧力との関係は反比例の関係があり、圧力が0の時吐出量は最大になります。そして、圧力が最大の時、吐出量は0ですが、駆動動力は最大になり、電動機が過負荷になる可能性があります。

トロコイドポンプのその他情報

1. トロコイドポンプの特徴

トロコイドポンプには4つの特徴があります。

    • コンパクト
      内接歯車型ポンプなので、同容量の他のポンプに比べて小型です。したがって装置設計の自由度が上がります。
    • 自吸性
      容積型ポンプで自吸性があるため、他の渦巻ポンプと異なり、呼び油の必要がないメリットがあります。
    • 低騒音・低圧力脈動
      内接歯車方式で、歯車のすべり速度が小さいので、噛み合い音が小さく、圧力脈動も少ない特性があります。
    • 低コスト
      シンプルな構造で、内側の歯車および外側の歯車は焼結合金でも製作可能であり、比較的安価と言えます。

2. トロコイドポンプの故障

吸込配管の詰まりやストレーナの詰まりにより、吐出圧が上がらないなどの不具合が発生します。吸込側のフィルタの点検及び清掃が必要です。また、ラインにピンホールが発生していたり、フランジ部での締め付け不良によりエアーを吸込み、吐出できない可能性もあります。

さらに、長期停止後の再稼働時には液体の粘度が上がっていたり、固着していたりする場合もあります。液漏れが発生する故障は、シール部の劣化もしくは損傷の可能性が高いです。オイルシールなどの消耗部品は定期的に交換するなど、整備周期を決めてメンテナンスを実施し予防保全を行うことが大切です。

また、フランジ面での漏れには片締めの可能性もあります。ポンプのキャビテーションが発生すると、異音が発生します。キャビテーションを起こしている場合、ポンプの吸入圧力を測定し、吸込配管側の損失や抵抗をできるだけ下げることが必要です。

外気温によって液体の飽和蒸気圧近傍となる場合、フラッシュする可能性があります。軸受部が損傷している場合、軸受の交換が必要になります。消耗部品として定期的に交換するメンテナンスが大切です。

参考文献
https://sites.google.com/site/cinderellajapan/gao-xiao-shu-xue/baikaihensuu/trochoid
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaeronbun/49/2/49_20184206/_pdf
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/nop-toro/book/nop-toro-P0119.pdf

電極棒

電極棒とは

電極棒とは、物体の位置を検出する用途で使用される金属棒です。

電気伝導性と耐久性を備えた重要な素材であり、その高度な機能性と精度により、さまざまな産業分野で活躍しています。水処理施設における利用、貯水槽や浄水プラント、下水処理施設での使用が一般的です。

水位の変動を検知します。これにより、適切な水の供給や排水制御が可能となり、施設の効率化と安全性の向上に貢献します。

電極棒の使用用途

水位位置検出が可能な電極棒は、その高い信頼性と正確性により、さまざまな産業分野で広く使用されています。

1. 水処理施設

水処理施設では、水位の正確な監視が重要です。電極棒は貯水槽や浄水プラント、下水処理施設などで使用され、水位の変動を検知します。適切な水の供給や排水制御が可能となり、施設の効率化と安全性の向上に貢献します。

2. 水道設備

水道設備においても、電極棒は水位検出に使用されます。例えば、給水塔や貯水タンクでは、電極棒が水位の高さを測定し、水量管理や給水計画の立案に活用も可能です。

また、家庭やビルの給水装置にも電極棒が組み込まれており、正確な水位情報に基づいて給水制御が行われます。

3. 農業・灌漑

農業や灌漑システムにおいて、水位の監視と制御が重要です。電極棒は農業用の水槽や灌漑チャネルで使用され、正確な水位情報を提供します。農作物の水やり量や灌漑スケジュールの最適化が可能となり、水資源の効率的な利用が実現されます。

4. 水産養殖

水産養殖業では、魚や貝などの生育環境の管理が重要です。電極棒は養殖池や水槽に組み込まれ、水位の監視と制御を行います。水位の変動に応じて養殖環境を適切に調整することで、水質や水温の安定性を確保し、生育環境の最適化を実現します。

5. 水力発電

水力発電所では、ダムや貯水池の水位管理が不可欠です。電極棒が水位の変動を検出し、制御装置にフィードバックすることで、安定した発電量と安全性が保たれます。

電極棒の原理

長さの違う電極棒を2本以上タンクに固定して使用します。電極棒同士に微弱電圧を掛けておき、導電性の物体が接することでレベルを検知します。タンクに使用する際は、スイッチリレー、ホルダ、電極棒の3組がセットで使用される場合がほとんどです。

ホルダは電極棒を固定し、電極棒でレベルを検知した後、スイッチリレーが電極棒に電圧を印可しつつ接点出力をします。電極棒は、「フロートレススイッチ」というデバイスとの組み合わせた構造です。

スイッチリレーからは、微弱な電圧である30V未満が供給され、電極棒同士の接触によって出力制御が行われます。フロートレススイッチは、高い液位で電極棒が浸ることでONし、低い液位で電極棒が液体から離れることでOFFする接点を備えています。この接点により、ポンプの運転停止を制御してタンクの水位を一定範囲に保ちます。

1組の電極棒は、アース用、減水用、復水用、満水用の4本構成です。排水ポンプ制御用の場合を例に取った場合、減水用と復水用の電極を入れ替えることで、給水ポンプ制御用としても利用できます。

1. アース用

アースは最も長い電極棒で、受水槽の底面近くに設置します。動作時は常に水に接しており、通電しているので、全ての電極棒の基準となります。「コモン電極」とも呼びます。

2. 減水用

2番目に長い電極棒で、ポンプが空転する可能性があるなどの問題が生じるほど、受水槽の水位が低下していることを検知します。ポンプの吸い込み口のやや上に設置します。

3. 復水用

減水用より短い電極棒です。減水の電極棒で水位が低下していることを検知し、ポンプの動作を停止した後に、ポンプを再び動作させるために十分な水位があることを検知します。

4. 満水用

最も短い電極棒で、受水槽の満水を検知します。満水を検知する他の機器が故障した場合でも、満水を防止するために取り付けられます。通常の満水検知の水位よりも上に設置します。

 

電極棒は金属で構成されている製品がほとんどで、液体に晒されるため、腐食によって正常に動作しなくなる可能性があります。また、レベル検知の原理から絶縁性物体の検知には不向きで、絶縁油などに対しては使用できません。

電極棒の選び方

使用用途によって、電極棒の選定の際には、長さ径、耐久性を考慮する必要があります。

また、電極棒の材質物性の説明に「耐食性が十分」もしくは「耐食性がある」という表記である場合も、まったく浸食がないというわけではないため、1か月に1度点検をし、必要に応じて電極棒の交換が推奨されています。

ロッカースイッチ

ロッカースイッチとは

ロッカースイッチ

ロッカースイッチは、手動でスイッチングを行う装置の一種です。ロッカースイッチは、ボタンの部分がシーソーの様に動くことで、電気回路のオンオフ切り替えが可能となっています。

ロッカースイッチは家庭内でも目にすることができます。例えば、照明のスイッチや装置の電源ボタンで「〇」と「-」が両端についているようなスイッチです。ロッカースイッチは構造が簡単であるため、幅広く様々な装置や施設内で使用されています。

ロッカースイッチの特徴として、動作時に「カチッ」と音がすることや、明確にオンとオフを見分けられることにより誤操作を少なくできるというメリットがあります。

ロッカースイッチの使用用途

ロッカースイッチは、手動で操作するスイッチとして幅広く利用されているのが特徴です。普段の生活で目にしたり、操作したりしているスイッチのほとんどはロッカースイッチだと言えます。

ロッカースイッチの具体的な使用例としては、「家庭内や事務所などの照明用スイッチ」「複合機やプリンタなどオフィス機器の電源スイッチ」「実験装置や計測機器の電源スイッチ」などです。ロッカースイッチは構造が簡単で、オンオフ操作も直感的に行うことができるため、あらゆる製品の操作スイッチとして使用されています。

しかし、ロッカースイッチは種類が豊富です。それぞれ使用電圧や耐久性、防水性など、ロッカースイッチごとに特徴は異なります。このため、使用用途や使用環境に合わせた適切なロッカースイッチを選定する必要があります。

ロッカースイッチの原理

ロッカースイッチの構造はシンプルです。ロッカースイッチの構成部品は主に、「シーソーの様に動く操作ボタン」「シールゴム」「ばね」「固定接点」「可動接点」「2つの接続端子」があります。

ロッカースイッチの操作ボタンは、内部のばねと接合されています。さらに、ロッカースイッチの操作ボタンとばねの間にあるのがシールゴムです。このシールゴムの目的は、接点部分に水や塵などの動作に影響のある物質が入らない様に保護することです。

ロッカースイッチのばねは弓状になっています。そしてばねには、操作ボタンと可動接点と接続されています。スイッチオンの時は、弓状のばねの可動接点側が固定接点に押し付ける様に動き、接点同士が接触したときに電流が流れる仕組みです。

ロッカースイッチがスイッチオフの時は、弓状のばねによって、可動接点が固定接点から引き剥がされる様に動き、電流の流れを止めます。可動接点が引き剝がされる様に動作するため、接点同士が溶着することを防ぐのがメリットです。

ロッカースイッチなど押しボタンスイッチに使用される用語で「モーメンタリ」と「オルタネート」があります。これはスイッチを押したときの動き方でそれぞれ異なる意味があります。

1. モーメンタリ型ロッカースイッチ

モーメンタリとは、英語で瞬間的という意味です。モーメンタリ型ロッカースイッチは、押している間だけ電気回路が切り替わり、手を離すと接点がもとに戻ります。例えば、ポットのお湯を出すボタンがモーメンタリ式です。

モーメンタリ式ロッカースイッチは、ボタンを押している間だけ役割を果たし、ボタンから手を離すと機能も元にもどります。このようなロッカースイッチを「モーメンタリ式」または「自動復帰式」と呼びます。

2. オルタネート型ロッカースイッチ

オルタネートとは、英語で交互という意味です。オルタネート型ロッカースイッチは、スイッチを押すと電気回路が切り替わり、再び押すまで接点が保持されます。例えば、部屋の電気をつけるスイッチがオルタネート式です。

オルタネート型ロッカースイッチは、ボタンを押すたびにONとOFFが切り替わります。このようなロッカースイッチを「オルタネート式」または「自己保持式」と呼びます。

ロッカースイッチのその他情報

ロッカースイッチの端子数と接続方法

構造が簡単なロッカースイッチですが、選び方には注意が必要です。ロッカースイッチを選定するときには、対応している電流や電圧、スイッチ自体の抵抗値、サイズ、温度や使用環境に応じた耐久性を考慮する必要があります。とくに知っておくべきなのが、ロッカースイッチの端子数と接続方法です。

ロッカースイッチの接続方法は、単純にON、OFFを行うだけなら簡単です。端子が2つの場合は片方を電源、もう一方を機器に接続します。ロッカースイッチの端子が3つの場合は、1つを電源、残った2つのどちらかを機器に接続します。接続前にテスターで回路の導通をチェックし、電源用端子と接点側端子を見分けておくのが一般的です。

ロッカースイッチには端子数が4つ以上の製品も存在します。ロッカースイッチ内部に照明用の電球が内蔵されている場合です。端子の内訳としては、機器に送電する回路と、電球用の電源アースがあります。

端子数が4つのロッカースイッチを接続する方法としては、照明内蔵タイプのロッカースイッチの場合は電源を2つの端子に接続し、1つを機器に接続、さらにロッカースイッチ内の照明用アース線を接続します。もちろん使用するロッカースイッチによって、内部回路は異なるため注意が必要です。

「ロッカースイッチに付属している取扱説明書で電気回路を確認する」あるいは「サーキットテスタで内部回路の導通を確認する」のどちらかを行い、内部回路を把握してから配線接続を行いましょう。

やみくもに配線接続を行ってしまうと想定通りの動作をしない可能性があり、最悪の場合ロッカースイッチや機器を損傷させてしまう恐れがあります。

参考文献
https://www.nidec-copal-electronics.com/j/featuring/switch/picturebook/
https://www.nkkswitches.co.jp/support/klg/knowledge.html

ダイヤフラムポンプ

ダイヤフラムポンプとは

ダイヤフラムポンプ

ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムと呼ばれる薄膜を動作させることによって、流体を流すポンプのことを言います。体積変化によって、流体を流す容積式のポンプになります。非常に微小な流体を正確に流すことに向いており、実験装置など高精度の溶液を使用する機器に使用されます。粘性の大きな流体や粉体流を流すことができるほか、構造上、漏れが発生せず、メンテナンス性が高いこと、脈動を起せることが特徴です。

ダイヤフラムポンプの使用用途

ダイヤフラムポンプは、化学製品、薬品、機械製品などの製造現場、人工心臓、実験装置などで使用されます。輸送する流体が漏れない構造から、危険性の高い薬品や化学物質、高いクリーン度が要求される現場で使用されます。また、粉体流を輸送することができるので、研磨剤の輸送や廃液の回収の用途でも使用されます。その他にも、正確に流量を調整できる特徴を利用して、人工心臓などの生体機器や、正確な流体を流すことが可能な実験器具のポンプとしても利用されています。

ダイヤフラムポンプの原理

ダイヤフラムポンプの動作原理を説明します。ダイヤフラムポンプは、吸い込み口と吐き出し口がついており、1面にダイヤフラムと呼ばれる伸縮性のある薄膜がついている容器と、吸い込み口と吐き出し口に逆流防止弁がついている構造になっています。

動作時は、吐き出し口側の逆流防止弁が閉じられ、ダイヤフラムが引っ張られ、容器の体積が大きくなり、容器内の圧力が低下します。圧力が低下すると、吸い込み口側から流体が容器内に吸い込まれます。ダイヤフラムが最大まで引っ張られると、吸い込み口側の逆流防止弁が閉じられ、吐き出し口側の逆流防止弁が解放されます。その後、ダイヤフラムが押し出され、容器内の体積が小さくなり、吐き出し口から流体が押し出されるように流れます。この動作をくりかえることによって、ポンプとして機能します。ダイヤフラムによる容器内の体積変化を調整すれば、容易に流量の調節を行うことができるほか、粘度が高い流体でも容積変化による輸送のため、対応しています。

ダイヤフラムポンプの寿命

ダイヤフラムポンプの寿命は使用流体、使用圧力、稼働率等により異なります。基本的には、ダイヤフラム自体が破れず消耗部品が摩耗し破損しなければ使用し続けることが可能です。ただし、電磁弁を採用しているダイヤフラムポンプの場合、電磁弁の作動回数による寿命も1つの要因として考慮する必要があります。

流体内に異物や固形物が混入する場合、ダイヤフラムに傷をつけ破損につながることが多いため、注意が必要です。逆に、それらが含まれない流体の場合は圧力や流体にもよりますが、常時稼働で3~4年ほどは持ちます。

実際の寿命はポンプの型式及び使用環境により変化するため、メーカーとの協議が必須となります。

ダイヤフラムポンプの脈動

ダイヤフラムポンプを含む往復運動を用いて流体を輸送するポンプでは「脈動」という現象が発生します。人間の心臓も圧縮と膨張を繰り返すことで血液を体中に送っていますが、ドクン、ドクンと脈を打つことが確認できるかと思います。これと同様の現象がポンプでも発生します。つまり、流体を送る→吸込む→送るを繰り返すことで流体が脈を打つように送液されることからこう呼ばれます。

この脈動を低減する方法としていくつかありますが、導入事例をいくつか紹介します。

1つはエアーチャンバーと呼ばれる機構をポンプ二次側(出口側)に設置します。ポンプ送液時の圧力変動をエアーで吸収することで、脈動を抑制し一定の流量を取り出すことが可能となります。ただし、エアーチャンバーは流体とエアーが同一の容器内に入ることとなるため、エアーが流体に溶け込むリスクが発生します。対策としてアキュムレータと呼ばれるエアーと流体をゴムなどの材質で仕切りを設けた部品も存在します。

異なる方法としては、1つのダイヤフラムポンプに複数ダイヤフラムを使用したポンプを採用します。これにより、片側のダイヤフラムが吸込みを行っている間にもう一方のダイヤフラムは送液を行い、交互に繰り返すことで吸込みと送液の差を限りなくなくすことで、脈動を低減することができます。

参考文献
https://www.tacmina.co.jp/library/coretech/128/
https://www.tacmina.co.jp/library/coretech/207/
https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/06/