CAMシステム

CAMシステムとは

CAMシステムとは、CADで作成されたデータをもとに、コンピュータで制御された工作機器を制御するプログラム (NCプログラム) に加工するためのシステムです。

加工の種類によって2Dデータを利用するものと、3Dデータを利用するものがあります。図面などを見ながら工具のサイズ・動きを加味して、工作機械へ直接プログラムして工作機械を動かすことも可能ですが、CAMシステムを利用することでそれらを自動で素早く正確なプログラムの作成ができます。

CAMシステムの使用用途

現在は多くの工作機器に数値制御装置 (NC (Numerical Control) )が備わっており、加工を行うときにはNCプログラムを作成して工作を行うことが一般的です。このNCプログラムを作成するためにCAMシステムを使用します。

また、加工前に工具の動きをシミューレーションすることができ、未加工状態や加工間違いを事前に発見することができます。その他にも、ある程度の加工時間を予測することができるため、素早く見積書を作成したり工作機器のスケジューリングを行うために使用されたりもします。

CAMシステムの原理

CAMシステムは大きく分けて、メインプロセッサとポストプロセッサから構成されます。

メインプロセッサでは、使用する機械の種類、工具の形状 (種類や直径) を設定し、CADで読み込んだ形状に合わせてどのように加工するかを計算して工具の移動経路を作成します。作成されたデータはCL (Cutter Location) データなどと呼ばれます。

ポストプロセッサでは、CLデータを使用する工作機器にあわせて制御用のデータ (NCプログラム) を作成します。NCデータは基本的にはISOで規定されているGコードとMコードで構成されますが、メーカーによって使用する座標軸が異なったりメーカー独自のオプションなども含まれるため完全なコードの統一はできていません。そのため、ポストプロセッサは主要な加工機のデータベースを持っており、それを元にNCデータが生成される仕組みとなっています。

この2つの工程を踏むことによって、どのメーカーのCAMシステムを利用しても、工作機械は問題なく動作することができます。

CAMシステムのその他情報

1. CAMとCADの違い

CAMとCADは混同されやすいですが、業務の工程、作業の目的が異なります。

CADシステムは、設計・製図のために用いられます。2次元では平面の図面に線や円弧を描いたり、3次元では立体モデルを直方体や球で表現します。CADシステムで設計された図面を元にした製造のために用いられるものがCAMシステムです。CAMシステムによって製造のための機会を動かすことができますが、設計図は作れないため、どちらに対しても知識を深める必要があります。

2. CAMシステムの市場規模

CADとCAMと併せて、CATという製品の検査へ用いられるシステムがあります。その3つのシステムの市場規模については毎年市場調査がされており、2020年では約3900億円以上と大きな市場となっています。現在はテレワークでの作業が増え、クラウドの活用が増えています。近年は他の業界含め市場全体が減少傾向ではあるため、クラウド化や仮想化などの技術促進が必要です。

3. CAMシステムのメリット

CAMシステムの導入のメリットは主に以下のようなものが挙げられます。

システムで設計や製造を行うため、データで残すことが出来るため似たような製造を行う時に活用が可能です。そして、システム上でシュミレーションをすることで、エラーが見つかった時も機械での製造前に発見が出来るため、無駄の削減に繋がります。

また、4軸加工といった同時の加工が制御できるものはそれぞれの軸同士の干渉を防ぎながら製造ができるため、人の手では難しいような複雑な加工にも対応ができます。それにより、経験の浅い方も製造に携わった場合でも人による品質のムラもなくなり、品質向上や人材不足解消とにも繋がります。

「作業の効率化」とそれによる「コスト削減」に繋がることが大きいため、事業の規模を問わず企業にとって導入のメリットは大きいです。

参考文献
https://www.mastercam.co.jp/product/mastercam/cad-cam/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/79/4/79_309/_pdf
https://www.fact-cam.co.jp/document/glossary/glossary-03.html
https://cad-kenkyujo.com/2020/03/02/cad-cam/
https://cadjob.co.jp/cad_course/column/p1013/
https://www.fact-cam.co.jp/document/column/archives/000332.html
https://www.fact-cam.co.jp/document/column/archives/000330.html
https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/cad/

低温恒温器

低温恒温器とは

低温恒温器

低温恒温器とは、恒温器内部の温度を低温域~高温域 (約0℃~約60℃または約-10℃~約50℃) の恒温設定が可能な環境試験機です。

名称はメーカーによって異なり、恒温器をインキュベーターと呼ぶため、低温インキュベーター、ローテンプインキュベーター、クールインキュベーターとも呼ばれます。なお、設定した時間に、設定した温度に変化させるプログラム運転が可能な大型の機種から卓上で使用可能な小型のものまで揃っています。

低温恒温器の使用用途

低温恒温器は、環境試験機の1種で、低温域での試料の変化が重要な分野の試験に使用されます。食品分野の保管や貯蔵に関連する試験、動植物の低温環境試験、生化学分野の低温実験などが主な使用用途です。

低温恒温状態が必須の用途もあり、微生物の培養や保存試験、植物組織および動物組織の培養や保存試験にも有用です。この他、各種部品や装置の耐久試験や劣化試験にも使用されています。

温度と時間をプログラムして24時間の温度変化を再現した耐久試験や劣化試験、低温と高温を極端に変化させた耐久試験や劣化試験およびこれらの加速試験などが主な用途です。このため、世界中の教育機関、試験機関および研究機関に設置されています。

低温恒温器の原理

低温恒温器は、槽内温度を比較的低温の領域で保つ装置です。試料を入れる槽は、外部環境により内部温度が変化しにくい断熱構造を施した外壁を有しています。

そのため、外部の温度変化の影響を最小限に抑えて、内部温度が一定に保たれる構造です。低温恒温器は、槽内の温度をコントロールする方法により「送風循環方式」と「エアジャケット方式」の2種類に大別されます。順番に解説します。

1. 送風循環方式

送風循環方式では、ファンを使用して槽内の空気を攪拌して温度を均一化しています。この方式では、試料を入れる槽の外に温度をコントロールした空気を作る装置があります。

そして、この空気を槽内に送り込むと共にファンを使用して槽内で拡販および循環させて、槽内の湿度分布を均一にする仕組みです。比較的大型の低温恒温器に使用されています。

2. エアジャケット方式の低温恒温器

エアジャケット方式は、ファンを持ちません。槽の外側にエアジャケットと呼ばれる空気が循環する層を持っています。この層で気流を起こして加熱と冷却による温度をコントロールしています。

そして、エアジャケットに囲まれた槽内の空間温度が自然対流によって均一に維持される仕組みです。この方式の場合、試料を保存する槽内に乾燥した空気や過剰な気流の発生があまりないことから、試料に対するダメージが軽減されるのが特徴です。

低温恒温器のその他情報

1. ペルチェ素子を用いた低温恒温器

低温恒温器の中には槽内の加温および冷却にペルチェ素子 (英: Peltier device) を使用した比較的小型のものもあります。ペルチェ素子は、電気を流すことによって吸熱面から発熱面に熱を移動させる半導体です。このような低温恒温器では、試料を入れる槽の外壁にペルチェ素子を直接接触させて内部の加熱と冷却をおこなっています。

このペルチェ素子を用いた低温恒温器は、非常に小型であり卓上で使用できるサイズのものもあります。例えば、マイクロチューブやバイアル瓶 (1~10mL) 、遠沈管およびシャーレなど少量容器での培養や保存管理に適したサイズのものもあります。

このような小型の低温恒温器では、庫内容量が大きい低温恒温器で問題となる「扉の開閉により温度が安定しない」などの不都合がありません。

2. 低温恒温恒湿器

低温恒温器の中には、低温だけでなく常温域などの幅広い温度の範囲もカバー可能で、調湿機能も備えた低温恒温恒湿器があります。低温恒温恒湿器の基本性能は、一般的な低温恒温器を上回るものが多く、約-20℃~85℃の温度制御域を持ちます。

また、湿度制御能力は、約50%~90%程度です。低温恒温恒湿器は、常温 (10 ~35℃) や冷蔵 (0~10℃) 、冷凍 (−15℃以下) での厳密な温度管理が必要な保存試験に最適です。この低温恒温恒湿器は、主に食品の保存試験や医薬品・化粧品の安定性試験などに使用されています。

3. 低温恒温器とインキュベーターの違い

恒温器はインキュベーターと称されます。ただし、インキュベーターには「孵卵器や新生児の保育器」などの生体保護の目的で使用される機器類も含まれています。この2つの決定的な違いは、例えば孵卵器用途で販売されているインキュベーターの設定可能温度は約20℃から40℃程度で、低温恒温器よりも適用可能温度域が狭いことです。

また、インキュベーターの中には、卵をかえすために必要な転卵機能や孵化環境を整えるための調湿機能を持つ機器もあり、これらは低温恒温器の代替として使用できません。インキュベーターと表記されている装置が低温恒温器なのか孵卵器なのかは、設定温度範囲で判断できます。例えば、−10℃から60℃までの制御に対応するインキュベーターは低温恒温器で、30℃±10℃の体温近傍の温度域に限られたものは孵卵器です。

価格帯にも違いがあり、小型孵卵器として発売されているインキュベーターは1万円未満なのに対し、低温恒温器の性能を有する機器として発売されているインキュベーターは数十万円の価格帯です。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/20
https://www.yamato-net.co.jp/product/category/science/incubator/low-temperature-incubator/
https://files.yamato-net.co.jp/support/catalog/p0199_ic402.pdf
https://www.wakenyaku.co.jp/ctg/ls.php?i=281
https://www.wakenyaku.co.jp/ctg/det.php?i=2764
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000126915.pdf
https://www.espec.co.jp/products/env-test/crh/
https://www.isuzuseisakusho.co.jp/lineup/midori/

パレタイジングロボット

パレタイジングロボットとは

パレタイジングロボット

パレタイジングロボットとは、製品が梱包された箱をパレット上の決められた位置に積み上げる産業用ロボットのことです。

パレタイザと呼ばれることもあります。パレタイジングロボットの特長は、重量物を運搬・積載する作業を高度に自動化されたロボットアームが担うことです。多品種少量生産の実現や食品の鮮度向上、出荷時間の短縮など多くの利点があるため、様々な業界で注目を集めています。

類似する設備として、パレット上に搭載された箱を自動で降ろすデパレタイジングロボットがあります。デパレタイジングロボットにも同様の効果があります。

パレタイジングロボットの使用用途

パレタイジングロボットは、食品・化学・機械部品などを扱う多くの製造業や物流業など幅広い業界で使用されています。製造や物流の現場では、製品が梱包された箱をパレット上に特定の配置で多数積み上げた後、フォークリフトによってパレットを持ち上げることで効率的に運搬しています。

梱包後の箱を手作業で1つずつ持ち上げて、パレットの上に何段も積み重ねる作業は非常に負荷が大きい作業です。現場では、腰痛のリスクなどが大きな問題になります。

パレタイジングロボットの導入によって、パレットへの積載作業を自動化されるため、省人化や労災リスクの軽減、生産プロセスの合理化などの効果が期待できます。

パレタイジングロボットの原理

パレタイジングロボットは、製品が梱包された箱を掴む把持機構と把持機構が取り付けられるアームを持っています。前後の工程もある程度の自動化を行うと、前工程から送られた箱の位置とパレットの位置を毎回同じにすることができます。

そのため、ロボットが予めティーチングされた把持・運搬・積載動作を繰り返し実行すれば、正確な位置への箱の積載が可能です。把持機構を構成する爪の片側が薄くなっており、隣り合う箱を密着させて積載できます。ロボットアームが作業員に衝突すると作業員が怪我をする可能性があるので、ロボットの可動範囲内に作業員が立ち入らないようにするための安全原則が規定されています。

従って、ベルトコンベアなどを利用した前工程からの商品搬送の自動化に加え、ロボットの可動範囲内への侵入を防止する柵の設置や、開口時に動作を停止させるインターロック付き扉などの付帯設備の設置を行うことで、作業員の安全が担保されています。

パレタイジングロボットの種類

パレタイジングロボットには、垂直多関節ロボット、直交ロボットなどがあります。

1. 垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットは、人間の腕に近い構造を持つロボットです。垂直多関節型のパレタイジングロボットは例えば4軸、5軸または6軸で構成されています。

2. 直交ロボット

直交ロボットは、単軸の直動ユニットを組み合わせたシンプルな構造のロボットです。直交型のパレタイジングロボットは、例えば3軸または4軸で構成されています。

パレタイジングロボットのその他情報

1. パレタイジングロボットのティーチング

パレタイジングロボットは、特定の位置で取得した商品を特定の位置へと置き直す作業を行います。例えば、パレタイジングロボットが縦30個×横20個の箱をパレットの上に置く作業を行う場合、パレットの上には全部で600個の箱が搭載されます。

1個の箱を置き直すためのパレタイジングロボットのティーチングポイント (ロボットが通過する位置情報) を5個定義しなければならないとすると、このパレタイジング動作をプログラムするためには、600×5=3,000個の位置情報をパレタイジングロボットにティーチングしなければなりません。

パレタイジングロボットに3,000点の位置情報を手動でティーチングするのは非常に大変な作業です 。そこで、一般的にはパレタイジングの特徴を活かしてティーチングを簡略化しています。

パレット上に箱が縦30個、横20個規則正しく並ぶ場合、隣り合う箱の位置関係が把握できれば、その位置の差分だけオフセットさせることで全ての箱の位置を計算で求められます。計算で求められた全ての箱の位置をロボットにティーチングすれば、ロボットのティーチングは完了です。

2. デパレタイジングとの違い

デパレタイジングとは、パレットの上に並んだ商品を決められた位置に移動させる作業のことです。つまり、パレタイジングの逆の作業です。パレタイジングとデパレタイジングでは作業内容がほぼ同じであるため、同様のロボットを使用できます。

デパレタイジングは、外部のメーカーから納められた商品を自社内の各所に搬送する作業の一部です。商品のパレタイジングは外部で行われるため、パレタイジング精度品質を一定以上に保ち続けることが難しい場合があります。この場合、自社内でのデパレタイジング作業を正確に行えなくなることもあるため、一般的にパレタイジングのプロセス開発に比べてデパレタイジングのプロセス開発の難易度の方が高いです。

参考文献
https://robotics.kawasaki.com/ja1/products/robots/palletizing/
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-7/hor1-7-13-1-0.htm
http://www.jidoka.net/serv/kaishi/jaaa-kaish-kobore-136.html

光学センサー

光学センサーとは

光学センサー

光学センサーとは、光や光の強さの変化などを検出し、データ変換し出力する装置です。

太陽光など目に見える可視光や可視光よりも波長の長い赤外線、逆に波長の短い紫外線を検出してデータに変換し、出力します。なお、光センサーと称されることもあります。

光学センサーの使用用途

光学センサーの使用用途は、非常に幅広いです。例えば、身近な用途として、デジタルカメラの画像データを取得のための受光装置や防犯カメラ、エアコンのスイッチ、自動ドアのセンサーなどが挙げられます。

最も単純な構造の光学センサーは、自動ドアなどに使用される人感センサーです。照射した光を受ける際に、その強度などから人による遮断があるかどうかを判断しており、この判断に基づいてドアを開閉しています。

一方、デジタルカメラなどに使用される光学センサーは非常に高度です。受けた光を電気信号として出力し、データを取得します。また、防犯カメラは、暗闇での使用を想定したもので、赤外線を検知できる利点を活かした応用例です。

光学センサーの原理

光学センサーは、光電効果と呼ばれる現象を利用した装置です。光電効果とは、物質に向けて光を照射すると、光と電子の相互作用により、エネルギーが電子に加わり物質の表面から電子が放出される現象です。

光学センサーには、光を放出する投光部と対象物質を介した光を受け取る受光部があります。投光部から放出された光が対象物質により、反射もしくは阻止された場合、受光部に届く光量が変わります。受ける光の変化を検出し、電気信号として出力するのがおおまかな原理です。

なお、光学センサーは光の検出方式の違いにより、「透過型」と「反射型」の2種類に分けられます。

1. 透過型光学センサー

透過型光学センサーは、投光部と向き合う形で受光部が設置された構造です。投稿部と受光部の間に対象物質が入ると光が遮られるため、検出される光に変化が生じます。これを利用してデータ出力しています。

例えば、投光部が赤外線LED、受光部がフォトダイオードであるものなどが代表的で、投光部からの光を対象物質が阻止する具合を受光部が変化として検出し、人や物質が通過したかどうかが確認できます。

2. 反射型光学センサー

反射型光学センサーは、投光部および受光部が一体になった構造です。対象物質に光を照射し、受光部により反射光を受け取って光の変化を検出しています。

光学センサーの特徴

光学センサーには以下のような特徴があります。

1. 離れていても検出が可能

磁気や超音波を利用した場合は、検出できない長距離での検出が可能です。透過型の光学センサーには、10m以上離れていても検出可能なものがあります。

2. 様々な対象物質に対応可能

対象物質に起因する光の遮断および反射による光の有無や変化を検出するため、ガラスやプラスチックおよび木材などの固体から液体まで、ほとんどの物質を検出できます。

3. 速い応答が可能

光自体の速度が速いこと、センサーの回路がすべて電子部品により構成されているため、機械的な動作がありません。このことから、短い時間での応答が可能です。

4. 高い分解能を達成可能

投光部からの光のサイズを小さくする、受光側の光学系を目的に応じて設計するのも可能です。そのため、高分解能を実現できます。分解能が高い装置では、微小物体の検出ができ、高精度の位置検出も可能となります。

5. 非接触での検出が可能

検出物体に光を照射するため、物質に非接触で物質の状態を検出できます。接触しないことから、対象物質および光学センサーが傷ついたり破損したりしません。したがって、当該装置の製品寿命は長いものとなります。

6. 色の判別が可能

検出物質の光の反射率や吸収率は、投光部からの光の波長と検出物質の色の組み合わせによって変わります。この性質を利用すれば、検出物質の色の判別もできます。

7. 容易に調節可能

投光部から可視光を照射する装置では、光を目視可能なため、検出物質との位置合わせも容易です。

光学センサーのその他情報

光学センサーを使用したマウス

光学式マウスは、手軽な価格で購入ができることに加えて、使用する際にドライバが必要ありません。そのたmえ、レーザ式やブルーLEDおよびIRセンサーなどの他のマウスよりも手軽に使用できるのがメリットです。

しかし、光沢素材上や規則的なパターンでの認識能力が下がりうまく動作しないというデメリットがあります。

参考文献
https://www.sensor-sk.com/hikari/hika01_hikari.html
https://www.klv.co.jp/iot/iot-optical-sensor.html
https://www.eorc.jaxa.jp/rs_knowledge/mecha_sensortype.html
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/43/2/index.html
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/35-09-kaisetsu4.pdf
https://www.eorc.jaxa.jp/rs_knowledge/mecha_sensortype.html
https://www.sanwa.co.jp/product/input/mouse/info.html

導電性ペースト

導電性ペーストとは導電性ペースト

導電性ペーストとは、金属粒子 (フィラー) と有機物 (各種樹脂) 、界面活性剤やポリマー (バインダ) の混合物です。

導通させたい部分に導電性ペーストを塗布し、熱処理することで接合と同時に電気が通るようになります。導電性を付与する方法としては、他にもはんだづけや導電性テープによる接着などがありますが、導電性ペーストに期待される要素として、鉛フリー、低温化、耐熱性、軽量化などが挙げられます。

特に近年では、低温化の技術革新が目覚ましく、半導体分野での応用が盛んに行われています。はんだの溶融温度が約183℃ (鉛フリーで約217℃) であるの対し、現在、導電性ペーストでは、処理温度が100℃を切る素材も実用化されています。また、導電性ペーストでは、はんだによる接着よりも柔軟性があるのも特徴です。

導電性ペーストは、低温で容易に使用できるメリットがあるため、応用的な場面だけでなく、理学実験にも広く使用されています。例えば、走査型トンネル顕微鏡 (STM) など試料台と試料間に導通させる必要がある場所で、導電性ペーストを塗布することで、試料に過剰に熱を与えることなく、接合が可能となります。

導電性ペーストの使用用途

導電性ペーストは主に、スマートフォンやPCなどに用いられる電子機器の導電接着剤として用いられます。また、理学実験にも使用される場合が多いです。

電子機器の小型化や軽量化が進む中、導電接着を行う際の低温化が半導体業界の必須課題となりました。導電性ペーストが鉛フリーであることに加え、そのような背景も導電性ペーストによる低温接着が脚光を浴びている理由として挙げられます。

また、導電性ペーストはドライブレコーダーなどの車載モジュールにも使用されており、こちらは導電性ペーストの優れた耐熱性により日中高温になる車内でも製品の品質劣化防止が期待されています。

導電性ペーストの原理

導電性ペーストは、導電率の高い金属のナノ粒子を有機物内に分散させ、樹脂の硬化により、接合した物体間に導電性を付与することができます。導電性ペーストに混ぜられる金属粒子としては、熱伝導率の高いAg (銀) が使用されているものが主流です。

導電性ペーストに銀の粒子を使用したものは、銀ペーストと呼ばれます。その他の金属としてNi (ニッケル)、Au (金) 、Cu () 、C (カーボン) などが挙げられます。

一方、導電性ペーストに混ぜられる有機物やポリマーは用途や各メーカーにより多種多様です。例えば、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられます。

凝集対策として金属ナノ粒子と有機物を混ぜていますが、混ぜる有機物やポリマーの組み合わせで導電性ペーストの安定性や耐熱性などの特性は大きく変化します。

導電性ペーストの選び方

導電性ペーストは、処理温度が低いため、高温に加熱される場所で使用することはできません。しかし、中には高温耐性の高いものやデガスが少ない製品もあるため、用途に合わせて導電性ペーストの種類を選択することが重要です。

導電性ペーストは熱処理を施さなければ、有機物で被覆されているため、導電性がないことも特徴として挙げられます。種類によっては、熱処理を施さずに乾燥させるだけで、樹脂が硬化して使用できるものもあります。使用されるバインダーの種類により、作業性や長期保存安定性、硬化条件、接着強度、耐湿耐熱性などが異なるため注意が必要です。

導通させる場所に合ったバインダーが使用されている導電性ペーストを使用することをおすすめします。保存には冷蔵が必要なものや、長期間保存していると硬化してしまい使用できなくなくなってしまう場合もあるため、使用している導電性ペーストの取扱説明書を確認する必要があります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep/19/4/19_234/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/11/1/11_1_93/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/79/8/79_730/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspmee/3/4/3_246/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/9/6/9_6_495/_pdf

ケミカルポンプ

ケミカルポンプとは

ケミカルポンプ

ケミカルポンプとは、化学薬品などの液体を運搬するために使用されるポンプです。

一般的なポンプとは異なり、ケミカルポンプは耐腐食性や耐摩耗性などの性能が求められます。通常のポンプと同様、液体を吸い上げて配管やタンクなどへ圧送します。

ポンプ内部の回転部分には、セラミックスやステンレス鋼などの耐摩耗性や耐食性に優れた材料が使用され、化学薬品による損傷を防ぎます。化学薬品を運搬するために必要な特性を持ったポンプであり、種類に応じて適した製品を選択することが重要です。

ケミカルポンプの使用用途

ケミカルポンプは、さまざまな産業分野で使用されます。

1. 化学プラントなどの工場

化学プラントなどの工場において、ケミカルポンプは必要不可欠な機器の1つです。化学プラントではさまざまな化学薬品を製造していますが、高い腐食性や毒性を持った薬剤は通常のポンプでは対応できません。そこで、ケミカルポンプを使用することで腐食や汚染を防ぎ、工場の安全性を確保しています。

2. 水処理施設

水処理施設では、汚水を浄化するために薬品を添加する必要があります。ケミカルポンプを使用することで、薬品の配合量を正確に制御し、浄化プロセスの効率化につながります。

3. 医療分野

透析装置などで使用される薬液の供給には、ケミカルポンプが使用され、医療器具の製造プロセスでもさまざまな液体を運搬しています。

ケミカルポンプの原理

1. 遠心力を使用する場合

回転軸と羽根車の間に液体が吸い込まれ、回転によってケーシングへ押し出されます。加圧された液体は、揚程を持って吐き出されます。液体の性質に合わせた素材で作られたポンプヘッドと、回転軸に取り付けられた回転羽根車で構成されます。

2. シリンダーによる加圧を使用する場合

小さな液体の定量運搬に特化しており、ピストンの動きによって液体を定量運搬します。高い精度で液体を計量することができ、医療や研究分野などで活躍しています。

また、動力源は電動、エアー駆動、手動などです。電動またはエアー駆動では高い運転効率と安定性を持ち、効率的な液体の運搬が可能です。一方、手動では電源がない場所でも使用でき、簡易的な液体の運搬に適しています。

ケミカルポンプの種類

ケミカルポンプの種類さまざまです。以下はケミカルポンプの種類一例です。

1. 脱泡ポンプ

液体中の泡を除去しつつ圧送可能なポンプです。脱泡用の薬剤を使用することなく脱泡できます。脱気ポンプなどとも呼ばれており、泡を割るために特別に設計されたポンプヘッドを使用します。

2. プロセスポンプ

プロセスポンプは、高い圧力と流量を必要とする化学プラントなどの用途に使用されます。ポンプヘッドは、高品質の合金鋼で作られ、高い耐腐食性を持ちます。回転部には、セラミックスやカーボンなど、耐摩耗性に優れた材料が使用されます。

3. 低脈動ポンプ

低脈動ポンプは、液体の流量を安定させるために使用されます。ポンプの動きが非常に滑らかであるため、液体を流量変動なく送り出すことができます。医療や研究分野などで高い精度が求められる場合に適しています。

4. ハンディケミカルポンプ

吸引パイプをドラム缶やペール缶などから液体を吸引できる持ち運び可能なポンプです。有機溶剤・化学薬品などの液体移送に使用されます。

静電気対策設計がされている引火・爆発性のある液体を取り扱える耐圧防爆タイプのケミカルポンプもあります。そのほか、流量調整を切り替えスイッチによって調整ができる流量調整式ケミカルポンプもあります。

5. 水中ケミカルポンプ

水中で使用できるケミカルポンプも販売されています。ポンプの材質としては樹脂と金属の両方が存在します。薬品の小分けや排水ピット内の液体移送などに使用されます。

参考文献
https://www.as-1.co.jp/academy/8/8-1.html
https://www.labinox.co.jp/product3-32.html
https://www.labinox.co.jp/product3-31.html
http://www.meitoukakouki.co.jp/product/cmh_lb.html
https://www.iwakipumps.jp/application/
https://www.iwakipumps.co.jp/company/aboutus.html

クラッド鋼

クラッド鋼とは

クラッド鋼

クラッド鋼とは、母材の片面に異種類の鋼を重ね合わせた複合材料です。

母材には炭素鋼や低合金鋼が用いられます。異種金属接合により、単体の金属にはない機能も発現可能です。新規の機能発現だけではなく、高価な金属に安価な金属を組み合わせることで、コストダウンも実現できます。

母材と鋼を組み合わせた後に、加熱と延伸の実施により製造されます。クラッド鋼の製造は古くからあり、日本刀や包丁にも技法が用いられています。

クラッド鋼の使用用途

クラッド鋼は、産業において幅広く使用されます。

1. 重要設備

化学プラントなどの重要設備では、高温高圧や腐食物質を取り扱うため材料には耐食性が求められます。クラッド鋼はそのような環境下でも耐食性を発揮するため、安全かつ長期にわたる設備の運用が可能です。

2. 海洋プラントや船舶の構造材料

海洋プラントや船舶の構造材料としても使用されます。通常の鋼材料は、海水中の塩分や海洋生物からの侵食によって腐食しやすくなりますが、クラッド鋼は表面のステンレス鋼によって腐食から守られて耐久性が高いです。

3. 包丁

包丁に使用される場合もあります。クラッド鋼で作製した包丁は、刃の部分のみ高硬度の炭素鋼を使用し、それ以外の部分は軟質なステンレスなどを使用しているため、落下した場合も欠けや全体の折れなどが起きにくいです。また、高硬度部分が限られた範囲に限定されており、比較的簡単に研ぐことが可能です。

クラッド鋼の原理

クラッド鋼は母材と鋼を組み合わせた後に、加熱をすることで、異種素材が接着されます。加熱方法は熱間圧延、溶接、爆発圧着などがあります。

1. 熱間圧延

熱間圧延は、異種金属を圧力によって接合する方法です。圧力をかけることで金属原子が互いの材料側に入り込み、界面で剥離しにくくなります。最後に圧延し、必要な厚さまでクラッド鋼を伸ばします。

2. 溶接

溶接は母材側の表層を熱で溶かし、その後合わせ材料側の表層も熱で溶かして貼り合わせる方法です。用途や合わせ材料の性質により、合わせ材料側の溶かし方を変える必要があります。

3. 爆発圧着

爆発圧着は、爆薬が爆発する際の瞬間的な高エネルギーを利用して、異種金属を瞬間的に接合させる方法です。熱間圧延や溶接が不可能な金属同士の接合に用いられます。鋼とアルミニウム間の接合などで使用され、加熱加工が難しい素材について適用が可能です。

クラッド鋼の種類

クラッド鋼は組み合わせる素材に応じて様々な種類があります。以下はクラッド鋼の種類一例です。

1. ニッケル合金クラッド鋼

ステンレス鋼に、ニッケル及びニッケル合金を貼り合わせたクラッド鋼です。ニッケルはピンホールができにくく、耐食性に優れます。また、チタンよりも製造コストが抑えられます。主な用途はコネクターや輸送ラインパイプです。

2. 銅合金クラッド鋼

ステンレス鋼に、銅及び銅合金を貼り合わせたクラッド鋼です。優れた電気特性を示し、ニッケルよりも密度が小さいため、軽量化に繋がります。主な用途は同軸ケーブルの芯やダイオードのリード線など、導電性を求められる製品です。

3. チタン合金クラッド鋼

ステンレス鋼に、チタン及びチタン合金を貼り合わせたクラッド鋼です。ニッケル同様、耐食性に優れます。特に海水や高腐食性溶液を取り扱う環境下で有効です。主な用途は海水淡水化装置などです。

4. アルミクラッド鋼

アルミニウムに鉄鋼材料を張り合わせたクラッド鋼です。比重を半分以下に軽量化できるため、自動車などのモビリティ業界で軽量化による燃費の向上が期待できます。また、アルミニウム合金の使用量を減らすことが可能で、材料コストも下げられます。

強度としても鋼材が使用されているため、アルミニウム合金よりも高い機械強度が要求される構造部材としても広く利用できるのがメリットです。アルミニウム合金も鉄鋼材料も成形加工性に優れるため、両材料から構成されるアルミクラッド鋼も容易に成形加工が可能です。

クラッド接合後の板材を曲げ加工プレス加工することで、比較的複雑な形状でもクラックなしでの成形加工ができます。鉄鋼材料とアルミニウム合金を高温に加熱し、拡散により接合するため、薄く脆い中間層の形成も少ない点もメリットの1つです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/53/1/53_27/_pdf
https://www.jfe-steel.co.jp/products/atuita/b10.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/53/1/53_36/_pdf
http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0050020660
https://www.kobelcokaken.co.jp/tech_library/pdf/no02/d.pdf

フォトマイクロセンサー

フォトマイクロセンサーとはフォトマイクロセンサー

フォトマイクロセンサーとは、小型のアンプ内蔵式光学センサーのことです。

光を利用して物体の有無や位置を検出することができます。一般的なフォトマイクロセンサーは反射型と透過型があり、それぞれ「フォトインタラプタ」、「フォトリフレクタ」などと呼ばれます。主に、機器内蔵用として様々な身近な製品に使われているセンサーです。

フォトマイクロセンサーの使用用途

フォトマイクロセンサーは、検出対象によって4つの種類に分けられます。

1. 反射型

光の反射を利用したセンサーです。プリンタに用紙があるかの検知や簡単なバーコード読み取りに利用されています。

2. 透過型

スリットを光が通過することで対象を検出するシンプルなセンサーです。ICカードや電車のチケットなどの検出に利用されています。

3. 分離型

発光部分と受光部分を動かし、間の距離を調節できるセンサーです。自動販売機で商品を買った際や、ゲーム機の景品を獲得した際の物体通過の検知に利用されています。

4. アクチュエータータイプ

アクチュエータと呼ばれるレバーを組み合わせたセンサーです。券売機や自動販売機などで紙幣の通過検知に利用されています。

フォトマイクロセンサーの原理

フォトマイクロセンサーの原理は、種類によって異なります。検出する物体や利用される場所によってこれらのセンサーの中から、最も適したものを選ぶことが大切です。

1. 反射型

反射型は、発光素子と受光素子を並行に設置した構造をしています。発光素子から放出された光は対象に当たって反射し、受光素子で受け取られます。

この反射した光によって物体を検知しています。簡単に設置できますが、検出するものや距離が限られてしまうという点がデメリットです。

2. 透過型

透過型は、発光素子と受光素子を向かい合わせに設置した構造をしています。発光素子が放出した光は直接受光素子で受け取られます。対象物が無ければそのまま光が受け取られますが、何か物体があると光が届きません。

シンプルで光軸の位置合わせが必要ありませんが、調べたいものの大きさが限られてしまうという点がデメリットです。

3. 分離型

分離型は、分離した状態で発光部分と受光部分が向かい合った構造をしています。発光素子と受光素子が離れているため位置を自由に決めることができますが、光軸を合わせなければならないのがデメリットです。

4. アクチュエータータイプ

アクチュエータータイプは、透視型センサーと回転するレバーを組み合わせた構造をしています。レバーを用いて光を遮断することで、光を透過させてしまう物体でも検出可能となります。しかし、レバー周辺の部品には寿命があるため使用期間に制限がある点がデメリットです。

フォトマイクロセンサーのその他情報

フォトマイクロセンサーの回路設計

設計をするにあたって重要な特性として、順電流の量からどれだけの出力があるかを示す光電流と抵抗があります。設計時のポイントは、順電流の最適レベルを考慮、選定してから制限抵抗値を設計することです。また、逆電圧が加わる場合は、LEDと逆並列にダイオードを設計します。

最悪値設計をすることで、機能上悪い方に特性が偏った場合にも正常に動作させることが可能です。上記のポイントを考慮しつつ、外部から適切レベルの電流を供給することが必要になります。どの程度の順電流で、受光側が動作するかを考慮しながら設計すると正常な動作をします。

フォトトランジスタ出力形の場合の設計では、暗電流・光電流の温度依存性に留意が必要です。また、透過率の高い物体や発光・受光する面の形状・寸法よりも小さい物体を検出する際には物体があるときとないときの光電流を測定し、それらの比を算出しなければなりません。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/24/20/index.html
https://www.omron.co.jp/ecb/sensor/pms-basics/basics?sectionId=basic#basics02
https://www.photosensor-blog.jp/blog/2018/11/21/firstphotosensor/2/
https://jp.sharp/products/device/about/electronics/photointr/index.html
https://omronfs.omron.com/ja_JP/ecb/products/pdf/ph_micro_gijyutu.pdf
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/photointerrupters/pi_what2

赤外線センサー

赤外線センサーとは

赤外線センサー

赤外線センサーとは、赤外領域の光線を検出するセンサーです。光は、波長によって色や特徴が異なります。可視光線の波長は400nm~800nm程度とされ、それ以外の光は目に映りません。人間の目には、400nm付近の光線は紫色に映り、800nm付近の光線は赤色に映ります。

目に見えない光線を呼称する際、400nm以下の波長をもつ光線を紫外線と呼び、800nm以上の波長をもつ光線を赤外線と呼びます。赤外線センサーは、上記の赤外線を感知するセンサーです。赤外線を検出するだけでなく、赤外線を発光して反射波を検出する方式もあります。

赤外線センサーの使用用途

赤外線センサーは民生品にも様々な方法で使用されています。代表的な使用用途はテレビリモコンです。リモコンの操作信号をテレビの赤外線センサーで受信します。赤外光が目に見えない特性を利用した使用方法と言えます。

体温計にも赤外線センサーが使用されます。物質が高温になるほど赤外線を発光する特性を利用して温度検出しています。非接触で素早く検温可能なため、感染症が流行した際には重宝されました。産業用としては、宇宙開発や軍事などにも利用されており、赤外線センサーの使用用途は幅広いです。

赤外線センサーの種類

赤外線センサーの研究は盛んであり、材質の種類も様々です。原理は主に熱型と量子型に分けられます。赤外線の波長は近赤外、中赤外、遠赤外に分類され、センサーによって得意な領域があります。

1. 熱型赤外線センサー

熱型赤外線センサーの代表例は焦電型です。焦電型赤外線センサは強誘電体の焦電セラミックスが材料で、焦電効果を利用しています。センサーが赤外線によって温められると、焦電効果でセラミックス上の電荷量が変化します。変化した電荷量によって流れる電流を検知します。

人体から発せられるわずかな赤外線も検出することができます。サーモパイルセンサーも熱型の一種です。サーモパイルは複数の熱電対で構成され、赤外線の熱エネルギーを起電力へ変換する熱起電力型センサーです。

2. 量子型赤外線センサー

量子型赤外線センサーはバンドギャップエネルギーを電流として検出するセンサーです。仕組みは太陽光パネルと同じで、赤外線で発電する素子を材料に作られます。熱型より検出感度が100~1,000倍高い反面、センサ自体の発熱も感知してしまうので、十分に冷却する必要があります。

赤外線センサーのその他情報

1. 赤外線センサーの欠点

赤外線センサーは誤不動作や誤動作する場合があります。誤不動作するケースとしては、ガラスアクリルなどの遠赤外線を透過しない物体がセンサーを遮った時や、検出対象がほとんど動かない時などです。

自動ドアを例に説明します。自動ドアは、赤外線反射量の変化率で物体を検知します。その原理上、絨毯と同色の服を着たり、ゆるやかに自動ドアに近づくと、誤不動作します。

人体以外の熱源で誤動作する場合もあります。例えば、太陽光や白熱灯に反応して誤動作することがあります。冷暖房機器などの周辺で、温度が急変した場合にも誤動作します。

2. 赤外線センサーと自動車

夜間運転は視界が悪く、事故の発生確率が高くなります。夜間運転の問題を解決して安全性を高める、赤外線イメージセンサーが「新しい目」として注目を浴びています。

ナイトビジョンシステム
歩行者などを赤外線センサーで映像化してディスプレイに表示します。パッシブ型センサーを用いれば、遠赤外線の放射を直接検出するのでライト照明は不要です。アクティブ型は近赤外線ライトで前方を照射して、その反射光を赤外線カメラで撮影します。GMやホンダが遠赤外線方式を採用しており、トヨタは近赤外線式で実用化しています。

車両周囲モニター
車両の四方に赤外線カメラが装備し、死角にいる歩行者を検知します。歩行者がいると発進時に警報を発報し、発進を抑止するシステムが開発されています。

エアコンシステム
乗員から放射される遠赤外線によって表面温度を計測し、吹出口を切り換える空調制御が開発されています。

参考文献
https://www.nicera.co.jp/products/infrared-sensor
http://sensait.jp/10910/
https://www.sensor-sk.com/ichi/ichi02_sekigaisen.html
https://clicccar.com/2020/04/01/964613/

メンブレンスイッチ

メンブレンスイッチとは

メンブレンスイッチ

メンブレンスイッチとは、PETフィルムなどのメンブレンが意味する「薄膜」のシートを回路上の接点に用いたスイッチのことです。

家電製品や検査装置など手動のスイッチの操作が必要な装置のボタンとして、メンブレンスイッチは幅広く利用されています。メンブレンスイッチは、薄膜のシート内部にスイッチ回路上の接点があります。手動で薄膜を押すことにより、スイッチが接続される仕組みです。

構造上スイッチ部が外気にさらされないため、防塵性や防水性に非常に優れたスイッチと言えるでしょう。なお、メンブレンスイッチには、スイッチを押す際のクリック感を持たせるために内部にディスクを使用している製品や、文字や数字などが表面のフィルムに印刷されている製品などがあります。細かな違いも含めると、非常に多種多様です。

メンブレンスイッチの使用用途

メンブレンスイッチの使用用途は、手動でボタンやスイッチを押す必要がある製品の回路的なスイッチ接続に幅広く利用されています。具体的には、家電製品や電子機器、検査装置、実験器具、自動車部品などです。他にも、メンブレンスイッチは私たちの身近な製品に幅広く利用されています。

  • 電卓の数値や符号の入力部分
  • 家庭用洗濯機のボタン
  • コピー機やPCキーボードなどのOA機器の操作ボタン
  • コインパーキングの風雨防水対応の操作パネル用ボタン

メンブレンスイッチを選定する際は、メンブレンスイッチの特徴でもある防塵性や防水性の他にも、耐熱性や耐久性、サイズなどのスイッチとして要求される諸々の仕様を考慮しなければなりません。

メンブレンスイッチの原理

メンブレンスイッチの原理は、PETフィルムなどの薄膜の表面シートを指で押すことにより内部の上接点シートがスペーサを介して積層されている下接点シートに接触し、接点同士が触れることで通電する薄膜の機構式スイッチの動作を活用したものです。

表面シートは、実際に使用者が手で触れる箇所で、数字や文字が印字されていて、防水処理が施されている製品もあります。上接点シートには導電性のボタンが付けられていて、下接点シート上にある部品は上接点シートに合わせたボタンと回路配線です。

スペーサは、上接点シートのボタンと下接点シートのボタンが通常時には接触しないようにするためのもので、ボタンに合わせて穴が開いています。ボタンを押すと、シート全体が押し込まれ、接点同士が接触し通電します。裏面シートは、メンブレンスイッチを使用する装置とメンブレンスイッチを接着するためのシートです。

このシート構成がメンブレンスイッチの基本ですが、表面シートが上接点シートを兼ねる場合や、クリック感を得るためにエンボスや金属ドームを併用する場合もあります。

メンブレンスイッチの種類

メンブレンスイッチの構造は、その汎用性の高い様々な用途に対応するために、非常に多くの種類があります。その中で基本となるのは次の3種類です。

1. フラットタイプ

表面がフラットで凹凸がないため、薄型化が容易です。また、最も簡単な構造で自由に配置できます。ただし、スイッチ部を押した際のクリック感はありません。

2. エンボスタイプ

表面シートに凹凸形状を持たせることで、スイッチ部押した際のクリック感やストロークがあります。

3. メタルドームタイプ

メタルドームと呼ばれる金属の板を表面シートの内側に組み込むことで、機械的なクリック感を出しているものです。

メンブレンスイッチのその他情報

1. LED内蔵メンブレンスイッチ

メンブレンスイッチは構造上多層に積層されているため、スイッチのON/OFFを視覚で認知しやすくする目的で、LEDを内部に実装することができます。LEDチップの高さ吸収のために、エンボスを表面シートに導入する他、スペーサの厚みで表面シートと接触しないように工夫がなされています。

メンブレンシートは透明なPETシートを用いている場合も多く、隣り合うLEDの発光色で複数の機能を表現したい時には、光の漏れを防ぐためにLEDの配置や内部の層構造に工夫を施す必要があります。

2. 車載向けメンブレンスイッチ

メンブレンスイッチは車載向けに使用されており、乗員を検知するセンサー用途に使われています。乗車時のシートベルト着用が義務化されたことで、自動車メーカーは乗員にシートベルト着用を促すシステムを構築しました。

座面にメンブレンスイッチを埋め込み、着座による座面の沈みによってメンブレンスイッチを動作させます。メンブレンスイッチの作動の有無によって人が座っているかを検出することが可能です。なお、手のひらサイズの大きなメンブレンスイッチが使用されている場合が多いのは、着座位置の偏りにより作動しないという誤作動を防ぐためです。

3. PCキーボード

メンブレンスイッチの現在の主な使用用途はPCのキーボードです。キーボード全体を覆う大きなシートに印刷工程で、複数のキーに対応した多様なスイッチの配線回路が形成されています。その後に複数の導電ボタンが付けられており、キーを押すことで通電しています。

対比される構造としては、機械式の構造を用いたキーボードがあげられます。機械式はキーが独立の構造となっているので、打鍵感 (タクタイル感) が特徴です。ただし、構造が複雑な分コストがかかるため、単純な構造で大量生産に向いているメンブレンスイッチを用いた方が比較的安価です。薄型化に対応しやすく、防塵性や防水性に優れていることから、現在は多くのPCキーボードにメンブレンスイッチは普及しています。

参考文献
https://n-membrane.com/switch/about/
https://www.nkkswitches.co.jp/support/klg/knowledge4.php
https://www.fujikura.co.jp/rd/gihou/backnumber/pages/__icsFiles/afieldfile/2009/03/17/R_7.pdf
https://n-membrane.com/switch/about/
https://i-da.co.jp/mem2/membrane.html