AEセンサー

AEセンサーとは

AEセンサーとは、振動センサーの1種であり、ある特定の振動 (AE波) を検出する装置です。

AEとは、アコースティックエミッション (Acoustic Emission) の略であり、物体の一部が変形・破損した際、もしくは衝撃が加わった際に生じる音響が弾性波として放出される現象を指します。

この現象を検知するために用いられるのが、AEセンサーです。AE波は物体が完全に破損するより、ずいぶん前に起こる微小な劣化により発生します。

振動センサーが物体が破損したことを検知するのに対し、AEセンサーは物体の劣化の初期段階を検知すること可能です。AEセンサーはこの特徴を生かすことで工業設備の予知保全、製品の品質管理などに利用されています。

AEセンサーの使用用途

AEセンサーは、製品の品質管理や安全性管理などさまざま用途に使用されています。また、特定の狭い周波数帯域にて強く反応する狭帯域型と、広い周波数帯域にて反応する広帯域型があり、用途によって使い分けられます。

1. 狭帯域型AEセンサー

狭帯域型AEセンサーの使用用途は、モーターの劣化予知保全、パイプなどの金属溶接の不良検出などです。狭帯域型AEセンサーを用いることで、正常に動作するモーターの振動や溶接による振動には反応せず、異常が起こった時にのみ発生するAE波を検知することができます。

2. 広帯域型AEセンサー

広帯域型AEセンサーの使用用途は、製品内部の異物検知や地盤の地滑りの前兆を検知することです。広帯域型AEセンサーを用いることで製品内部のユニット基板からはんだの微小な破片が落ちた際や、地盤の地滑りの前兆となる微小な振動を検知することができます。

AEセンサーの原理

AEセンサーは、特殊な圧電素子を用いることでAE波を検知します。圧電素子として用いられる材料は一般的にニオブ酸リチウム、ニオブ酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT) です。これらの素子は、圧力が加わると電荷が生じるという特徴を持っています。そのため、振動する物体にこの圧電素子を接触させることで、圧電素子から電圧を受け取りセンサーとして機能させることができます。

また、これらの圧電素子はAE波のように超高音域 (10kHz~数MHz) の振動による圧力を受けた時に強く電圧を出力するので、特定の周波数帯域の振動のみ検知することが可能です。

AEセンサーのその他情報

1. AEセンサーと振動センサーの違い

どちらも圧電素子を利用して、機械振動を電気に変換する点は共通しています。しかし、適している周波数領域が異なります。振動加速度センサーは、5~20kHzといった比較的低周波数領域の検出に適しています。

一方でAEセンサーは、振動センサーよりも高い周波数の振動を検知します。AEセンサーが測定する周波数は、数10kHz〜数MHzです。高い周波数を検出することにより、初期に起こる不良を早期に発見できます。

また、振動センサーでは診断が難しい、低速回転軸受に適用した事例もあります。これはAEセンサーでは、ミクロレベルの破壊に伴い発生するエネルギー波であるアコースティックエミッションをとらえているからです。

アコースティックエミッションは、水面に広がる波紋のようなイメージのもので、金属同士の接触が起きると、アコースティックエミッションは設備表面の金属を介し伝播しAEセンサーに検出されます。アコースティックエミッションは、小さい傷や摩擦からでも発生しているため、早期にトラブルを発見することができます。

2. AEセンサーの設置

AEセンサーを設置する際には、取付け位置が重要です。検出したい対象に直接取り付けることができる場合は、検出感度もっとも優れており問題ありません。

一方で、検出対象に直接取り付けることができない場合は、検出対象に可能な限り近い位置に取り付けることが大切です。検出対象とAEセンサーは、音響的な経路が形成されていなければなりません。AEセンサーを設置する際は、検出対象の表面にシリコングリースなどを塗布して密着させ、発生したアコーステックエミッションを検出します。

アコースティックエミッションは周波数が高いので、空気中では伝搬がしづらい性質があります。そこでAEセンサーの取り付けでは、検出対象に密着させることが重要です。さらに、試作機を用いて十分検証を踏まえた上で、導入することも重要です。

参考文献
http://www.fujicera.co.jp/product/ae/
https://www.tetsugen.com/what-is-ae-151112/

ABS樹脂加工

ABS樹脂加工とは

ABS樹脂加工

ABS樹脂とは、耐熱性、耐衝撃性、表面処理性、金属めっき性などに優れ、高精度な寸法管理品を成形するためのバランスのとれた特性を持っている熱可塑性樹脂です。

ABSは、「Acrylonitrile-Butadiene-Styrene」 (アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン・共重合体) の略です。鉱酸や塩基、植物油、鉱物油、ほとんどの家庭用洗剤にも耐性があります。低価格で生産量、消費量が多く、ポリエチレンポリプロピレンポリスチレンポリ塩化ビニルと共に五大汎用樹脂とも呼ばれています。

ABS樹脂の構造

図1. ABS樹脂の構造

ABS樹脂加工の使用用途

ABS樹脂は家電製品や精密機器の外装、自動車部品、文房具、各種ケースなど、身近なプラスチック用品に幅広く使用されています。最近は、3Dプリンターの素材としても注目を集めています。

ABS樹脂は、射出成形と押出成形の両方のグレードがある汎用性が高い素材です。配合技術により、多種多様な着色剤をABSに配合することもできます。また、安定剤、難燃剤、補強フィラーなどの添加剤を添加することで、ABS製品の用途を拡大させることも可能です。

例えば、ABSは紫外線を受けるとブタジエン成分の二重結合部分が酸化して変色を起こすため耐候性が低いですが、紫外線吸収剤等を配合したり、外装を塗装したりすることで劣化を遅らせられます。

ABS樹脂加工の性質

ABS樹脂は、アクリロニトリルブタジエンスチレンの3つのモノマーを組み合わせて製造されます。アクリロニトリル成分は、強度、剛性、硬度、耐熱性、耐候性、耐油性に、ブタジエン成分は弾性、靭性、耐衝撃性、耐寒性に、スチレン成分は強度、剛性、硬度、加工性、寸法安定性、光沢性などに影響します。これら構成成分の組成によって、用途に適したバランスを調整することが可能です。

ABS樹脂加工のその他情報

1. ABS樹脂の高温加工

ABS樹脂は熱可塑性を備えるため、容易に異なる温度条件で処理することができます。一度加熱した後に冷却することで形状を形成し、再び加熱することで形状を変更することも可能であり、リサイクルにも応用が可能です。

ABS樹脂を高温で加工することで、製品の外観や仕上がりが良くなります。また、耐熱性や耐薬品性も向上します。ABS樹脂の耐熱温度は70~100℃です。参考として、プラスチックの中で耐熱温度が低いものはアセテート (40~60℃) 、高いものはフェノール樹脂 (150~180℃) などが挙げられます。

ABS樹脂を直火にあてることは厳禁です。火のそばでも柔らかくなって変形する場合があります。煮沸には耐えられないため、沸騰水などをかけることも厳禁です。

2. ABS樹脂の応用

ASA樹脂
ASA樹脂の構造

図2. ASA樹脂の構造

ASA樹脂は、ABS樹脂中の「ブタジエン」を「アクリルゴム」に変化させたものです。二重結合部分を有さないことで耐候性が向上する一方、薬品の抵抗力は低下します。屋外で使用する部品や建材などに用いられます。

AES樹脂
AES樹脂の構造

図3. AES樹脂の構造

AES樹脂は、ABS樹脂中の「ブタジエン」を「EPDM (エチレンプロピレンジエンゴム) 」に変化させたものです。耐候性、耐寒性、電気的性質、表面光沢が向上し、加工による着色もしやすくなります。

短所としては、成形時に事前の乾燥が必要であること、有機溶剤に溶けること、引火時匂いを出すことなどが挙げられます。農業器具や医療機器に用いられます。

ACS樹脂
ACS樹脂は、ABS樹脂中の「ブタジエン」を「塩素化ポリエチレン」に変化させたものです。「塩素化ポリエチレン」はポリエチレンを塩素ガスで処理したポリマーであり、塩素の含有量は合成条件によって異なります。耐候性や柔軟性、耐熱性、耐衝撃性が向上します。一方、引張り強さはABS樹脂に比べて低いです。家電製品の筐体や電気部品に用いられます。

参考文献
https://i-maker.jp/blog/abs-5282.html

5軸マシニングセンタ

5軸マシニングセンタとは

5軸マシニングセンタ

5軸マシニングセンタとは、3軸マシニングセンタに回転軸と傾斜軸の2軸を追加した機械のことです。

3軸マシニングセンタよりも、高度な立体加工が可能となりました。MCには、自動化された加工に向けて加工物を回転させたり、傾けたりする機能が付け加えられています。1回のセットアップで複数の面を加工可能で、加工時間の短縮につながります。

また、複雑な形状の加工にも対応しており、高精度な加工が可能です。MCは、航空宇宙や自動車産業、医療機器などの分野で広く使用されています。これらの分野では、高い精度や高い剛性が求められるためMCが欠かせません。

MCは、機械の高度化に貢献しており、今後もさらに高度な立体加工が可能になることが期待されています。

5軸マシニングセンタの使用用途

5軸マシニングセンタの使用用途は、高度な立体加工を必要とする産業分野など多種多様です。

  • 航空宇宙産業
    複雑な形状の部品製造
  • 自動車産業
    エンジン部品やサスペンション部品の製造
  • 医療業界
    医療機器の製造

5軸マシニングセンタは、高精度な加工が必要な部品を製造する際にも活用されており、使用用途が幅広い点が特徴です。また、大量生産に適しており、作業員の作業を最小限に抑えられるため、コスト削減につながります。

また、プログラム制御によって動作しているので、作業員の熟練度による品質差はありません。さらに、5軸マシニングセンタを使用することで、作業員が危険な工具を使用する機会が減り、事故防止につながります。

5軸マシニングセンタの原理

5軸マシニングセンタは、通常のマシニングセンタに回転軸と傾斜軸の2軸を加えることで、工作物を自動的に回転できるようにしています。複雑な形状を持つ部品や曲面加工など、従来の3軸マシニングセンタでは難しかった加工も可能です。

また、5軸マシニングセンタには、工具を水平方向に取りつけるか、垂直方向に取りつけるかで使用用途が変わってきます。横型マシニングセンタは高い加工精度を持ち、自動で部品を供給できるパレットチェンジャを装備できるため、精密な小型部品の大量生産に向いています。一方、立体マシニングセンタは機械自体の床面積が小さいため、コンパクトで導入しやすいことが特徴です。多種類の部品を少量生産するのに向いています。

5軸マシニングセンタのその他情報

1. 5軸マシニングセンタの加工例

基本的な3軸加工 (XYZ) に加え、テーブルを回転させたり、傾斜させる軸を同時に制御したりすることで、3軸加工では難しい立体的な加工が可能です。複雑な曲線を描いたり、多方面から加工したりできる特性から、主にジェット機のタービンやエアーコンディショナーの送風機に使われる羽根車 (インペラ) の製造、自動車ではエンジンの給排気ポートの加工、他にもさまざまな金型や治具、試作部品に半導体製造装置など、複雑な形状の製品を加工するために使われています。

また、3軸加工で多方面を加工しなければならない場合や、マシニング作業のあとに旋盤等で旋削加工する必要がある場合、加工が終了するたびに段取り替えを行う必要があります。段取り時間 (加工しない時間) が増えてしまい、効率が悪くなってしまいますが、5軸制御にて多方面から同時に加工できるため、段取り時間の短縮が可能です。短期で納品しなければならない部品に対しても効果的です。

さらに、機種によっては、テーブルを高速回転させて旋削できる機能を備えた複合5軸マシニングセンタもあるため、旋盤にて別途旋削加工を施す製品も段取り替えなしで加工することが可能となっています。

2. 5軸加工機のプログラム

マシニングセンタのNCプログラムで基本的なXYZのみならず、回転軸と傾斜軸の角度指令 (B軸やC軸) を入力しなければならない上、角度が変わってしまえば加工原点も変わってしまうため、5軸制御のプログラミングは極めて複雑なプログラムとなってしまいます。

そのため、5軸制御プログラムは主に図面作成 (CADソフト) したものを機械に読み込ませる (CAMソフト) 方式によってプログラムされ、図面通りに加工していきます。メーカーによっては加工する形状や材質、加工条件を順番に入力し、直感的にプログラミングすることができる「対話式プログラム」を導入しており、CADやCAMを導入しなくても簡単に複雑なプログラムを作ることが可能です。

参考文献
https://www.robot-befriend.com/blog/machining-center/
https://www.agency-assist.co.jp/column/698/
https://www.dmgmori.co.jp/sp/5axis/merit/

3Dモデリング

3Dモデリングとは

3Dモデリング

3Dモデリングは、任意のオブジェクトや表面のついて3Dで表現を作成するコンピュータグラフィックス(CG)の技術です。

作成者(モデラー)は、メッシュを形成するために仮想空間内の(頂点と呼ばれる)ポイントを操作するために特別なソフトウェアを使用します。複数の頂点によってオブジェクトは形成されます。

これらの3Dオブジェクトは、メッシュを変形させたり、その他の方法で頂点を操作することで、自動的に生成されたり、手動で作成することができます。

また、医療用CTの画像(DICOM規格)のデータを元に3次元再構成を行い、見たい断面でカットしてみたり、臓器を色分けしたり、そして模型作成のためのデータ出力を行うこともあります。

3Dモデリングの使用用途

3Dモデルは、ビデオゲーム、映画、建築、イラストレーション、エンジニアリング、商業広告など、さまざまな媒体で使用されています。

モデラーは、円柱、立方体、球体などの幾何学的な形状を使用して3Dモデリングプロセスを開始します。

この基本的な形状を使用して、オブジェクトの複雑で正確な3Dデジタル表現ができるまで作業を進めていきます。

3Dモデリングは、アニメーションで使用できるデジタルなオブジェクトを生成するため、キャラクターアニメーションや特殊効果には欠かせないプロセスとなっています。

3Dモデリングの原理

3Dモデリングには、さまざまなテクニックが採用されています。代表的な例としては、ポリゴンモデリング、3Dスカルプティング、3Dスキャニングなどがあります。

モデリングを一言で表すと、点をつなげ面をつくり、面をつなげて体積のあるデジタルオブジェクトを作成することです。

モデルの中核となるのはメッシュで、空間内の点の集合体として表現されます。

頂点は3Dグリッド上に配置され、多角形の形状(通常は三角形や四角形)として結合されます。

各点または頂点はグリッド上で独自の位置を持ち、これらの点を図形に結合することで、オブジェクトの表面が生成されます。

モデルは、ゲームや映画で使用するために他のソフトウェアに出力されることがあります。しかし、一部の3Dモデリングプログラムでは、3Dレンダリングと呼ばれるプロセスを使用して2Dイメージを作成することができます。

レンダリング技術は、特殊なアルゴリズムを使用して、リアルなシーンを作成するのに最適です。

3Dモデリングに必要な機材

3Dモデリングに必要なものは、大きくPCとCGソフトの2つです。

3DモデリングはPCに高い負荷をかけますので、PCはハイスペックなものを用意する必要があります。具体的には、CPU・GPU・メモリが強化されたPCが必須です。

CPUは、3Dモデリングの作業速度や動画のエンコード速度を上げるために必須となります。最低でも4コア8スレッドなど、ハイクラスのCPUを用意しないと、快適に作業ができません。また、GPUはモデルの陰影の調整や色処理、エフェクト処理において計算を担う重要なパーツですので、各メーカーの製品のうちハイエンドレベルのものを用意すべきです。メモリについては、3Dモデリングを実施する際には多くのメモリ容量を消費しますので、最低でも8GB、できれば16GB以上を用意しましょう。

CGソフトについては、用途に合わせて自分にあった製品を選ぶとよいでしょう。モデリングからはじめる方は、モデリングに特化した特化型ソフトがおすすめできます。3Dモデリングからアニメーションまで実施したい方は、すべての機能が備わった統合型の製品を選ぶとよいでしょう。

3Dモデリングのボーン

3DCGをアニメーションさせるうえで重要な要素がボーンです。ボーンとは、その名の通り骨のことで、3Dモデリングの可動点として設定されるものです。

3Dモデリング2

3Dモデリングを行ったモデルを動かす際には、ボーンを操作して表現したい動作を実現します。ボーンは相互に連結していて、一つのボーンを動かすと連結したボーンも自然な動作になるように自動で動いてくれます。これによって、アニメーションの際にすべての可動点を操作しなくても自然な動作が表現できるようになり、アニメーション作成が容易になります。

ボーンは、3Dモデルが自然に動作するように3Dモデルの中心部に設定します。一般的には、人の関節のようにその位置で動きが切り替わるように設定すると、自然な表現ができるようになります。

3Dスキャナ

3Dスキャナとは

3Dスキャナ

3Dスキャナとは、3Dスキャンを行う際に用いる装置です。

3Dスキャンは、実世界の物体や環境から、形状に関するデータを収集し、デジタル3Dモデルを構築する技術を指します。類似した用語に3Dプリンタがあり、互いに逆向きの変換を行うものです。3Dスキャナはモノをデジタルデータに変換する装置ですが、3Dプリンタはデジタルデータからモノへと変換するための装置です。

3Dスキャナの使用用途

3Dスキャナは、製造業で多く使用されています。まず品質検査のツールとして有用です。工業製品の検査では、さまざまな測定器具による寸法測定が必要ですが、複数の測定器具を用いるにはそれぞれの器具を扱うためのスキルや、測定作業に多くの時間がかかります。

3Dスキャナで検査対象物を3Dデータ化すれば、複雑な部位でもデジタルデータ上で寸法計測が可能です。また、設計した3Dモデルとの比較もできます。品質検査以外では、リバースエンジニアリングで3Dスキャナが用いられています。

リバースエンジニアリングは実際の製品から3Dデータが得られるので、さまざまな解析に用いられます。設計データが入手できない競合他社製品も3Dデータ化することによって、構造解析などを行い、自社製品との比較も可能です。

製造業以外では、歴史的な遺産や文化財のデジタルアーカイブに用いられます。貴重な石碑なども3Dデータ化として保存しておくことができます。さらに、アニメーション、映画、ビデオゲームの制作などのエンターテイメント用途も、3Dスキャナが活躍している業界です。

3Dスキャナの原理

3Dスキャナにはまず接触式と非接触式があり、非接触式には複数の方式があります。ここでは代表的な3つの方式の原理を説明します。

1. 接触式3Dスキャナ

接触式3Dスキャナは、プローブと呼ばれる探針を対象物に接触させることによって、形状を座標データに変換します。対象物に直接接触するので測定精度は高いものの、比較的長い測定時間が必要です。さらに、プローブが入り込めない形状があることもデメリットですが、非接触では測れない対象物には、接触式3Dスキャナが使われています。

2. レーザー光線方式

レーザー光線方式は非接触式3Dスキャナであり、レーザー光を対象物に照射して計測します。レーザー光線式には大きく「三角法方式」「タイムオブフライト (TOF) 方式」「位相差方式」の3つの方式があります。

三角法方式は高精度で、狭い範囲の計測に向いており、タイムオブフライト方式は逆に広範囲の測定に適した方式です。位相差方式はフェイズシフト方式とも呼ばれ、比較的短時間に多くの点群データが得られますが、ノイズとして乱反射したレーザーによるデータが多くなる傾向があります。

3. パターン光投影方式

パターン光投影方式も非接触3Dスキャナに用いられる原理です。スキャナから縞模様のパターン光を対象物に投影し、形状によって変化する反射光から3Dデータを得る方式です。光源がレーザー光ではなくLEDのため人体にも使え、色情報も得られるため、比較的多く使われています。

3Dスキャナのその他情報

3Dスキャナの精度

3Dスキャナは対象の3Dスキャンデータを作成しますが、必ずしも完全に対象を再現できるわけではありません。3Dスキャナで誤差が発生する箇所として、対象の点群の位置、点群同士の距離があげられます。

製品には精度表示がされているため、許容できる誤差範囲によって製品を選ぶことが大切です。当然、高精度の製品は価格も高くなりますが製品によっては、複数回測定を行って誤差の補正ができるものもあります。

また、3Dスキャナで作成したポリゴンデータを手動で結合し、精度を上げることもできます。ポリゴンデータとは、面の要素で作られたデータのことです。この作業には、物体に合わせて最適な精度向上方法を知っている必要があり、経験が重要になります。 

参考文献
https://www.cadjapan.com/topics/feature/column_engineer/2011/0519.html
https://www.cadjapan.com/topics/feature/reverse_engineering/2015/151007_3dscanner.html

3Dカメラ

3Dカメラとは

3Dカメラ

3Dカメラ (英: 3D camera) とは、立体的に3次元画像の撮影が可能なカメラのことです。

平面の情報だけでなく、奥行き方向の情報も得ることができます。3Dカメラは、自動運転車や自律走行するロボットなどの先端技術を支える目に使用されています。

3Dカメラの使用用途

3Dカメラは、3次元の物体認識が必要なさまざまな所で活用されています。

1. 自動運転車

自動運転車には安全走行のために、3Dカメラをはじめ多くのセンサが搭載されています。種類の異なる複数の3Dカメラを組み合わせて使用して、色々な状況に対応します。

2. ロボットの制御

自律走行するAGV (無人搬送車) や各種ロボットには、3Dカメラが搭載されています。

3. ロジスティクス

物流の現場では、3Dカメラを数多く設置し、荷物の寸法測定やピッキング、仕分け、検数などに活用しています。

4. 民生機器

スマートフォンにも3Dカメラが搭載され、立体的な映像を容易に撮影できます。また、見守りや防犯用に3Dカメラを活用した画像分析システムがあり、今後普及していくと考えられます。

3Dカメラの原理

3Dカメラは多くの撮影方式があり。それぞれ原理は異なります。

1. ステレオタイプ

ステレオタイプは、人間の目で見る原理と同じ方法を取っています。対象物を複数のカメラで撮影して、3角測量の方式で、奥行情報を取得します。即ち、2つのカメラの距離・レンズの焦点距離及び視差の3つから、対象物と焦点との距離を算出します。

ステレオタイプのメリットは、安定性です。人間の認識に近い空間把握能力があり、リアルタイムで距離測定を安定的に行うことができます。一方、ステレオカメラは、撮影前に校正が必要というデメリットがあります。校正は、カメラ位置を変えて既知のパターンを撮影することで行います。

また、歪み補正・平行化処理・画像の正規化などの処理を行う必要があり、PCの負担が大きい点もデメリットの一つです。ステレオタイプは、屋外での撮影も可能なため、自動運転用の車載カメラに使われます。

2. ToFタイプ

ToFタイプは、「Time of Flight」の略称で、飛行時間を意味します。照射した光が対象物で反射して、カメラに戻るまでの時間から奥行きを計算します。カメラと一体になった光源を使います。

ToFタイプに使用される光源は、パルス光又は連続光です。パルス光の場合は反射光が戻るまでの時間から距離を算出し、連続光では光源と反射光との位相差から距離を求めます。

ToFタイプの長所は、撮影距離の広さです。また、フレームレートが高く、暗所での撮影が可能なことや、低コストであることも長所です。この方式は、カメラのセンサーが太陽光にも反応するため、屋外での撮影が困難な短所があります。屋内でピッキングロボット用として、箱詰め作業や体積の測定などに使用されます。

3. 構造化照明タイプ

構造化照明タイプは、光源とカメラが別になっており、対象物で反射した光の歪みを3Dカメラが撮影することで、奥行方向の寸法を算出します。光源は、ライン状・格子状・ドット状などのパターンを持った照明であり、物体に当たると凹凸に沿ってパターン光が歪みます。

光源にレーザーを使用する方式があります。レーザードット方式と呼ばれ、レーザー光をドットのように対象物に照射し、各ドットをカメラで測定するものです。構造化照明タイプのメリットは、ステレオタイプやToFタイプに比べて、撮影が高精度であることであり、微細な工業部品などの精度が要求される撮影に採用されます。

一方で、デメリットはカメラの他に別途光源のプロジェクターが要ること、コンパクト性に欠けること、及び屋外使用に不適であることなどです。

3Dカメラのその他情報

1. 3Dカメラでの計測

3Dカメラを使用した計測は、今まで縁のなかった分野においても、様々な活用法が広がっています。この計測は、現場で測らない、撮影するだけ、画像解析で測りたいところを測る、メジャーの届かないところ・危険なところも簡単に計測、などの特徴があり、作業性と安全性が向上します。

現地で収集したデータを解析して、計測ソフトウェア上で2点間の距離、1点と直線の最短距離、1点と面の最短距離、面積計測、角度計測などができます。現場作業の時間短縮と計測忘れなどを防ぐことも可能です。文化財調査では、触れることなく詳細なデータを得ることができるため、貴重な文化財のデジタルアーカイブに用いられます。

2. 3DVRカメラ

3DVRカメラは撮影者の前方だけではなく、後方を含む360度の範囲を撮影できる全方位型のカメラです。全天球カメラと半球カメラがあります。

全天球カメラは、2つの超広角の魚眼レンズを使用したカメラで、2つの映像を撮影し、その映像を自動で縫い合わせる処理を行います。この技術により上下左右360度の撮影が可能になります。

半球カメラは、1つの超広角の魚眼レンズを使用して半球を撮影します。2つの半球カメラを組み合わせ使用することによって、撮影後に編集して上下左右360度の映像を作り出します。

参考文献
https://www.klv.co.jp/technology/what-is-3D-camera.html
https://www.creativevillage.ne.jp/54344

2次元CAD

2次元CADとは

2次元CAD

2次元CADとは、手書きの製図の代わりにパソコン上で図面を作図・修正・管理ができるソフトです。

CADは「Computer Aided Design」の頭文字であり、コンピュータ支援設計と訳します。2次元CADの登場により、過去に使用されていた手書きの製図と比べると図面を容易に作図・修正・受け渡し・管理することが可能になりました。

昨今では、パソコンの処理能力の向上に加えプリンターの低価格化により、物づくりに携わる業界では多くの会社が2次元CADを導入しています。そのため、2次元CADも機械用、建築用、土木用、電気配線用など様々な業界向けのソフトが開発され、業界向けの特殊な機能が付加されている2次元CADも多いです。

2次元CADの使用用途

2次元CADはかつて、手書きで作られていた図面をコンピュータで製図するためのツールとして使用されていました。手書きの図面は主に、投影法という製図のルールによって描かれています。第一角法や第三角法などと呼ばれる、製品を3方向からみた形状が並んだ図面です。

しかし、2000年代に入ると、3Dモデルを使って設計と製造業務の効率化が図られるようになりました。現在は3D図面という、3Dモデルと2D図面を合わせて全ての情報を網羅する取り組みが行われています。

ただし、自動車業界、建築業界、土木業界など各業界で3DAの取り組みが行われておりますが、普及には課題もあり、2D図面も多く使われているのが現状です。

2次元CADの原理

2次元CADは、パソコンの一般的なソフトと同様にキーボードとマウスで操作します。製図にはマウスでの指定以外に、x-y座標の数字を指定することも可能です。

直線だけでなく、指定した大きさの直径を持つ曲線なども簡単に作図できます。さらに、同じような形状の連続や寸法表示、部品表の作成、バルーン等、特殊な作業も2次元CADを使用すれば非常に効率的です。

現在では、各社多くの2次元CADソフトが開発されています。その中でも、知名度とシェアが大きいのがAutodesk社のAutoCADです。そのため、多くの2次元CADがAutoCADと互換性を保つ様にソフトが作成されています。

特に、ファイル形式は「dxf」という拡張子を使用することで、2次元CAD同士のデータのやり取りに互換性を持たせ、設計者間でのデータのやり取りを簡単に行える様にしています。

2次元CADのその他情報

1. 2次元CADと3次元CADの違い

2次元CADが登場したことによって、工業そして建築といった産業は急速に発展を遂げましたが、その後3次元CADが登場し、最近では多くの企業が3次元CADを導入しています。

両者の大きな違いは「視点」です。2次元CADは、平面図や正面図、側面図といった「三角法」と呼ばれる図法で描かれる場合がほとんどです。一方で、3次元CADの場合は、パソコンの画面上で3次元のビューポートから物を立体的に表現することが可能で、視点は画面上で自由に切り替えられます。

また、2次元CADと3次元CADでは作図の方法も異なります。3次元CADでは、2次元CADで描き起こしたものを押し出したり、そぎ落としたりしながら3Dのモデルを作成していく流れです。2次元CADの時は考え方を転換する必要があるので、最初は慣れるまでに時間がかかる場合もあります。

2. 2次元CADが無くならない理由

3次元CADを導入する企業が増加する一方で、今でも2次元CADを使用しているメーカーや加工業者は数多くあります。その理由はいくつかありますが、まず一つ挙げられるのは、「3次元CADの不完全性」です。

はめあい公差や幾何公差などの加工指示、材質、熱処理、塗装指示など、図面には非常に多くの情報が網羅されています。2次元CADではそれを図面に書き加えるだけで指示できますが、3次元CADですべての情報を盛り込むのは難しいのが現状です。冒頭にご紹介した3DAの取り組みも行われていますが、まだ途上段階と言えます。

また、そもそも3次元CADに対応できる設備が無いというケースも多くあります。導入にはパソコンや工作機械など高価な機器が必要です。また、ねじなどの比較的単純な形状の製品を製造するだけであれば3D図面のメリットが少ないという理由で、2D図面だけ受注している企業も多くあります。

参考文献
https://www.ijcad.jp/
https://www.cad100.jp/2dcad/
https://www.autodesk.co.jp/products/autocad-lt/overview?plc=ACDLT&term=1-YEAR&support=ADVANCED&quantity=1
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1609/28/news028.html
https://www.cadjapan.com/special/autodesk-concierge/useful/article/190417-01/

スイッチング電源

スイッチング電源とは

スイッチング電源

スイッチング電源 (英: switched-mode power supply :SMPS) とは、スイッチングレギュレータと呼ばれる高効率な電力変換回路を組み込んだ電源のことです。

ICやマイコン搭載の電子機器には、電圧変動の少ない安定した直流が必要です。安定化電源にはリニア電源とスイッチング電源がありますが、従来はリニア電源が主流でした。

リニア電源の場合、回路が単純で、100Vの交流電圧を交流の定電圧に変換し、順方向の電流は流して逆方向の電流は流さないというダイオードの性質を利用して交流を整流します。さらにコンデンサを使ってなだらかにするのです。しかし、電源の小型化や効率化が進まないというデメリットがありました。

この問題を解決したのがスイッチング電源です。リニア電源では商用交流を電圧変換してから整流するのに対し、スイッチング電源では商用交流をまず直流に整流して電圧変換するという、全く逆の方法をとります。

そしてスイッチのオン・オフによってパルス波の交流に変換し、高周波トランスに送り込むというのがスイッチング電源の仕組みです。小型化・軽量化が可能な代わりに回路が複雑になるのが特徴だと言えます。

スイッチング電源の使用用途

スイッチング電源は従来型のリニア電源に比べ、回路は格段に複雑になりますが、安定化回路のIC化にともない、非常にコンパクトになっているというメリットがあります。簡易型電源のように大きくて重い電源トランス (電磁誘導で交流電力の電圧の高さを変換する機器) が搭載されていないので、小型化・軽量化が実現したのです。

このような小型化・軽量化が可能なため、スイッチング電源の使用用途としては携帯電話のACアダプタが挙げられます。また、パソコンやタブレットといった持ち運びすることが多い小型の電子機器に非常に親和性が高いと言えるでしょう。

昨今はこの小型化をさらに推進するべく、高出力・高効率なGaNデバイスをACアダプタのスイッチング電源に取り入れ、従来のSiデバイスに比較してさらに小型のACアダプタを実現しています。

スイッチング電源の原理

スイッチング電源の原理は、従来のリニア電源と対極にあります。リニア電源はトランスで商用電流を電圧変換してから整流するのに対して、スイッチング電源の場合は商用交流をまず直流に整流してから電圧変換します。ただし、整流されてしまうとトランスを使って電圧変換ができません。

そこで、スイッチング電源では、整流された電流をトランジスタやMOS FETなどの半導体素子の高速スイッチングによってパルス派の交流に変換し、高周波トランスに送り込みます。そのため必要な部品や回路が増え、複雑化してしまいますが、この複雑さこそがスイッチング電源のカギとなるポイントです。

スイッチング電源の制御方法にはいくつか種類がありますが、代表的なものにPWM (パルス幅変調) 方式があります。スイッチングのオン・オフサイクルのオンの時間、つまりパルス波の幅を調整し、それぞれのパルスの面積を同じにすることで電圧の安定化を図るのです。スイッチング電源ではスイッチングのオン・オフで出力の調整ができるので効率が上がるのも特徴だと言えます。

また、スイッチング電源のパルスの周波数は数十kHz~数百kHzの高周波なので、トランスも小型・軽量なもので済みます。ただし、高周波だと鉄芯の損失が大きくなるため、フェライトコアを使います。電源効率が上がり、省エネが実現できます。

フェライトコアはフェライトという素材の芯棒がケーブルを包むように取り付けられているため、ケーブルに流れる高周波のノイズ電流で発生する磁場を吸収させ、熱に変えることでノイズを軽減します。

スイッチング電源の弱点は高速スイッチングによるノイズの発生ですが、フェライト技術によって軽減が期待されています。

スイッチング電源のその他情報

1. スイッチング電源の周波数

スイッチング電源は、半導体素子によるスイッチング動作でON/OFFする時間を調整することで、出力電圧を仕様の電圧値に変換しています。このON/OFFの切替を制御する信号の周波数を「スイッチング周波数」と呼びます。

2. 電圧24Vが多い理由

スイッチング電源を使用する電気製品において、電源に要求される出力電圧は、直流24Vであることが多いです。その理由は諸説ありますが、制御回路がその電圧を必要とするためです。

かつて直流は電池を電源とすることが多かったため、乾電池のセル1.5Vの整数倍で決められたという説があります。小型の機器においては、同様に6V、9V、12V、なども使われますが、これらも1.5倍の整数倍です。

ファクトリーオートメーションで使われる制御回路がPLC (プログラマブルコントローラ) に置き換わる前の時代には、回路が電磁リレーで構成されており、リレーをONする電圧として使われていました。その名残で現在でも24Vが使われることが多いようです。また、DC24Vはノイズ環境に強いなどの理由もあります。

3. スイッチング電源のノイズ

スイッチング電源は、スイッチング素子により電流を高速でON/OFFを行っているため、高周波なノイズを発生することが不可避となっています。スイッチング電源の開発の歴史は、効率を上げることと同時に、ノイズ対策が必須事項でした。現代のスイッチング電源にはいろいろなノイズ対策が施されています。

スイッチング電源はそれ自身がノイズ発生源となります。ノイズは出力される電源ライン上に付加されるだけでは無く、電磁波となり、電子機器に影響を及ぼします。

ノイズ対策には、下記のような手法があります。

  • 反射
    インダクタやコンデンサをフィルタにしてノイズの成分が伝わるのを防ぐ
  • 吸収
    フェライトコアなどでノイズを吸収して熱などのエネルギーに変換する
  • バイパス
    コンデンサなどでノイズをグランドに落とす
  • シールド
    放射するノイズ成分を金属ケースでグランドに落としたり、フェライト材等の電波吸収材で吸収する

4. スイッチング電源のノイズ対策の詳細事例

もっともよく扱われるノイズの一つにコモンモードノイズとディファレンシャルノイズがあります。

コモンモードノイズ
スイッチング電源回路基板と装置の筐体間に生成する寄生容量などを介してリークする電流ノイズが、ループの経路としてGND(グランド)を介して電源側へ戻ってくるノイズです。電源の正極と負極での各々ノイズ電流の向きは同じであるため、こう呼ばれます。

ディファレンシャルノイズ
この場合は、スイッチング電源回路に直列に入るノイズ源からの電流ノイズが、電源ラインを介して電源側へ戻ってくるノイズです。その名の通り、電源の正極と負極での各々ノイズ電流の向きは反対であり、ノーマルモードノイズともいわれます。

一般には2つのノイズでコモンモードノイズの方が放射量は大きくなりますが、許容ノイズ量を超える場合にはどちらとも対策が必須です。その手法としてまずとられるのが経路のケーブル長さを短くしたり、より線にしたりします。

また本格的な対策にはノイズフィルタを追加しなければなりません。コモンモードノイズには、チョークコイルが効果的です。またパスコンといわれる対グランドへのバイパスコンデンサも用いられます。ディファレンシャルノイズ対策としては、反対向きに流れる電源ライン間に容量を接続し、ノイズ抑制を行います。

参考文献
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/power/002
https://www.jp.tdk.com/

エアーマイクロメーター

エアーマイクロメーターとは

エアーマイクロメーターとは、空気の圧力差を利用して物体を測定する比較計測器です。

主に穴の内径や丸棒の外径寸法に用いられ、非接触で1μm単位の高精度に測定できるのが特徴です。非接触測定は接触式のように接触圧がかからないため、高精度が求められる測定に向いています。さらに、対象物を傷つけません。

穴の内径測定にはシリンダゲージ、3点マイクロメータなどがありますが、エアーマイクロメータは比較的短時間で測定可能で、また測定者による誤差がないのも特徴の1つです。

エアーマイクロメーターの使用用途

エアーマイクロメーターは、主に高い寸法精度が要求される穴の内径や軸の外径測定に使われます。使用例としては、自動車用エンジンのシリンダブロック、シリンダーヘッド、コンロッド、他にも油圧回路などのバルブ部品の穴内径の測定などです。

軸の外径測定ではカムシャフト、クランクシャフトがあります。また、測定部位にあわせたヘッド部品を用意することで、内外径以外の測定にも用いることができます。

1. 厚みの測定

対象物を挟み込むように設置することで、物体の厚みを測定することが可能です。板状の製品や薄膜などの製造過程で使用されます。

2. 細線の測定

金属線や生糸、化学繊維なども測定可能です。太さを測定する場合は、ノズル上のものの測定対象を通すことで断面性の変化を計測します。

3. 穴内径に関する幾何公差測定

専用の測定ヘッドを用意することによって、穴の内径に関する幾何公差を測定することが可能です。軸方向に長い穴であれば、異なる穴深さにノズルを設けることによって、穴の真直度が測定できます。同じように異なる2断面にノズルを設置することによって、テーパ測定や直角度を測定します。

4. 穴の心間距離 (ピッチ) 測定 

複数の穴に対して複数のテーパ管を用意し、同じテーパ管から吹き出す空気のノズルを組み合わせることによって、穴のピッチを測定することもできます。      

エアーマイクロメーターの原理

エアーマイクロメーターは、空気を利用して物体の形状や変位などを計測する装置です。空気の使い方によって、流量式や背圧式といった測定方法があります。ここでは、様々な場面でよく使われている流量式エアーマイクロメーターで、穴の内径を測定する原理について説明します。

まずエアーマイクロメータには、測定する穴の内径よりもわずかに小さく寸法が明らかになってる測定ヘッドが必要です。用意した測定ヘッドは測定対象の穴の内側にセットします。測定ヘッドが測定部位にセットされたら、測定ヘッドに、コンプレッサー、レギュレータ、フィルタを用いて綺麗な一定圧力の空気を送り込みます。

また、空気経路の途中にあるのが、目盛りが記されたテーパ管とフロートです。空気は測定ヘッドにあけられたノズルから吹き出しますが、測定対象物との隙間によって噴出量が変わり、噴出量が変わるとテーパ管内のフロートの位置が変わります。フロートの高さはあらかじめマスター部品で把握し、比較することによって、測定対象物の穴内径を知ることができます。

エアーマイクロメータの特徴

エアーマイクロメーターのメリットは、まず空気の噴出を利用しているため、油や粉塵などの影響が少ないことです。そして、非接触測定のため、接触式測定の欠点となる測定圧による誤差がなく、測定部位を傷つずに済みます。

さらに、精密な測定ですが、測定値として表示させることができるので、限界ゲージのように通・止の合格、不合格判断ではなく数値として記録することが可能です。ノズルの位置を複数配置することによって、穴内径の真直度、テーパ測定、直角度測定、ピッチ間距離測定なども行えます。

一方で、デメリットは測定する部位に応じた専用測定具であり、汎用性は高くないことです。測定ヘッドと測定対象部位との隙間の範囲も限られるので、測定可能な公差範囲も比較的狭いです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsms1952/4/27/4_27_562/_pdf

セーフティリミットスイッチ

セーフティリミットスイッチとは

セーフティリミットスイッチ

セーフティリミットスイッチとは、リミットスイッチのうち直接開路動作機構を有するものであり、機械の安全確保において信頼性が要求される場合に用いられるリミットスイッチです。

主に、生産設備のインターロック装置のセンサとして使用されています。通常のリミットスイッチとは異なり、スイッチ内の接点がショートや高電圧の印加により溶着した場合でもリミットスイッチとしての機能を失いません。

そのため、より安全なインターロック装置を実現することが可能となります。

セーフティリミットスイッチの使用用途

セーフティリミットスイッチは、主に高い信頼性が要求される機械のインターロック装置に使用されます。使用されるインターロック装置の代表例は、開閉可能な安全ガードや扉です。機構が閉じている場合には、スイッチが押下されることによって接点が開いた状態になり、これを制御システムで確認して動作部に運転許可命令を出します。

点検中など機構が開いている場合には、スイッチは押下されず接点は閉じた状態になるため、誤って運転操作を行っても動作部は運転を開始しないように設計されます。

セーフティリミットスイッチの原理

1. 直接回路動作機構

通常のリミットスイッチは物理的なスイッチの押下により、接点を閉じ接点を開く動作にはバネを用いているため、何らかの要因で接点が溶着した際にはスイッチが戻らず、危険状態をシステムに伝達することができなくなります。

これに対して、セーフティリミットスイッチはスイッチを押下することで接点を開く直接開路動作機構を採用しています。これにより、接点が溶着した場合でもスイッチを押下する力で溶着を解除することが可能です。

2. フェイルセーフ設計

万が一、溶着が強固で解除できない場合でも、インターロック装置が精度良く設計されていれば安全ガード・扉を完全に閉めることはできません。装置は危険状態と認識し、運転を開始しないようなフェイルセーフ設計とすることが可能です。

このような扉開閉やカムの回転といった外部操作体により、直接接点を開く動作はポジティブ動作と呼ばれています。スイッチ単独でインターロック装置として使用する場合には、この動作を採用したものを使用することが推奨されています。

セーフティリミットスイッチのその他情報

1. 接点溶着を防ぐ機構

直接回路動作機構とは、セーフティスイッチのNC (ノーマル・クローズ) 接点の溶着時にアクチュエータに働く力を利用して接点を引きはがすスイッチの機構のことです。直接回路動作機構では、NC接点しか利用できません。

接点にはNO (ノーマル・オープン) 接点と呼ばれるものもありますが、直接回路動作機構ではスイッチの接点近傍に矢印マークを使って表現されます。これに対し、セーフティリレーでは強制ガイド機構と呼ばれる手法を取っています。

これは、セーフティリレーの接点溶着時にNO接点とNC接点が同時にONとならないようにするリレーの機構です。一方の接点を監視することで、他方の接点が正常であるかどうかを診断できるのがメリットです。ただし、直接回路動作機構のように接点を引きはがすことはできません。

2. インターロック装置

インターロックとは、作業者・利用者の安全を守るための安全装置や安全機構の考え方です。ある一定の条件が整わないと、他の動作ができなくなる機構を指します。ロボットや設備、様々な機械が稼働している工場などで、作業者の安全確保のために適用されています。

作業者が無意識に設備に一部に接触するほど、接近した場合に設備が緊急停止する措置を講じることが重要です。また、点検作業では通常業務以上に設備に接近するため作業者の安全を一層確保したうえで、実施することが求められます。設備の誤動作が事故に直結するので、防止措置として確実に行う必要があるのがインターロックです。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/products/family/1327/