HPLC

HPLCとは

HPLCHPLC(高速液体クロマトグラフィー)はカラムと試料の相互作用を用いて試料に含まれる各化合物を分離、検出する方法です。簡便に測定することが可能で、微量成分の検出も可能であるため、製薬、生化学、食品や環境などを中心に様々な業界で使用されています。

またHPLCのピーク面積は試料濃度と比例関係を有するため、試料に含まれる成分の濃度を定量することもできます。なおHPLCにおける試料の分離挙動はカラム、移動相によって異なるため、適切な分析条件の設計が必要です。

HPLCの使い方と使用用途

HPLC(High Performance Liquid Chromatography:高速液体クロマトグラフィー)はカラムと試料の相互作用を用いてサンプル中の各成分を分離する分析方法です。使用方法は非常に簡単で、試料溶液を直接注入する、もしくはオートサンプラに試料溶液を置いてバッチ処理を行うことで分析できます。

HPLCは様々な業界で使用されています。例えば医薬品分野では微量の不純物や有効成分の分析に使われたり、食品や飲料、環境分野では栄養成分、機能性成分、添加物、残留農薬などの分析に使われ、生化学ではタンパク質や核酸関連物質の分析に用いられています。

HPLCの原理と使用するカラム

HPLCやガスクロマトグラフィー(GC)はクロマトグラフィーの一種です。クロマトグラフィーとは分析対象に含まれる各化合物をカラムなどに吸着させながら通し、各成分の吸着力の差によって分離する方法です。HPLCの溶媒やGCのガスなどの試料成分を流す媒体のことを「移動相」、カラムなど試料を吸着させるものを「固定相」と呼びます。
HPLC 原理カラムの種類によって試料に含まれる成分とカラムの相互作用の種類、大きさは異なります。例えばODSカラムはアルキル鎖(オクタデシル基)がカラムに修飾されており、疎水性相互作用によって試料が吸着します。

一方でシリカゲルカラムでは表面のシラノール基が極性を有する化合物と吸着します。その他、フェニル基が修飾されたカラムやシアノ基、アミノ基が修飾されたカラムなども販売されています。

HPLCのピーク面積を用いた濃度計算

HPLCのピーク面積は試料の濃度に比例します。ただしUV検出器を用いた場合は試料の濃度が同一でも吸光係数(光の吸収しやすさ)によってピークの面積は変わります。そのためHPLCを用いて濃度分析を行う場合は面積を比較する標準物質を用意する必要があります。

濃度分析を行う方法の一つは「外部標準法」です。この方法では濃度が既知の標準試料を複数用意してHPLC分析を実施し、ピーク面積を求めます。各試料の濃度は既知であるため、面積値と濃度のプロットを行うことで面積値から濃度を求める式を得ることができます。

二つ目の方法は「内部標準法」です。この方法では濃度が既知の標準試料に内部標準物質として化学的・物理的に安定な別の化合物を添加します。添加したあとにHPLC分析を実施して、標準試料のピーク面積と内部標準物質のピーク面積の比を求めます。添加した内部標準物質の量の比を横軸に、ピーク面積の比を縦軸にすることで検量線を求めることができます。

HPLCの検出器と検出限界

HPLCの検出器として様々な装置が販売されています。例えば紫外可視分光(UV-Vis)検出器、蛍光検出器、示差屈折率検出器(RID)などが挙げられます。これらの検出器の検出限界は試料にもよりますが大きく異なります。例えばUV-Vis検出器の検出限界はおよそ10ピコグラム(pg)、蛍光検出器は0.1pgです。

最も感度が高いのは質量分析計(MS)で0.01pgの検出感度と見積もられています。ただし検出限界は試料に含まれる化合物の種類や濃度、分離の程度に依存します。また場合によっては蛍光を発する官能基を試料に付加する「誘導体化」なども必要になります。高感度検出を行いたい場合は試料の前処理も含めてHPLC分析の最適化が必要です。

参考文献
https://www.jasco.co.jp/jpn/technique/internet-seminar/hplc/hplc1.html
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/chromatograph/lc
https://www.nacalai.co.jp/cosmosil/technical/01.html
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/hplc_basic/

FPGAボード

FPGAボードとは

FPGAボード

FPGAボード (FPGA評価用ボード、FPGA開発用ボード) は、FPGA開発の初期段階、またはFPGA開発の学習等に使用する、FPGA (Field Programmable Gate Array) と周辺部品が搭載されたボード (基板) です。

通常FPGAは、製品仕様に沿った専用基板に搭載されますが、これら専用基板は開発に時間を要するため、製品開発の初期段階ではFPGAボートを用いてFPGAの評価を行うことが一般的です。このため、通常FPGAボードにはFPGAを開発するのに必要な各種インターフェイスがあらかじめ準備され搭載されています。

FPGAボードの使用用途

FPGAボードは、FPGAに関するIC回路 (ハード) と、動作させるためのソフトウエアの準備の双方に関して製品開発を遅延なく評価し、検証を進めるために使用されています。

というのも、通常のFPGA開発を伴う製品開発の段階では、IC内部の回路や動作ソフトの検証も途中であり、専用の周辺回路部品が搭載された評価ボードもまだ未完成で、すべて開発途中であることが多いためです。

すべての部品のハードとソフトをシリーズワークで開発を進めることも出来ますが、その場合は製品開発日程が非常に長くなってしまいます。多少冗長な (余分な) 機能があったとしても、IC開発途中に動作検証可能なFPGAボードは、設計者に重宝されているアイテムです。

FPGAボードの原理

FPGAをその原理上動作させるためには、FPGA本体であるICと、ICを動かすための各種電源や (デジタル回路用のクロック信号などの) バイアス配線をICと接続する基板、および各種デジタル制御信号を送るためのPC上の専用の組み込みソフトウエアが構成部品として必要です。

これらの構成部品をパッケージング統合したFPGAボードを用いることで、FPGAの電気的な回路システム動作を原理的に評価・検証することができます。

FPGAボードの機能に関しては、多様なインターフェイスを含め、様々なライブラリが各メーカーから用意されていますが、高機能機種はその分価格も非常に高価です。

FPGAボードのその他情報

1. FPGAボードの活用

FPGAボードはこれまで述べてきたように、FPGAを搭載する製品の先行的な評価開発に活用される場合が多いですが、それ以外にも下記のような用途で活用されることもあります。

  • 組み込みアプリケーションソフトの動作検証用途
  • デジタル回路のIC評価検証用途
  • FPGA関連の設計の入門用途

FPGAボードは多機能、高性能な専門ボードから入門用の手軽なボードまで豊富なラインナップが各メーカーから用意されており、自分がやりたい目的にあったFPGAボードを選択することを推奨します。

なぜなら、このデジタル業界の技術革新のスピードは早く、今後のためにと高価なFPGAボードを入手しても、技術革新に伴い別の機能が必要になり、新ボードを新たに購入するケースもあるためです。

2. FPGAのASICに対するメリット

FPGAには、豊富な機能をあとから設計者がProgrammableに実現できるGate Arrayと呼ばれる配線のシステムが組み込まれています。そのため、ICの内部回路自体は冗長であり、あらかじめ様々な機能が仕込まれているICです。

応答速度や消費電力といったIC自体の性能指標は専用に設計最適化されたASICに劣りますが、欲しい機能は (IC回路レイアウト設計の) マスク開発費をかけなくともすぐに実現できるメリットがあります。

昨今の微細CMOSでは、ICのマスク開発費用や開発期間も膨大になりがちであり、数量や価格の伴わない専用のASIC開発は困難な場合も多いです。このようなときに手軽にデジタル部のアプリケーションソフトウエアの動作検証を兼ねたFPGAボードは、設計開発者のお役立ちツールになると言えるでしょう。

DOメータ

DOメータとは

DOメーターとは、水中に溶解している酸素の濃度を測定するための装置です。

DOは「Dissolved Oxygen」の略で、溶存酸素のことを指します。溶存酸素の測定は、水検査や排水検査のJIS規格で指定されています。

検査方法としては、酸素が持つ酸化剤としての振る舞いを利用する化学的な分析方法と、電極間の通電率や蛍光強度が酸素の分圧や溶存酸素濃度によって変化する性質を利用して測定する電気化学的な分析方法の2種類です。一般的な製品の測定方法としては、電気化学的な測定方法が使用されています。

DOメータの使用用途

DOメーターは、河川や湖、海、井戸水などの水質検査や環境検査、下水処理施設における生物反応の槽の溶存酸素濃度の測定、魚の養殖施設における水槽内の酸素濃度の測定、工場排水の酸素濃度の測定などに使用されます。DOメーターの選定の際には、測定方法や精度、処理できる液体の大きさなどを考慮する必要があります。

河川などの水中に測定部を投げ込んで使用する場合では、ケーブルの長さや強度を考慮することが大切です。また、溶存酸素濃度だけでなく、pHなども同時に測定できる製品もあるので、使用用途に応じて選定しなければなりません。

DOメータの原理

DOメーターは、電極を使用する電気化学的な測定方法が一般的ですが、その中でも蛍光式と隔膜式に分けられます。

1. 蛍光式DOメータ

蛍光式DOメーターは、蛍光物質と励起光源、受光部で構成されており、蛍光物質と測定対象の液体が接しています。溶存酸素の測定のために、蛍光物質が励起状態から基底状態に戻る時に発する蛍光は、酸素によってその強度が減少するという現象を使用しています。

隔膜式のDOメーターに比べて、電極が長期間にわたって使用できることが特徴です。

2. 隔膜式DOメータ

隔膜式DOメーターは、2つの電極と電流計で構成されています。電極の片側にはテフロンなどでできた隔膜が取り付けられています。測定には、酸素濃度や酸素に分圧に電極間の通電率が変化する性質を利用しています。隔膜式DOメーターは、水中のpHの濃度や不純物、色などの影響を受けずに再現性が高い測定ができることが特徴です。

DOメータの選び方

1. 測定範囲

対象となる水域の溶存酸素濃度の範囲に合った測定範囲を持つDOメーターを選びます。一般的なDOメーターは、数ppm (parts per million) から数十ppmまでの範囲をカバーしています。

2. キャリブレーション (較正)

DOメーターは、定期的なキャリブレーションが必要です。キャリブレーションが簡単に行えるかどうかを確認し、使いやすさを重視することが重要です。

3. 耐久性と防水性

野外や水中での使用を考慮して、頑丈で防水性のあるDOメーターを選ぶことが重要です。

4. バッテリー寿命

長時間のモニタリングが必要な場合、長いバッテリー寿命を持つDOメーターを選択することが重要です。

5. データログ機能

データログ機能があると、測定結果を記録して後から確認できます。用途に合わせて必要な機能があるかを確認する必要があります。

DOメータのその他情報

1. DOメーターの水質評価指標

DOメーターを用いた水質評価指標は、4つのレベルに分けられます。

  • DO値が7mg/L以上
    非常にきれいな水で野生の生物が生息する環境としては、非常に良い状態の水質といえます。
  • DO値が5mg/L以上、7mg/L未満
    野生生物が生息する環境としては申し分ないが、少し汚い状態といえます。
  • DO値が3mg/L以上、5mg/L未満
    野生生物が生息する環境としてよい状態とはいえず、汚い水質の状態といえます。
  • DO値が3mg/L未満
    野生生物が生息する環境としては適した水質の状態とはいえず、生物が生育、繁殖するのが難しい程水質が汚染されている状況です。

2. DO・BOD・CODの違い

DO (Dissolved Oxygen)
DOは水中に溶解している酸素量、つまり溶存酸素量を測定し水質を調査する一方で、他にもBOD、CODといった水質調査測定法もあります。

BOD (Biochemical Oxygen Demand)
BODは水中の微生物や細菌が有機物を分解するときに生じる酸素量、つまり生物化学的酸素要求量をアセスメントする手法となり、BOD値が高いほど水質は汚染されています。水中に消費可能な有機物が豊富にあれば、それを微生物がエネルギー源として利用し、微生物が大量に繁殖します。

微生物の繁殖と同時に水中にある酸素は微生物によって消費されることに加え、微生物の増加により藻類の光合成も阻害され、残存酸素量はますます減少します。

COD (Chemical Oxygen Demand)
CODは水中の有機物を強力な酸化剤を用いて酸化し、その際に必要であった酸化剤の量を酸素当量に置き換えるアセスメント法となっています。CODは、強力な酸化剤を試水に対して処理した後、水中に存在する還元性物質がどの程度酸化されているかを測定します。

使用する酸化剤はケースによって異なりますが、酸化剤の大体の性質は一貫しているため、基本的にこのCOD値が大きくなればなるほど水質が汚染されていると評価できることになります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/21/7/21_7_455/_pdf
https://www.jemima.or.jp/tech/5-02-02.html
https://nbrc.client.jp/kasen-pro/kagaku/kagaku/1.htm

DC電源

DC電源とは

DC電源

DC (Direct Current) 電源とは、交流の商用電源から直流の電圧を作り出す電源装置のことです。

AC/DCコンバータと呼ばれることもあります。電子機器の内部回路は直流で動作するため、電池駆動を除いた全ての機器はDC電源を内蔵していると考えて問題ありません。

研究機関や大学などで使われる実験用のDC電源は例外として、通常機器の内部に収納されています。目にする機会はありませんが、機器の消費電力を左右する非常に重要なコンポーネントです。

DC電源の使用用途

DC電源は、スマートフォンの充電器や各種電気製品、工場の生産設備等に最低一台は搭載されています。ただし、機器内の電子回路によっては、最適な電源電圧が異なることがあります。その場合は、一台のDC電源からDC/DCコンバータを用いて必要な電圧に変換し、各回路に供給する電源構成が必要です。

各種機器に組み込まれるDC電源は出力電圧が一定値に固定されていますが、実験用機器や各種試験装置に使われるDC電源は、電源条件を変更して機器の特性を測定する用途にも用いられるため、出力電圧を任意に設定できるものでなければなりません。プログラム電源とも呼ばれるこれらの用途では、特に次の性能が求められます。

  • 出力電圧を正確に設定する手段を備えていること。
  • リップルやノイズが少ないこと。
  • 出力電流の大きさに影響されず、常に安定した電圧出力であること。

また、DCモータを利用した動力系に大きなパワーを供給するDC電源もあります。例えば、産業ロボットの駆動、医療機器分野における各種ポンプやファンの回転、建設機械の動力源などにDCモータが採用されていますが、それらのモータへ電力を供給するDC電源が必要です。これらの用途では優れた制御性が要求されますので、大電流出力でありながらも安定した電圧出力が必要になります。

DC電源の原理

DC電源には基本的な回路要素として、整流回路と平滑回路、安定化回路が欠かせません。

1. 整流回路

4個のダイオードを組み合わせたブリッジ回路で、交流を脈流に変換します。嘗てはダイオード1個の半波整流回路が採用されていましたが、リップル特性が良くないため現在は全く見掛けません。

2. 平滑回路

整流回路の出力である脈流を平滑して、リップルの少ない直流に変換します。一般には、大容量のコンデンサ2個とチョークコイル1個から成るπ型と呼ばれる構成です。コンデンサの容量が大きいほどリップルが少なく安定した出力が得られます。

3. 安定化回路

DC電源には出力電圧を安定化する回路が必要ですが、これにはスイッチング電源リニア電源の2つの回路方式があります。

スイッチング電源
商用電源をそのまま整流回路と平滑回路に通して直流に変換し、それをDC/DCコンバータを用いて所望の電圧に降圧するものです。大きな変圧器が不要なため、比較的小型/軽量に作ることができます。また、電圧変換する際のエネルギー効率が高く、発熱も少ないことがメリットです。

これらの特徴より現在のDC電源の主流となっています。入力電圧に対して幅広く対応できることも特徴の一つで、100V~240V の商用電源に対して、全域で安定した直流電圧を出力することが可能な電源があります。このような電源を採用すれば、世界中どこでも使える電子機器を作ることができます。

リニア電源
大型の変圧器を使用して商用電源を低い交流電圧に変換し、それを整流回路と平滑回路に通して直流にするものです。ただし、そのままではリップルや電圧変動が大きいので、レギュレータ回路を追加して安定した出力電圧を得ます。このような構成は、ドロッパ方式といわれ、メリットとして出力電圧に乗るノイズが少ないことが挙げられます。

ノイズに対して敏感な計測器や音響機器、前述のプログラム電源等に採用されています。一方、レギュレータ回路での発熱が大きいので、高出力の電源では空冷ファンなどの冷却装置が必要になります。

DC電源のその他情報

DC電源の市場動向

ある民間の調査機関では、「世界のDC電源の市場規模は、2021年は4億米ドルで、2027年までに5億2,010万米ドルの規模に達する」と発表しています。その背景として、家庭用電化製品におけるエネルギー効率の高い電源への需要の高まりや、世界的な産業オートメーション化の進展が、市場の成長を促す重要な要因であると分析しています。

さらに、航空宇宙、防衛、通信等の業界で無線通信システムが広く採用されていることも、DC電源市場の成長を後押ししている要因の一つです。

さらに新しい用途として、自動車のバッテリー充電装置、充電ステーション、オンボードチャージャー等も市場を拡大させる要素と言われています。

参考文献
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=powersupply1
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=powersupply2
https://www.matsusada.co.jp/column/column-dc-power.html

CPUボード

CPUボードとは

CPUボード

CPUボードとは、システムを制御するためのシステムコントローラチップとその周辺デバイスをボード上に実装したものです。

一般的によく使用される周辺デバイスが実装されているので、ほとんどの場合は専用ボードの設計を省いて、すぐにソフトウェア設計に着手できます。また、必要なデバイスドライバやOSが用意されている場合もあるため、ソフトウェアの設計が完了したら、CPUボード上にソフトウェアを実装してそのまま製品化することも可能です。

さらに、不要なハードウェアを取り除いて専用のボードを設計できます。このように、CPUボードは、短期間かつ容易にシステム開発できる点がメリットです。

CPUボードの使用用途

CPUボードはシングルチップマイコンが搭載される民生用機器や、より規模の大きな業務用システムのコントローラとして使用されます。

1. ファクトリーオートメーション

FA機器において、CPUボードは中心的な役割を担います。これらの機器は、生産効率を向上させるために設計されており、CPUボードは各種センサーやアクチュエータの制御により、機械の動作を最適化します。また、リアルタイムでのデータ処理が求められるため、高速・高性能のCPUボードが要求されます。

2. 小売業

POSレジは、小売業界での販売管理や在庫管理に欠かせないシステムです。CPUボードは、バーコードスキャナーやプリンターなどの周辺機器と連携し、複雑な処理を迅速に行うことが求められます。

また、長時間の連続稼働や省エネ性も重要な要素となるため、耐久性と効率性の高いCPUボードが使用されています。

3. 医療

医療機器では、患者の命に関わる重要な情報を扱うため、高い信頼性が求められるCPUボードが必要です。例えば、画像診断装置や心電計などでは、正確で高速なデータ処理が不可欠であり、高品質なCPUボードが採用されています。

4. セキュリティ

監視機器では、セキュリティカメラやアクセス制御システムなど、リアルタイムでの映像やデータ解析が求められます。そのため、高速で安定した処理能力を持つCPUボードが使用されており、監視機器の性能向上に寄与しています。

CPUボードの原理

1. ハードウェア

CPUボード上には、シングルチップマイコンもしくは汎用的なCPUを搭載するCPUボードいずれの場合も、メモリ、HDD/CD-ROM等のドライブユニットとその制御デバイス、USBドライバ、シリアルI/Fドライバ、イーサネットドライバ、HDMI I/FドライバをはじめAD/DAコンバータなど、マイコン側に内蔵されていないがシステムを開発する上でよく使用されるデバイス類が数多く実装されています。

2. ソフトウェア

CPUボード上のマイコンもしくはCPU、周辺デバイスを動作させるためのOSおよび周辺デバイス用デバイスドライバ、ファームウェアが一般的には用意されています。シングルチップマイコン用のOSとしては、チップベンダーが提供する独自のOSに加え、μIRON系のOSが主流です。他方、汎用的なCPU用のOSは、Windows、Linux、Androidなどが良く使用されています。

CPUボードの選び方

CPUボードを選ぶ際には、以下の要素を考慮してください。

1. 用途と性能

CPUボードを使用する目的や必要な性能を明確にします。例えば、IoTデバイス、ロボット制御、画像処理など、用途に応じて適切な性能を持ったCPUボードを選ぶことが重要です。

2. プロセッサ

搭載されているプロセッサの種類と性能は、CPUボードの選択において重要な要素です。プロセッサは、ARM、x86、MIPS、RISC-Vなどのアーキテクチャがあります。必要な処理能力やアプリケーション、電力消費に応じて選びます。

3. メモリ

CPUボードには、RAMとROM (フラッシュメモリ) が搭載されています。プロジェクトの要件に応じて、十分なメモリ容量を持ったボードを選びます。

4. 入出力インターフェース

CPUボードには、GPIO (英: General Purpose Input/Output) 、UART (英: Universal Asynchronous Receiver/Transmitter) 、I2C (英:  Inter-Integrated Circuit) 、SPI (英: Serial Peripheral Interface) 、USB、Ethernet、Wi-Fi、Bluetoothなど様々なインターフェースがあります。プロジェクトで必要なインターフェースが搭載されているボードを選びます。

5. 電源

CPUボードは、バッテリーや外部電源から電力を供給されます。プロジェクトで使用する電源に適したボードを選ぶことが重要です。

6. サイズ

CPUボードのサイズも選択の要素です。限られたスペースに収める必要があるプロジェクトでは、サイズが小さいボードが適しています。

7. OSと開発環境

厳密なリアルタイム性が求められる場合はリアルタイムOSやOSなしで開発できる開発環境を持つCPUボードを選択します。特定のOSでしか稼働できないアプリケーションが必要となる場合はアプリケーションの要件に基づいて選びます。

COD計

COD計とは

COD計は水中の化学的酸素要求量(Chemical oxygen demand: COD)を測定するための機械です。

*COD: 水試料中の有機汚濁を測るための指標として用います。主に湾岸や、湖沼等の閉鎖性水域において、環境を評価する際に使われています。CODの値が高ければ高いほど(試料の酸素要求量が多いほど)、汚れた水であるといえます。

CODと同様に水質の指標として生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand: BOD)が用いられています。

*BOD: 微生物が水中の有機物を分解する際に必要になる、酸素量を表す指標であり、河川の基準項目として用いられます。

COD計の使用用途

CODは、有機物が分解される際に消費される酸素の量を、酸化剤(過マンガン酸カリウムを用いることが多い)によって測定します。有機物が多いほど、酸化剤を加えた際に必要とされる酸素の量は多いので、CODは高まります。

環境省により、CODの基準値・目標値は決められており、環境評価や排水処理の際の基準となります。これらの基準値は、ノリの養殖・工業用水など、水域の種類や用水の使用用途より異なります。また、CODはmg/Lで表されますが、測定方法により、値が異なるので注意が必要です。

日本では、事業所の排水量に応じて、簡易 COD計の使用が認められています。

COD計の原理

COD計の測定方式として、以下の方法が採用されています。

1. COD自動測定器(酸性法・アルカリ性法)

自動測定器においてシェアを占めているのが酸性法です。
試料への試薬の添加と、加熱・過マンガン酸カリウムの測定までを自動化して行います。

以下の方法は、簡易COD計において採用されている方法です。野外や現場で手軽に測定することができます。

2. クーロメトリー(電量測定)方式

試料に電極を入れ、電解することで酸化剤を生み出し、滴定を行います。滴定に使用した電気量を元にCOD濃度を求めます。

3. 比色法

酸化剤である過マンガン酸カリウムの残留量を、試料に一定の波長を照射して、吸光度により求めます。これを元に、CODを算出します。試薬の濁りや試料中の懸濁物質によって吸光度の測定に影響される場合があるので注意が必要です。より簡単な方法として、パックテストを用いた比色法も存在します。

この他に手分析による測定方法もありますが、今回はCOD計に関する解説のため、省略します。

参考文献
https://www.jswe.or.jp/publications/jutaku/wsi/pdf/seikasyu-003.pdf
https://aqua-ckc.jp/products/cod.html
http://www.env.go.jp/kijun/wt2-2.html
https://www.jemima.or.jp/tech/5-02-04.html

CO2計

CO2計とは

CO2計

CO2計とは、二酸化炭素を測定する機械です。

二酸化炭素センサー、二酸化炭素測定器などとも呼ばれています。実験・観測用としての用途はもちろんですが、一般家庭やオフィス・工場での安全管理を目的として、幅広い用途で利用されています。

二酸化炭素の検出方法は大きく分けてNDIR式、固体CO2電解センサー、光音響式センサーの3つに分けられますが、感度が高く安定性が高いことからNDIR式が主流です。

基本的には二酸化炭素が存在する空間からサンプルを取り込み、それを分析してCO2の濃度を測定します。一般的には、センサーとディスプレイが装備されており、センサーがCO2濃度を感知し、ディスプレイに数値やグラフとして表示されます。

CO2計の使用用途

CO2は無色・無臭の気体ですが、一定の空間内での濃度が高いと人体に影響を及ぼします。室内環境を良好に維持するための目安や、CO2を用いた消化設備、一般家庭での燃焼器具 (ストーブ、ボイラー等) の排気ガスのガス漏れのチェック、農業分野ではビニールハウス内で作物に最適な環境かどうか判断する指標として多岐に渡って使われています。

また、近年では小型のセンサモジュールとして安価に手に入れることが可能になったため、電子工作のパーツとしても利用されており、使用の幅が広がっています。

CO2計の原理

二酸化炭素の検出方法はNDIR式、固体CO2電解センサー、光音響式センサーが主要な方法です。

1. NDIR (Nondispersive Infrared) 式

CO2は一定の長さの波長を吸収するのが特徴です。そのため、CO2を含む気体 (=試料) に赤外線を透過させると、赤外線はCO2に吸収され一部は試料を通過します。

この特性を利用して、吸収された赤外線の量を元にCO2濃度を定量しています。この測定方法により、CO2計は安価で小型化を実現することが可能となりました。日本語では、非分散赤外線吸収法と呼ばれています。

2. 固体CO2電解センサー

電気化学式と呼ばれる方法です。炭酸イオンと反応する物質を利用して、ナトリウムイオンの濃度の変化を電圧計で定量することで、目的とするCO2濃度を測定します。

3. 光音響式センサー

試料に光を当てることによって生じる、熱の変化を圧力の変化として検出し、定量する方法です。物質に光を照射すると、同じ周波数の音波が物質から発生する現象 (=光音響効果) を利用しています。

CO2計の選び方

CO2計は用途が幅広いため、選ぶ際には下記について考慮して選ぶ必要があります。

1. 測定目的

CO2計には様々なタイプがあります。ポータブルデバイスとして移動しながら測定を行うことができるタイプや、固定設置型で特定の場所で常に測定を行うタイプがあります。使用目的や環境に応じて、適切なタイプを選ぶことが大切です。

2. 測定範囲と精度

CO2計は異なる範囲のCO2濃度を測定することができます。使用する場所やアプリケーションに合わせて、必要な測定範囲を確認することが重要です。また、精度も重要な要素です。精度の高い測定器を選ぶことで、正確な結果を得られます。

3. 操作性と使いやすさ

測定器の操作性や使いやすさも重要な要素です。使いやすいインターフェースや直感的な操作が備わっているかどうかを確認します。データの読み取りや記録機能があるなど、汎用性の観点も確認する必要があります。

4. 予算

広範囲で高性能であればあるほど高額になります。自身のCO2計を導入する目的を明確にし、要件を満足するものを選び予算内での検討を行うことが重要です。

参考文献
https://www.murata.com/ja-jp/products/sensor/co2/technicalinfo
https://www.klv.co.jp/iot/ndir-sensor-and-biogas.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kogyobutsurikagaku/63/9/63_794/_pdf

CO2レーザー加工機

CO2レーザー加工機とは

CO2レーザー加工機

CO2レーザー加工機とは、炭酸ガスレーザーを用いたレーザー加工機のことです。

主に金属やプラスチックの加工に利用されています。赤外線領域の10.6μmの波長を持ち、溶接、溶着、切断、彫刻など、幅広い加工が可能です。

安価であり、手軽に導入できるため、多くの業界で利用されています。低出力で安全性を考慮した家庭用の製品も登場し、趣味やDIYの分野での利用も可能です。

CO2レーザー加工機は、高い加工精度と高速加工が可能になる点が特徴です。また、切断面は滑らかで、切り口が焦げたり変色したりすることがなく、繊細な彫刻もできます。

加工機の価格は比較的安価なので、製品開発や試作品の作成、小ロット生産などに適しています。また、レーザー加工機は自動化されており、省力化や生産性向上にも貢献できる点で注目されています。

CO2レーザー加工機の使用用途

CO2レーザー加工機は、多様な素材の切断や彫刻ができるため、木材やアクリル板などの厚い素材の切断や彫刻に使用されています。また、ゴム材、ガラス、アルマイト、紙、布地、プラスチック、皮革、石材などにも彫刻を施せます。

木材に彫刻を施せば、デスクトップアクセサリー、家具、雑貨、食器などを作ることが可能です。アクリル板に彫刻を施せば、ネームプレート、パネル、看板、ディスプレイなどが作れます。また、レーザー加工機でガラスに彫刻を施すと、ワイングラスやグラス製品など贈り物に最適なアイテムを作ることも可能です。

プラスチック製品にはシリアル番号や製造年月日、皮革製品にはロゴやネームを入れられます。レーザー加工機を使用して石材に彫刻を施せば、墓石、モニュメント、石碑なども制作可能です。

さらに、CO2レーザー加工機は、細かい曲線やディテールを処理できるため、プロトタイプの製作や産業デザインにも活用されます。加工精度が高く、効率的に加工できるため、業界全体で重宝されています。

CO2レーザー加工機の原理

CO2レーザー加工機の原理は、CO2レーザーを用いた加工で成り立ちます。CO2レーザーは、二酸化炭素を媒質としている気体レーザーで、高い指向性、単色性、コヒーレンスを持つ光を生成します。このレーザー光は、集光レンズを通すことでエネルギー密度を高め、材料に照射されると急激に振動して熱を発し、材料を瞬時に溶かして加工することが可能です。

CO2レーザー加工機は、CO2レーザー光を集光光学系で絞り、ヘッド部分から材料に照射します。ただし、金属の加工には向かず、反射が強く、プラズマが発生するために照射エネルギー密度が低下することがあるため、照射口付近からアシストガスを吹きかけてプラズマを防止し、ムラのない加工が必要です。

加工したい図形や文字などは、パソコンから読み込むことが可能です。既存の描画ツールのデータをそのまま使用するため、操作は簡単で、彫刻や切断を容易に行えます。木材やアクリル板などの厚みのある素材を切断できる高出力モデルがあり、彫刻や切断に広く使用されています。

CO2レーザー加工機の種類

CO2レーザー加工機には主にスタンドアロンタイプ、手持ち式タイプ、工業用タイプの3つがあり、目的や使用環境によって、適した種類を選ぶことが重要です。

1. スタンドアロンタイプ

スタンドアロンタイプのCO2レーザー加工機は、卓上に設置できるのが特徴です。小型の機種もあり、家庭用としても利用されます。パソコンと接続し、各種CADソフトと連動して、簡単な作業から複雑なデザインまでさまざまな加工が可能です。

2. 手持ち式タイプ

手持ち式タイプのCO2レーザー加工機は、持ち運びが可能で、携帯電話のように操作できるようになっています。小型であるため、限られたスペースでの作業にも向いています。主にDIYやアマチュアの方に利用されます。

3. 工業用タイプ

工業用タイプのCO2レーザー加工機は、大型で高出力の機種が主流です。金属やアクリル板などの加工に向いており、自動化にも対応しています。自動で材料をセットし、加工が行われるため、生産性を高められます。

参考文献
https://www.uesltd.co.jp/laser_machining/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/welding/laser/mechanism.jsp

CBN砥石

CBN砥石とは

CBN砥石とは、立方晶窒化硼素 (Cubic Boron Nitride) を用いた研削や研磨に使用される砥石のことです。

CBNは、耐摩耗性に優れるダイヤモンドに次ぐ硬さと耐摩耗性を備えた人工鉱物であり、自動車部品を始めとする高精度が要求される部品の機械加工に使用されます。CBN砥石は、熱伝導率が高く、耐熱鋼、機械部品の焼き入れ合金鋼、ベアリング鋼などの加工に広く利用されています。一般的な砥石では加工が難しいため、CBN砥石の使用が必要です。

また、ダイヤモンド砥石と比べて比較的低価格であり、ダイヤモンド砥石ではなくCBN砥石を使用する方が経済的です。ただし、CBN砥石は高い技術力を必要とするため、使用する際には専門知識や経験が必要になります。また、砥石の使用には、加工対象物や砥石の材質、形状、粒度などを考慮しなければなりません。

CBN砥石は、高精度が求められる産業分野で広く使用されており、その特性を活かして加工品質の向上が可能です。しかし、適切な使用法を守らない場合、加工品質に悪影響を及ぼすこともあるため、注意が必要です。

CBN砥石の使用用途

CBN砥石は、主に高硬度で非常に難削な鉄系金属の加工に使用されます。CBNはダイヤモンドに次ぐ硬さ・耐摩耗性を持ちながら、耐熱性にも優れている点が特徴です。

具体的な使用用途として、車両用エンジン部品やベアリングの製造、航空宇宙産業でのタービンブレードの加工、また工作機械の主軸やハイスピンドル、ツールの切れ刃などが挙げられます。また、CBN砥石は高品質の仕上げ面を生み出せるため、工具の表面仕上げや研磨精度が要求される電子部品の加工などにも使用されます。

耐久性と高精度な研削・研磨能力から、CBN砥石は高品質の部品加工に欠かせない重要な工具です。一方で、ダイヤモンド砥石は高硬度な非鉄系難削材の加工に適していますが、耐熱性が低く、加工中に高温になると軟化するため、CBN砥石の方が鉄系金属の加工には適しています。

CBN砥石の原理

CBN砥石は、砥粒、ボンド、気孔の3つの要素で構成されており、その組み合わせによって、砥石の性能が左右されます。砥粒には、CBNやダイヤモンドなどがあり、ボンドには、レジンやメタル、ビトリファイドなどが用いられます。

砥石の性能に影響する要素は、「砥粒」「粒度」「結合度」「集中度」「結合剤」「結合度」の5つです。これらを「砥石の5因子」と呼びます。CBN砥石は、ダイヤモンドに次ぐ硬度と耐摩耗性を有しており、ダイヤモンドが700℃で酸化が始まるのに対し、CBNは1,300℃まで耐えられる高い耐熱性を持っている点が特徴です。

そのため、一般的には鉄系金属の加工に多く用いられています。また、砥粒は研削が進むにつれて摩耗し、切れ味が落ちますが、そのような場合には砥粒を脱落させ、新しい砥粒と入れ替える必要があります。

しかし、砥粒が脱落しないようにしっかりとボンドで保持することも大切です。そのため、砥石の5因子を勘案して、加工条件に応じた適切な砥石設計や選定が重要となります。

CBN砥石へのその他情報

1. CBN砥石へのドレッシング実施

ドレッシングは、砥石表面にある不要なボンドや切屑を除き、砥粒を突出させる作業です。スティックの粒度は、CBN砥石の粒度よりも1~2ランク程度細かい砥粒を使用し、結合度はE~Hのものが推奨されています。

効果的なドレッシング方法は、スティックを砥石に強く押付け、ドレッシング中は砥石にスラリーが出る程度の研削液の量に調整することです。CBN砥石を有効的に使用して、優れた性能を発揮させるためにとても重要な手順となります。

2. CBN砥石の集中度

集中度は、砥粒層中のCBN砥粒が含有している割合を表します。同じ粒度の場合、集中度が高くなると砥粒数が増え、集中度が低くなると砥粒数が減ります。CBN砥石を適切に使用にするためには、被削する材料や加工の種類に合った集中度のCBN砥石を選択することが重要です。

定義は[4.4ct/cm3=集中度100]で、集中度20~200の範囲で使用されるのが一般的です。表示対象はレジンボンド、メタルボンドとビトリファインドボンドの3種類があります。電着の場合は、砥粒層が1層であるため、集中度の規格がありません。

3. CBN砥石の目詰まり

研削中の砥石は正常形・目こぼれ形・目詰まり形・目つぶれ形の4つの状態に分類されています。目詰まり形の砥石は、砥石の気孔が塞がれて切り屑の逃げ場がなくなった状態を指します。

気孔が塞がれる原因は2種類あります。1つ目はアルミニウム・ステンレスなどの柔らかく粘い材料を加工した時の切屑が砥粒の切れ刃の先をまたがって付着する場合です。2つ目は鋳物や石材を乾いた状態で研削する際に、切屑の排出が悪く、気孔に詰まってしまうことが挙げられます。

両方の場合は、研削抵抗が大きくなってしまい、振動が生じやすいです。この状態の砥石を使った場合の仕上げ面は、ムシレやビビリが多く発生します。目詰まりしてしまった砥石で研削するときに多くみられる切屑として、溶融形切り屑が挙げられます。この切屑は砥石の切れ味が悪く、切屑が研削熱によって溶融し、球状もしくは半球状になっています。

参考文献
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00506417
https://www.allied-material.co.jp/products/diamond/knowledge/diamond_cbn-wheel.html
http://www.keihin-kogyo.co.jp/products/004_dia_bn_wheel.html
https://www.noritake.co.jp/products/support/detail/16/

ALD装置

ALD装置とは

ALD (成膜) 装置とは、原子層堆積法 (英: Atomic Layer Deposition) によりナノスケールの薄膜を形成する装置です。

原子層を1層ごと成膜するため、精密な膜厚制御性と緻密な段差被膜性を有する点が特徴です。ただし、成膜速度が遅いというデメリットがあります。

ALD成膜では多数の有機金属材料を用いますが、人体への悪影響や発火性の高い材料が多いです。取り扱いには、専門の知識と細心の注意が必要となります。

ALD装置の使用用途

ALD装置は、半導体生産工程やFPD生産工程などで多く用いられます。近年ではDRAM生産で欠かせない技術です。以下はALD装置で製膜される薄膜の一例です。

1. ゲート酸化膜

FETなどのトランジスタを形成する際に必要となる高誘電率を備えた薄膜です。主にAl2O3やZrO2などの酸化膜が用いられます。

2. バリア膜

ALDにて形成される窒化膜をバリア膜と呼ぶことがあります。Cu配線材などの遷移金属の拡散防止のために用いられ、配線周辺の金属汚染や絶縁劣化を防ぎます。

3. 透過防止膜

樹脂基材や有機ELパネルへ水分などが透過するのを防ぐための薄膜です。異物の透過を防ぐことで、品質保持や長寿命化に寄与します。

 

上記のように産業に使用されることがほとんどですが、バイオメディカル業界へも応用されます。人工関節や人工骨などが代表例で、金属製人工骨へ生体適合膜を形成して拒絶反応を防止します。また、薬品へコーティングして薬効時間の調整にも用いられます。

ALD装置の原理

ALD装置はステンレスやアルミなどの真空チャンバを備え、材料ガスの供給パートと材料ガスを排出する排気パートやプロセスを制御する制御ユニットで構成されます。

前駆体となる有機金属材料をプリカーサと呼びます。まずは真空チャンバー内にプリカーサを導入して基板の表面に吸着させます。その後チャンバー内を一度排気して余剰プリカーサを取り除いたのちに、酸化・窒化させて薄膜を形成します。

このサイクル1回で原子層が1層形成され、複数回繰り返すことで膜を堆積させることが可能です。サイクル回数によって膜厚が変化するため、膜厚制御性が高い事が特徴です。ALD成膜の工程でもパージ工程は大変重要であり、異なるプリカーサや酸化源がチャンバー内に残留すると膜質に悪い影響を与えます。

成膜効率を向上させるために、基板を加熱またはプラズマでアシストする場合があります。加熱する方法をサーマルALDと呼び、プラズマでアシストする方法をプラズマALDと呼びます。

ALD装置のその他情報

1. ALDとCVD、PVD技術の違い

CVDは「Chemical Vapor Deposition (化学的気相成長) 」、PVDは「Physical Vapor Deposition (物理的気相成長) 」の頭文字をとって名付けた成膜技術です。

ALDはガスを利用しているため、CVDの一種ともいわれています。しかしながら、ガスが分解することによって生成するSiO2、SiNxといった化合物が塵のように堆積していくCVDとは異なり、ALDは1レイヤーずつ成膜が可能な点が大きな違いです。

PVDは成膜に用いる手法がガスではなく、物理的な手法で成膜を行う技術です。PVDでは真空状態で成膜物質に対して加熱、スパッタリング、イオンビーム照射、レーザー照射を行うことで成膜物質を粒子状態に蒸発・飛散させ、対象物に付着・堆積をさせる方法です。

ALDを用いて成膜を行う場合は、CVDとPVDで成膜をする場合と比較して、幅が狭く深さがある構造物に対して成膜が可能です。特に、100nm以下のサイズ孔に対して成膜する際に、ALD技術が優れた被膜能力を発揮します。ALDのガスは深く入り込んで成膜できるため、小さい孔が多数存在する物体に対しても非常に被膜能力が高い技術です。

2. ALD装置の世界市場

ALDの世界的なマーケットは、2028年までに65億ドルに達する見込みとされます。現在の薄膜成型市場は、CVDがマーケットシェアの大部分を占めています。その中でALD技術は半導体デバイスの製造プロセス中で非常に重要な役割を担うことに加え、蒸着性能や生産速度も比較的に高い技術です。そのため、ALD技術は今後も独自の重要性を築きつつ継続して伸長を続けていく市場と考えられます。

参考:ALD装置の世界市場規模

参考文献
https://aldjapan.com/%e5%8e%9f%e7%90%86/
http://ex-press.jp/lfwj/lfwj-news/lfwj-biz-market/21629/
https://www.oike-kogyo.co.jp/research/column/pvd/