アルミ鋳物

アルミ鋳物とは

アルミ鋳物

アルミ鋳物とは、鋳造と呼ばれる方法によりアルミニウム合金を加工してできた製品のことです。

鋳造とは、アルミニウム合金を融点よりも高い温度で加熱し溶かしたものを鋳型と呼ばれる目的の形に作られた型に流し込み、冷却して製品を作ることを指します。鋳型の種類には、大きく「砂型鋳造法」と「金型鋳造法」の2つがあります。

砂型鋳造法の利点は、コストが安いこと、大きな形状に対応していること、小ロット対応していることです。金型鋳造法の利点は、大量生産できること寸法精度が高いことです。金型鋳造法には、さらにグラビティ法、ダイカスト法等があります。

アルミ鋳物の使用用途

アルミ鋳物は軽量で、加工性や電気伝導性、熱伝導性、リサイクル性、耐食性に優れているため、自動車に使用されることが多いです。実際に使用されている部品として、以下が挙げられます。

  • エンジン部品 (シリンダブロック、シリンダヘッド等)
  • 車体部品
  • 足回り部品等

自動車を軽量化することで、燃費改善や操作性の向上につながります。また、熱伝導性 (放熱性) を生かして、熱を発生させる部品の冷却を軽減させています。

アルミ鋳物の原理

アルミ鋳造法の「砂型鋳造法」と「金型鋳造法 (グラビティ法) 」では、それぞれ原理が異なります。

1. 砂型鋳造法

  1. 木型で製品形状とアルミニウムを流し込む湯口を作成し、型枠に作成した木型を設置します。
  2. 固めるための添加剤を混ぜた砂を型枠につめます。
  3. 砂型から木型 (製品形状と湯口) を外すと砂型が完成します。
  4. 上記の手順で上下の砂型を作成します。
  5. 完成した砂型を上下に合わせます。
  6. 上下合わせた砂型に湯口から溶かしたアルミニウムを流します。
  7. 流した後に冷却して固めます。
  8. 固まった後に砂型を壊してアルミ鋳物を取り出します。
  9. 不要部を外して、表面を加工すると完成です。

2. 金型鋳造法 (グラビティ鋳造法)

  1. 製品形状にあった金型を作成します。
  2. 金型に湯口から溶かしたアルミニウムを重力※により流します。
  3. 流した後に冷却して固めます。
  4. 固まった後に金型を外してアルミ鋳物を取り出します。
  5. 不要部を外して、表面を加工すると完成です。

※重力だけでなく、圧力をかけて注入する方法をダイカスト法といいます。

アルミ鋳物のその他情報

1. アルミ鋳物のアルマイト処理

アルミ鋳物の表面をアルマイト処理することで、耐腐食性や耐摩耗性を向上させることができます。アルマイト処理とは、陽極酸化処理とも呼ばれます。電解液中でアルミニウムに通電することで酸化し、自然酸化で生成する皮膜よりも厚い皮膜を生成する処理方法のことです。

アルミ鋳物には強度を上げるために、アルミニウム以外の元素が多量に含まれています。例えば、ケイ素、、マグネシウムなどが挙げられます。アルミ鋳物にアルマイト処理を行う場合、これらの元素により、皮膜の生成が阻害されることがあります。これは、アルミニウム以外の元素が鋳物中に偏析することにより、通電状態が変化することが原因です。改善するためには、鋳物表面の汚れや未溶解の微粒子を丁寧に除去する、短時間で処理を行うなどの対策が必要となります。

2. アルミ鋳物の欠陥

ピンホールとは、アルミ鋳物に生じる欠陥の1つで、多数の細かい針状の気泡のことです。気泡の大きさは製造条件によって変動しますが、0.1mm程度となっています。ピンホールは大気中の水分が溶湯中で水素ガスになり、凝固過程で鋳物の外部に放出されることで発生します。製品の肉厚部分や冷えにくかった部分に発生しやすいです。

ピンホール対策としては、溶融状態のアルミニウム合金と空気の接触を少なくすること、原料や工具などを充分に乾燥させ、水分の混入を防ぐことが挙げられます。また、凝固前に合金内から水素ガスを可能な限り除去することも必要です。

ピンホール以外の欠陥では、ひけ巣、湯境、湯じわ、焼付き、かじり等もあります。主に金型の温度管理や金型の研磨などのメンテナンスをすることで防ぐことが可能です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/5/84_427/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jilm/56/11/56_11_580/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfes/82/7/82_407/_pdf/-char/ja
http://www.monozukuri.org/techno/technote002.pdf
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000673848.pdf

アルミ切削加工

アルミ切削加工とは

アルミ切削加工

アルミ切削加工は、旋盤フライス盤、NC盤、マシニングなどの工作機械を使い、アルミに「切る」、「削る」などの加工を行う加工方法です。

プレス加工や成型加工と比べて、加工箇所に応じて細かい加工を行えるため、より複雑な形状の加工が可能になります。また、アルミは、素材として軽く、加工性が良く複雑な形状でも精度よく加工できるので、様々な分野の部品製作にアルミ切削加工が使用されています。

アルミ切削加工の使用用途

アルミの切削加工は、複雑な形状でも精度よく加工できること、アルミが様々な特性を持つことから、以下のような機械部品の加工方法として使用されています。

1. 磁場の影響を受ける機械部品の加工

アルミは磁場に影響されない非磁性体です。このことから、磁場の影響を受けやすい電子医療機器やメカトロニクス機器、リニアモーターカーなどの複雑な形状の部品は、アルミ切削加工で製作されています。

2. 高熱伝導率が必要な機械部品の加工

アルミは熱伝導率が高く、鉄の約3倍の熱伝導率を持ちます。このため、高熱伝導率が必要とされ、複雑な形状も必要とされる冷暖房装置、エンジン部品、放熱フィン、ヒートシンクなどの製作にはアルミ切削加工が好適です。

3. 低温下で使用される機械部品の加工

アルミは低温環境にも強く、液体窒素を扱う (-196℃) 環境や液体酸素を扱う (-183℃) 環境といった極低温下でも脆性破壊することがなく、靭性が大きい素材です。このため、最近では宇宙開発や、極低温の超電導関連といった最先端分野で、形状や特性に高精度が要求される機械部品にもアルミ切削加工が利用されています。

アルミ切削加工の原理

アルミ切削加工は、用途に応じた工作機械を使ってアルミを「切る」「削る」といった形で不要な部分を取り除き、求められる形状やサイズに加工します。様々な形状に加工でき、かつ高精度の部品が作成できるという点が長所です。

しかし、一方で、複雑な形状になる程、多くの刃物と様々な加工方法を用いることになるため、時間とコストがかかりやすいという欠点もあります。なお、部品材料として一般的に使用されるアルミ材は、アルミ合金です。これは、アルミ単体での弱点をカバーするためで、アルミ合金には他の金属が加えられています。

アルミ合金には番手が与えられており、加えられている金属によって1000番系~7000番系が割り振られています。この番手に応じて適した加工法があり、アルミ切削加工に適しているのは、5000番系です。

アルミ切削加工のその他情報

1. アルミ切削加工における溶着と対処法

アルミは、切削加工時に溶けて切削刃に溶着が発生する可能性があります。この溶着により生じる問題点と解決方法は以下の通りです。

切削刃への溶着による問題点
アルミが切削刃に溶着すると加工精度が落ちるという問題があります。これは、溶着が生じると、切削刃に構成刃先と呼ばれる刃先を形成するためで、この構成刃先により本来の加工精度を出せなくなります。この溶着が発生すると、微小な切削刃であるネジ切りタップや細い刃物が折れて加工品の中に埋まってしまうこともあり、品質低下の大きな要因です。

溶着の対処法
このような溶着を防ぐための対処法は、大きく分けて、「エアブローによる切粉の排除」と「加工時に切削油を使用する」方法があります。「エアブローによる切粉の排除」は、切削刃にエアーを吹き付け、加工により発生した切粉をエアブローでこまめに取り除いて溶着を防止する方法です。「加工時に切削油を使用する」方法は、加工時に切削油を使用して、溶着のリスクを減少させる方法です。

2. アルミ切削加工のその他の問題

アルミは切削加工に向いており、長時間連続で加工できるメリットも有します。しかし、その一方で、アルミ切削加工には、アルミの特性由来の以下のような問題も生じます。

アルミの切粉の長尺化による問題
アルミは長時間の連続切削が可能な素材ですが、長時間の切削加工中に発生する切粉が切れにくく長尺化することがあります。この切粉が運転中の切削機に巻き込まれて絡まると、切削機の故障や運転中断が起こることは大きな問題です。

アルミ合金の軟質特性による問題
アルミ切削加工に使用されるアルミニウム合金は基本的に軟質な材料であるため、切削加工のためのチャッキングで変形が生じてしまうこともあり、品質低下が問題となっています。軽量化を目的とした部材では、薄肉や長尺のものも多くさらに変形しやすいため注意が必要です。

なお、切削加工の際のチャッキングの固定治具は、硬質な鉄鋼製であり、軟質なアルミニウム合金の接触部分が傷付き、品質を損なうことも問題です。また、切削加工時の切粉が、製品に接触して表面に傷がつくことがあり、外観が特に重視される部品においては、アルミ切削加工後にショットブラスト処理など表面処理加工を実施する場合もあります。

加工変質層の生成による問題
アルミ合金は、軟質で塑性加工しやすいため、切削面の表層部分に内部と性質が異なる加工変質層が生成しやすい性質があります。この変質層では、硬度が増す、残留応力が発生するなどの特性の変化が生じている場合もあり、後工程の切削加工の条件の再検討が必要で、作業効率が落ちることが問題です。

切削油の多量使用による問題
アルミ切削加工の際には切削油を使用しますが、この切削油の量が少ないと、切削表面のむしり取りが発生し易くなるため、多量の切削油が必要です。多量の切削油を使用することから、飛散防止設備の初期コストや交換頻度の増加によるランニングコストの増加が問題となっています。

参考文献
https://www.metal-speed.com/onepoint/aluminum-feature/
http://aluminum-precision-machining.com/blog/1/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%886/
https://www.taiyoparts.co.jp/blog/2394/
https://www.metal-speed.com/onepoint/aluminum-feature/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jilm1951/45/7/45_7_415/_pdf

アルゴンガス

アルゴンガスとは

アルゴンガス

元素番号18番。記号はAr。

語源はギリシャ語の「怠け者」を意味し、非反応性の特徴を指しています。

アルゴンは、不活性雰囲気を作る際に使用されます。チタンや他の反応性元素の製造にもこのように使用されています。また、溶接部を保護するために溶接工によって使用され、フィラメントを腐食させる酸素を止めるために白熱電球にも使用されています。

アルゴンは希ガスの中で最も多く(空気中では0.93%v/v)存在するため、酸素との共存が問題となります。

アルゴンガスの使用用途

アルゴンは反応性の非常に低い不活性ガスであることから、半導体や鉄鋼において酸素と反応しないようにするための不活性雰囲気を提供します。アーク溶接では溶融した金属との反応を防ぐためにアルゴンガスが使用されます。

蛍光管や低エネルギー電球にもアルゴンが使用されています。蛍光灯には微量の水銀とアルゴンが封入されており、アルゴンはフィラメントの放電を補助する役割があります。フィラメントの寿命を長くするためにアルゴンの反応性の低さが利用されています。

食品においても、ワインの封入ガスとしても使われます。これは酸化を防ぐだけでなく、空気より重いアルゴンを使うことで効果的にワイン瓶から酸素を洗い流すことができるためです。

また、アルゴンは空気や窒素と比較して熱伝導率が低い特性があります。このため、二重ガラスの窓は、窓ガラスの隙間を埋めるためにアルゴンを使用しています。

このように、アルゴンは特にその反応性の低さと最も存在量の多い希ガスであることから様々な産業分野で用いられています。

アルゴンガスの性質

アルゴンは無色無臭のガスで、元素周期表の18族に属する希ガスの一種です。18族元素にはアルゴンのほかにヘリウム、ネオン、クリプトンキセノン、ラドンがあります。これらの元素はすべて大気中で気体の状態で存在します。

希ガスの最大の特徴は、非常に安定した電子配置のため反応性が極めて低い不活性ガスであることです(ただし、希ガスでも特定の条件下では反応させることができます)。
不活性ガスは、試料と空気中の酸素や水分との酸化反応や加水分解反応で起こる劣化を促進させる化学反応を避けるために使用されます。

特に精製されたアルゴンや窒素ガスは、天然の豊富さ(空気中のN2が78.3%、Arが1%)とコストの低さから、不活性ガスとして最も一般的に使用されています。特にアルゴンは窒素より高価である一方で、不活性度が窒素よりも低く、窒素と反応してしまう材料や環境ではアルゴンが適しています。
アルゴンは酸素とほぼ同じ溶解度を持ち、水には窒素の2.5倍の溶解度を持っています。

アルゴンは空気よりも熱の伝導率が低いため、ガラスとガラスの間の隙間にアルゴンを入れることで、より良い断熱効果が得られます。

アルゴンガスのその他情報

1. アルゴンガスの危険性

アルゴンガスは、通常使用する場合、危険性の低い物質といえます。アルゴンは空気中に約1%含まれており、私たちも呼吸によって酸素や窒素と一緒に吸入しています。アルゴン自体に毒性はなく、低濃度であれば、吸入しても影響はありません。また、アルゴンは不活性ガス(不燃性)なので、通常の環境で他の物質と反応することや火災につながることはありません。

一方、高濃度で吸入すると窒息する危険性があるので、高濃度になる環境は避ける必要があります。
ボンベに充填された状態で取り扱うことが多いので、ボンベからの漏洩によって、室内のガス濃度が高濃度になる危険性があります。その際はすぐに漏洩元を止めること、室内の換気を充分に行うことで改善することができます。また、液化アルゴンを取り扱う場合、アルゴンが気化する際の気化熱よりボンベ自体が非常に冷たくなるので、素手で触れると凍傷などの危険性があります。その際は、保護具を使用することで安全に取り扱うことができます。

2. アルゴンガスの精製方法

空気中のアルゴンを分離することでボンベガス用の高純度アルゴンが生成されます。その方法として「深冷空気分離法」が用いられています。この方法はまず空気中から水分や二酸化炭素を前処理で取り除いた後、精製した空気を‐170~‐190℃の極低温まで冷却することで、蒸気圧の違い(すなわち沸点の違い)を利用して空気中の気体を分離する方法です。

アルゴンガスの精製方法

図1. アルゴンガスの精製方法

ちなみに、窒素の沸点は-195.8℃、酸素は-183.0℃、アルゴンが-185.7℃です。この方法により、空気から酸素、窒素、アルゴンをそれぞれ分離精製しています。

3. アルゴンガスのボンベ

アルゴンガスは通常、ボンベに充填された状態で販売されています。ボンベの種類としては、一般容器、極低温容器などがあります。アルゴンガスの製造や販売については、高圧ガス関連の資格が必要になりますが、ガスボンベの使用については特に資格は必要ありません。

一般容器では、アルゴンは気体状態で14.7MPaもの高圧で充填されています。ボンベの大きさとしては、アルゴンの充填量で7000L、1500L、500Lなどがあります。7000Lのボンベで約60kgの重量があるので、持ち運びや運搬には注意が必要です。

また、使用目的によっては非常に高純度なアルゴンガスが必要になることがあるが、アルゴンガスは99.9999%(シックスナイン)までの純度のボンベガスが売られています。

極低温容器では、アルゴンは液体状態で充填されています。一般容器よりも充填されているアルゴンの量が多いので、大量に消費する場合に適しています。また、ボンベを交換する頻度が減少するので、コストを抑えることができます。ボンベの大きさとしては、127000Lや360000Lのものがあります。かなりの重量があるため、持ち運びや運搬には販売業者や専門の業者への依頼が必要になります。

アプライアンスサーバ

アプライアンスサーバとは

アプライアンスサーバとは、ネットワーク上で動作する特定のアプリケーションのために最適化されたサーバであり、ハードウェアとソフトウェアが一体化された製品です。

運用管理の簡素化やセキュリティ強化、高いパフォーマンスを実現するために設計されています。また、企業や組織がネットワーク上で動作するアプリケーションを安定して提供するために、重要な役割を果たしています。

アプライアンスサーバの使用用途

アブライアンスサーバは、主に以下のような用途に使用されます。

1. ネットワークセキュリティ

アブライアンスサーバは、ネットワークセキュリティに関連する機能を提供します。ファイアウォール、VPN、脅威検出、侵入防止などの機能を提供し、企業が自社の情報を保護するために使用できます。

2. データストレージ

アブライアンスサーバは、データのストレージに使用できます。このタイプのサーバには、大量のデータを保存するための高速なストレージシステムが組み込まれており、ビジネスが大量のデータを処理する必要がある場合に最適です。

3. コラボレーション

アブライアンスサーバは、ビジネスが異なる場所にいる従業員やパートナーとコラボレーションするために使用できます。このタイプのサーバには、ファイル共有、電子メール、カレンダーなどの機能があり、チームメンバーが生産性を高めるために必要なすべてのツールを提供します。

アプライアンスサーバの原理

アプライアンスサーバは、専用のハードウェアと最適化されたソフトウェアで構成されています。

1. ハードウェア

アプリケーションの要件に合わせてCPU、メモリ、ストレージなどを最適化しており、高速で安定した処理を実現します。また、多くの場合、冗長性の確保やスケーラビリティの拡張性なども考慮されています。

2. ソフトウェア

アプリケーションや機能に特化した機能を提供するために最適化されています。例えば、ファイアウォールアプライアンスサーバーは、外部からの攻撃を検知し、遮断するための機能を提供します。また、Webサーバーアプライアンスは、高速で安定したWebサイトの提供を実現するために、負荷分散やキャッシュ機能を備えています。

アプライアンスサーバの選び方

アプライアンスサーバを選ぶ際は、以下のポイントを確認することが大切です。

1. アプリケーションの要件

アプライアンスサーバを選ぶ前に、利用するアプリケーションの要件を確認します。アプリケーションが必要とする機能や性能要件を把握し、その要件に適したアプライアンスサーバを選ぶことが重要です。

2. ハードウェアのスペック

アプライアンスサーバのハードウェアスペックは、運用に必要な性能に直結します。CPUやメモリ、ストレージなどのスペックを比較し、アプリケーションの要件に応じた最適なスペックを選びます。

3. サポート体制

アプライアンスサーバは、ハードウェアとソフトウェアが一体化されているため、トラブルが発生した場合には専門的な知識が必要となります。選んだアプライアンスサーバのサポート体制が充実しているか、保守契約の内容を確認します。

4. コスト

アプライアンスサーバは、専用のハードウェアとソフトウェアが一体化されているため、通常のサーバと比較して高価な場合があります。適切なコストパフォーマンスを考慮し、複数のアプライアンスサーバを比較します。

アプライアンスサーバのその他情報

アプライアンスサーバの運用

アプライアンスサーバは、専用の管理インターフェースを備えており、アプリケーションのインストールや設定、メンテナンスを容易に行えます。また、設定ミスや悪意のある攻撃からシステムを保護するために、OSの機能を最小限に制限したり、ソフトウェア更新を自動化したりするなどのセキュリティ対策が施されています。

アプライアンスサーバは、特定のアプリケーションや機能に特化したハードウェアとソフトウェアが最適化されており、高速で安定したサービスを提供するために設計されています。そのため、適切なアプライアンスサーバの選択や設定が必要不可欠です。

参考文献
https://japan.zdnet.com/article/20145587/

アバランシェフォトダイオード

アバランシェフォトダイオードとは

アバランシェフォトダイオードとは、APDとも呼ばれる光エネルギーを電気エネルギーに変換できるフォトダイオード (PD) の1つです。

光の検知や具体的な強弱などの検出に用いられます。超高速で優れた応答性が特徴です。また、電子なだれを発生させてアバランシェ増幅を引き起こすことが可能です。

強い逆電圧を印加することで増幅機能を持つ特性があり、微弱な光信号も検出できます。

アバランシェフォトダイオードの使用用途

アバランシェフォトダイオードは、光の強度測定や光信号検出に使用されます。具体的には、高感度な光検出が求められる場面です。

PDは光量や光の強弱を測定したり光信号を検出したりする場合に利用され、私たちが使う様々な製品に組み込まれています。例えば、リモコンには赤外線光線を受信できる装置として組み込まれています。

APDも同様に光の検出に利用されますが、一般的なPDでは検出できないほど弱い光でもAPDならば検出可能です。これは印加された高い逆電圧によりアバランシェ増幅が起こり、微弱な光でも大きな変化になって検出できるからです。

アバランシェフォトダイオードの原理

アバランシェフォトダイオードは受光した光を半導体に衝突させることで、発生する電子を増幅する仕組みを持ちます。電圧を付加させることで発生した電子のエネルギーを増大させており、この原理から微弱な光も検出可能です。

「アバランシェ」という言葉ですが、日本語では「なだれ」という意味があります。その名の通り、APDは高い逆電圧を印加させることで電子なだれを引き起こします。

電子なだれとは1つの電子の衝突が原因となって、次々に電子が生み出されていく現象のことです。半導体の原子に衝突した光子が電子を発生させ、この電子は印加された高電圧によって加速されます。

そして、加速された電子は高速で他の原子とぶつかり、次々と電子を生み出していきます。この現象は「なだれ」のように電子を発生させて増幅することから、「アバランシェ増幅」と言います。

アバランシェフォトダイオードの構造

アバランシェフォトダイオードは、半導体のp型とn型が結合したpn接合をしていますが、キャリア濃度が異なるp層が存在します。通常のpn接合部分に、キャリア濃度の高いp層とキャリア濃度の低いp層が重なっている構造です。

キャリア濃度の低いp層は、光を吸収して正孔を発生させます。pn接合のp層は、発生した電子を高電圧によって加速して電子なだれを発生させることで、アバランシェ増幅を引き起こしています。

検出した光が弱いと発生する電子と正孔も少ないですが、この増幅によって何倍もの電子を発生させることが可能です。そのため、微弱な光の検出に役立ちます。

アバランシェフォトダイオードの特徴

アバランシェフォトダイオードでは、以下の性質が特徴として挙げられます。

  • 高い受光感度
  • 高速応答
  • 高い信頼性

上記のようなハイクオリティな機能を提供する一方で、使用する際に高い逆電圧を必要とすることやアバランシェ増倍の効果が温度に依存して変化してしまうといった短所もあります。

アバランシェフォトダイオードのその他情報

アバランシェフォトダイオードの開発

アバランシェフォトダイオードは、高い逆電圧が必要なことや増倍率が温度依存性なことが欠点です。そのため、より簡単にデバイスが使用できるように、低い逆電圧で使用が可能なアバランシェフォトダイオードの研究開発が行われています。

その他にも、表面実装型のCSP (Chip Size Package) アバランシェフォトダイオード、外乱光の影響を阻害するアバランシェフォトダイオード、増倍率の均一性が保たれた大面積アバランシェフォトダイオードなど様々なタイプが研究開発されています。

参考文献
https://www.cybernet.co.jp/optical/course/word/a09.html
http://yoshikawa-lab.imr.tohoku.ac.jp/APD/apd-j.html

アクリル樹脂塗料

アクリル樹脂塗料とは

アクリル樹脂塗料

アクリル樹脂塗料とは、1950年頃に誕生したアクリル樹脂を主成分とする塗料です。アクリル樹脂は、アクリル酸メタクリル酸、およびこれらのエステルや、スチレンなどのモノマーを共重合させたものですが、その分子設計の自由度の高さから塗料以外にも接着剤、有機ガラスなど幅広い用途に利用されています。

アクリル樹脂を構成する代表的モノマー

図1. アクリル樹脂を構成する代表的モノマー

アクリル樹脂塗料は販売開始当初、発色とツヤの良さから一気に普及しましたが、現在は、より高性能なウレタン樹脂塗料やアクリルシリコン樹脂塗料が主流になっています。揮発性有機化合物 (VOC) の問題で、溶剤系から水系への代替が進んでいます。

アクリル樹脂塗料の使用用途

アクリル樹脂塗料の主な用途として、外壁塗装やDIY等が挙げられます。ウレタン樹脂塗料などの普及により、減少してきていますが、建築外装・内装のコンクリート面、モルタル面、瓦、PCコンクリート面等の上塗り塗装に広く使用されています。

また、アクリル樹脂塗料は、色の種類が豊富なため、家具類やDIYにも使われることが多いです。アクリル樹脂はモノマーの種類や重合度の調整で、塗膜を柔軟性のあるものから硬いものまで、用途に応じて物性を変えられるため、幅広い使用用途があります。

アクリル樹脂塗料の種類

アクリル樹脂塗料の塗膜形成機構の違い

図2. アクリル樹脂塗料の塗膜形成機構の違い

アクリル樹脂塗料には、油性の溶剤型アクリル塗料と、水性のアクリルエマルジョン塗料の2種類があります。

1. 溶剤型アクリル塗料

溶剤型アクリル塗料は、アクリル樹脂を溶剤であるシンナーに溶解させた塗料で、塗膜形成が分子レベルで起こるため、耐候性、耐水性、耐アルカリ性、耐油性に優れた機能を持ちます。溶剤型アクリル塗料の一番のデメリットは、シンナーの臭いや有害物質です。

主な使用目的が建築であるため、周囲への配慮が必要です。また、周囲だけではなく、取り扱う作業員にも防護措置が必要とされています。

2. アクリルエマルジョン塗料

アクリルエマルジョン塗料は、水性アクリル樹脂塗料とも呼ばれ、アクリル樹脂を水中で乳化、分散させた塗料です。溶剤型アクリル塗料と同様、機能設計することが可能です。最近では、防腐剤、消泡剤、防カビ剤、防汚剤といった添加剤を含めることで、機能性を向上させた塗料が開発されています。

アクリルエマルジョン塗料は溶剤を使っていないため、臭いや有害物質による被害はほとんどありません。添加物による機能が増え続けたことにより、同じ建築用の使用でも採用されるのが多くなった塗料です。

アクリル樹脂塗料のその他情報

1. アクリル樹脂塗料のメリット・デメリット

各種塗料の特徴比較

表1. 各種塗料の特徴比較

アクリル樹脂塗料のメリットは価格が安い、発色・ツヤが良い、豊富な色、素人が扱いやすい、重ね塗りしやすい点が挙げられます。一方でデメリットは、紫外線に弱いため劣化が早いことです。需要が激減した最大要因が紫外線などに対する耐候性の弱さによるものです。

また、塗膜に柔軟性を持たせるために可塑剤を配合していますが、可塑剤が熱、紫外線によって徐々に減ってしまい、塗膜が硬くなり、ひび割れ、所謂クラックが起こります。アクリル樹脂塗料の耐用年数は5~8年と短いため、耐用年数の長いアクリルシリコン樹脂塗料が主流になってきています。

アクリルシリコン樹脂とは、分子内にシリコーン骨格を導入したアクリル系樹脂です。これにより、アクリル樹脂のデメリットを低減させています。そのため、アクリルシリコン樹脂塗料は、住宅外装向け塗料に使用される事が多いです。

2. アクリル樹脂塗料の製造工程

一般的に5つの工程を経て塗料は製造されています。溶剤型アクリル塗料よりもアクリルエマルジョン塗料の方が、分散させる粒子が多くなるため、分散剤等が必要となり、アクリルエマルジョン系のほうが添加剤が多いです。この他、塗膜強度を上げるために、原料として反応性の架橋剤を添加する事もあります。

  • 前練
    樹脂や顔料、界面活性剤、溶剤を混合させ、粒子分散液 (ミルベース) を生成します。
  • 分散
    生成したミルベースを均一になるまで分散機で分散させます。
  • 調合
    分散したミルベースに塗料の性能を向上させるための添加剤などを加えます。
  • ろ過
    異物を除去するため、ろ過を行い塗料が完成します。
  • 着色
    完成した塗料に、着色塗料を混合して色付けを行います。着色後に各容器に充填し、出荷されます。

3. アクリル樹脂焼付塗装の特徴

アクリル樹脂焼付塗装とは、アクリル樹脂塗料を対象物に塗装した後、対象物を加熱することでアクリル樹脂を熱硬化させて塗膜の強度を飛躍的に向上させる塗装方法です。アクリル樹脂の場合は、140℃から180℃の高温で20分から30分ほどの加熱乾燥が必要です。焼付塗装することによって、硬度が高くなり、キズが付きにくい、塗膜の密着性が向上します。

焼付塗装は耐候性が高くなるため、アクリル樹脂の弱点であった紫外線による劣化、退色、チョーキングの発生が改善されます。しかし、丈夫な塗装であるため柔軟性に弱点があり、ひび割れが発生する事がデメリットです。そのため、アクリル樹脂焼付塗装は屋外製品に向いています。

その他、屋内・屋外の家具や壁面塗装だけでなく、その特製から小さな部品の塗装にも向いています。金属製の工業製品から装飾品まで幅広く扱われており、身近なものだと、耐候性の求められる自動販売機やカラー塗料が必要なアクセサリー等です。

焼付塗装することにより、アクリル樹脂本来の性能以上に機能を高められますが、高温かつ長時間の焼付が必要なため、塗装対象物の耐熱温度や、サイズによる制約がかかってきます。

参考文献
https://www.ueda-kk.com/ja/knowledge/index.html
https://www.dnt.co.jp/products/kind/6.html
https://gaiheki-tatsujin.com/13291
https://www.j-proof.co.jp/dictionary/614/
https://www.dnt.co.jp/products/kind/6.html
https://ichi-you.jp

アキュムレータ

アキュムレータとは

アキュムレータアキュムレータ(英語:hydraulic accumulator)とは、日本語で蓄圧器という意味を持ち、流体の圧力エネルギーを他の高圧流体エネルギーに変換して蓄えておく装置のことです。主に油圧系や蒸気系の流体機器に使われます。

英語のaccumulateが「蓄える」や「積み重ねる」という意味を持っていることから、何を蓄えたり積み重ねるかによって技術分野ごとに異なった装置があります。例えば、コンピュータ分野では演算結果を一時保存したり、そのまま次の演算に使う累算器、電力分野では蓄電池や蓄電装置、風力発電では風車と発電機の間で油を循環させバランスをとるシステムなどです。

油圧系や蒸気系では、油や蒸気の圧力エネルギーを窒素ガスや蒸気の圧力エネルギーとして蓄え、必要な時に気体を膨張させてエネルギーを放出させます。日本では、高圧ガス保安法・労働安全衛生法による規制を受ける圧力容器です。

アキュムレータの使用用途

アキュムレータは、油圧システムや蒸気ボイラなどに多く使われます。油圧系では、ポンプを出た高圧回路にアキュムレータを設け、運転中の高い油圧により、アキュムレータ内に封入されている窒素ガスを圧縮させます。そして油圧が下がった場合に窒素ガスの力により、油圧を上げて圧力を維持する働きをします。

ボイラ装置では、スチームアキュムレータにより、蒸気が余った時、蒸気の熱量を高温高圧の飽和蒸気として蓄え、必要時に圧力を下げた蒸気を送出します。また、蒸気使用量の時間的変動とボイラの蒸気発生とのアンバランスを吸収するため、ボイラは効率の良い安定運転が可能となります。

水ポンプでもアキュムレータを使用することにより、停止時などの急激な圧力変動をやわらげて、ウォーターハンマーを防止します。アキュムレータの容器に蓄えられた蓄圧気体 のエネルギーを緊急時の補助動力源にすることが主目的です。さらに、衝撃圧力の吸収と緩衝、管内圧力上昇の緩衝、システムの無駄な消費電力の低減等にも効果があります。

アキュムレータの原理

気体式蓄圧器では、主に窒素を使い、これを加圧収縮させたり膨張させることでエネルギーの出し入れを行います。油圧系の場合、ポンプを出た高圧回路にアキュムレータを設置します。アキュムレータの内部にはプラダと呼ばれる袋があり、油側と気体側とを隔離しています。プラダに窒素ガスを封入し、油圧ポンプを駆動して油圧が窒素ガスの圧力以上に上がると、窒素ガスが圧縮されます。

油圧系の圧力が下がったり、ポンプが停止した時、窒素ガスの圧力エネルギーによりプラダが膨張して油圧を維持します。また、油圧の脈動を小さくする効果もあります。容器の内部で窒素ガスを封入するブラダは、ゴム系の材料で作られ伸縮します。容器は腐食の恐れがないカーボンスチール、ステンレススチール、アルミ、合成材などが使われます。

容器の容量は0.5〜450ℓ、許容最大圧は約990気圧程度です。プラダ方式のアキュムレータは、エネルギー放出が速く、必要に応じて速いサイクルでエネルギー蓄積と放出ができる特徴があります。また、装置をコンパクトにすることが可能で、メンテナンスが容易です。

アキュームレータのその他情報

1. アキュムレータのガス

アキュムレータでエネルギーを蓄える気体には、多くは窒素ガスが使用されます。窒素ガスは、不燃性・不活性のガスであるため、アキュムレータに使用している金属の劣化を抑えることができます。また価格も安価で、爆発の恐れがないこともメリットです。

動作を繰り返すと窒素ガスの圧力は次第に減少していくため、定期的に圧力が低下していないかの点検が必要です。アキュムレータをサスペンションに使用している場合であれば、ガス圧力の低下によって路面からのショックを吸収することができず、乗り心地が悪くなります。圧力が低下している場合は、窒素ガスを補給します。

2. アキュムレータを使用した車のシステム

アキュムレータは自動車のサスペンションやブレーキに使用されています。特殊車両では車体重量が大きく、多軸車などはスプリングで衝撃を吸収しきれない場合があるので、ガススプリングの役割を果たすアキュムレータが使用されます。またアキュムレータを用いた油圧サスペンションであれば、車体の上げ下げも自在に行うことが可能です。

ブレーキにアキュムレータを使用するのは、ブレーキ時のエネルギー回収を行うためです。ハイブリッド車では、モーターによってエネルギー回収を行うとき、運転手が求めているブレーキの強さと相違が生まれてしまいます。この違和感を解消するため、アキュムレータがモーターの制動力を適切に補助し、最適なブレーキ力を確保しています。

参考文献
bladder-accumulator.html
http://www15.wind.jp/~Glauben_leben/Buturi/Netu/Netubase4.htm
https://www.nacol.co.jp/qa/index.html
https://www.nacol.co.jp/products/images/caj0804/hpj0804pall.pdf
https://xtech.nikkei.com/dm/article/FEATURE/20100208/180034/

においセンサー

においセンサーとは

においセンサー

においセンサーとは、においの強弱を測定し、数値化して表す測定器です。

においの評価は、従来、官能検査のパネリストや臭気判定士などの熟練者によりおこなわれていました。においセンサーは、この評価を人間に代わって行い、数値化して表示します。

においセンサーの使用用途

においセンサーは、主に、「食品・化粧品の研究開発ならびに品質管理」、「環境の悪臭計測」、「ガス・火災などの異常監視」の分野で使用されています。

1. 食品・化粧品の研究開発ならびに品質管理

食品・化粧品の研究開発ならびに品質管理の分野では、個々のガス成分ではなく、対象物が発する総合的なにおいを測定しています。具体的な用途は、原料の受入検査、製品の出荷検査、食品の鮮度測定などです。

2. 環境の悪臭計測

環境の悪臭計測の分野では、臭気の強度が問題となる時に用いられています。具体的な用途は、作業環境の管理や脱臭装置の効果測定などです。

3. ガス・火災などの異常監視

ガス・火災などの異常監視の分野では、安全管理の目的で使用されています。この場合、人間の嗅覚との対応は不要です。

このほか、医療診断を目的とし、がん患者に特有である呼気成分を感知して病気の有無を検査するセンサーの開発も行われています。

においセンサーの原理

においセンサーの主な方式は、「半導体式」と「水晶振動子式」の2種類です。順番に解説します。

1. 半導体式においセンサー

半導体式においセンサーは、ガスセンサーとしても以前から用いられています。半導体表面へにおい分子が吸着すると、表面反応が起こり、半導体の抵抗値が変化します。

この抵抗値の変化によりにおいを検知する仕組みです。なお、半導体式においセンサーには、「酸化物半導体式」と「有機半導体式」があります。

有機半導体式では、ポリピロールやポリアセチレンが半導体膜として使用されています。有機半導体式では、有機化合物よりなるにおいの識別が可能です。しかし、高価であることがデメリットです。

2. 水晶振動子式においセンサー

水晶振動子式においセンサーは、振動子の表面へ脂質膜と呼ばれる人間の嗅細胞を模した感応膜を貼り付けた構造です。におい分子が感応膜に吸着すると、質量負荷効果により振動子の共振周波数が低下します。

この低下量と吸着したにおい物質の質量とが比例する仕組みを利用し、低下量を計測して、におい物質の濃度を測定する仕組みです。特に有機系のにおい物質を得意とし、ウイスキーや日本酒、コーヒー、香水などの識別が可能です。

3. FETバイオセンサー

FETバイオセンサーは、バイオ分子とトランジスタ技術を組み合わせたセンサーです。通常のFETを基盤にしていますが、ゲート部分にバイオレセプターが付着しています。バイオレセプターと対象物質で結合が発生すると、FETのゲート電荷が変化して検知する仕組みです。

微量の物質でも検出できる高い感度を持っています。また、バイオレセプターが選択的に反応するため、特定物質だけを検出することが可能です。

4. 膜型表面応力センサー

膜型表面圧力センサーとは、特殊な薄膜を利用して化学物質の量を検知するセンサーです。薄膜に化学物質が接触するとこれらを捕集し、膜自体が歪みます。この歪みを検知することで、化学物質との接触を検知する仕組みです。医療への応用などを期待されています。

においセンサーのその他情報

1. スマートフォン装着式においセンサー

2019年、スマートフォンに装着するタイプの小型においセンサーが開発されました。においセンサーとスマートフォンをUSB Type-Cで接続して使用する仕組みです。主にガス漏れ、食品などの鮮度管理、体臭、アルコールチェックなどの使用用途が想定されています。

このにおいセンサーでは、PZT (チタン酸ジルコン酸鉛) の圧電薄膜に感応膜を塗布した検出素子を使用してにおいを検出するのが特徴です。各検出素子が異なるにおいを検出できるよう、検出素子ごとに感応膜を変えた20種類の検出素子を用意し、これらを1枚のセンサーチップ上に搭載しています。

そして、電圧をかけて共振させた感応膜に、におい分子を付着させて共振周波数が変化する現象を利用して数値データを取得する仕組みです。この数値データをにおいの種類ごとのパターンと照合してにおいを識別しています。

スマートフォンに接続すれば、スマートフォンが分析基盤の役割を果たすのも特徴で、検知したにおいの種類と強さを解析し、スマートフォンに分析結果が表示されます。

2. においセンサーのにおいの数値化

「におい」とは、「匂い」と「臭い」、「香る」と「薫る」など、明確な基準もなければ、単位もありません。においは、人が嗅覚で感じ取ったときの強さや不快感をもとに測定され、表現されてきました。においの測定法としては「嗅覚測定法」が使用され、人が嗅覚で感じ取る強さや不快感を表現しています。

嗅覚測定法は、「臭気強度表示法」「快・不快度表示法」「臭気指数表示法」「周期頻度表示法」の4種類に分類されており、においを段階式に数値化して表しています。この中の臭気指数表示法とは、臭気濃度と臭気指数を数値化したものです。

臭気濃度は、「無臭の清浄な空気で希釈した場合、無臭に至るまでに要した希釈倍数」と定義されます。臭気指数は、臭気濃度の常用対数を10倍した値です。この方式はにおいセンサーに組み込みやすいため、「臭気指数表示法」に沿った表現が採用されているにおいセンサーがあります。

参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/4-02-04.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/54/4/54_4_386/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrsm/8/1/8_1_7/_pdf/-char/ja
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/15/news078.html
https://www.new-cosmos.co.jp/product/smell/xp3293_mea.html

すべり軸受

すべり軸受とは

すべり軸受

すべり軸受(別名:平軸受、スライドベアリング)とは、回転軸を支持し、より滑らかに回転することを助ける部品である軸受のうち、直接軸と面で接するもののことをいいます。構造が単純かつ小型で、高速回転や荷重への耐性にも優れています。

代表的な軸受のうち、他には転がり軸受とよばれる部品が存在しますが、こちらは軸受の内に玉やころと呼ばれる丸棒が備わっています。玉やころの転がりによって摩擦の抵抗を低減するという仕組みとなっています。

すべり軸受の使用用途

軸受は、車輪や歯車、タービンなどを取り付け、回転している軸を支持するために使用されます。

中でもすべり軸受は、自動車・船舶・機械などのエンジン用の軸受としてよく使われています。理由としては、玉やころを含む転がり軸受に比べて機械的接触が少ないため運転音が静かで、許容荷重が大きく、構造が簡単であることなどが挙げられます。また、潤滑や手入れを行うことで半永久的に使い続けることができる寿命の長さをも併せ持っています。

すべり軸受の原理

すべり軸受と軸の間には潤滑油による油膜が張られています。この潤滑油が、以下2種類の圧力を生じさせることによって軸を支えています。

  • くさび油膜圧力
    潤滑油が、回転している軸と軸受の間に生じるくさび型の隙間に連れ込まれることによって油膜圧力が生じ、軸の回転と荷重を支え、摩耗を防止しています。これをくさび油膜圧力といいます。
  • しぼり油膜圧力
    また、軸が半径方向に移動し、軸と軸受の間が急激に狭くなると、粘性により潤滑油が逃げ出すことができず、油の中に圧力が生じます。これをしぼり油膜圧力と言います。

潤滑には主にオイルが使用されますが、構造の簡素化を理由にグリースが用いられるものや、無潤滑な製品も存在しています。

すべり軸受には、潤滑剤が連れ込まれる隙間が狭くなるため熱が生じてしまいやすい分、焼きつかない材質で作ることが最も重要となります。またその中でも、摩擦や摩耗の少なさ、疲れ強さ、耐食性の高さなどと勘案しながら製品を選択する必要があります。

 

参考文献
https://www.jbia.or.jp
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/bearing_comparison/
https://www.sumico.co.jp/qa/qa_u_bg_j.html
https://www.jsa.or.jp/datas/media/10000/md_2554.pdf
http://www.jalos.jp/jalos/qa/articles/012-S34.htm

YAGレーザー

YAGレーザーとは

YAGレーザー

YAGレーザーとは、イットリウム (Yttrium)、アルミニウム(Aluminum)、ガーネット(Garnet)の結晶を使用した固体レーザーです。

YAGレーザーの原理

レーザー(LASER)とは、英語で””Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光の増幅)””の頭文字をとったものです。

まず、YAG結晶にフラッシュランプやレーザー半導体などを用いて外部からエネルギーを与えるます。すると、中の電子が下準位から上準位へと移り、励起状態となります。

励起状態になった電子は、しばらくすると基底状態へ戻ろうとし(遷移)、この際に光を放出します。放射された光はさらに励起状態にある他の電子にぶつかり、同様に遷移させることでさらに光が放出されます。これを誘導放出といいます。

YAG結晶にドープ(添加)される希土類元素によって、その波長および特徴が異なります。よく使われているYAGレーザーとして、ネオジム(Nd)をドープしたNd:YAGレーザー、エルビウム(Er)を添加したEr:YAGレーザーがあり、取り出したい波長によってドープする元素を選択します。

幅広く使用されているNd:YAGレーザーの基本波長は1064nmで、非線形光学結晶を通すと第二高調波の532nm、第三高調波の355nmの光を取り出すこともできます。

YAGレーザーの使用用途

YAGレーザーは研究分野、産業分野をはじめ、医療分野で広く使用されています。

産業分野では、微細加工からマーキング、トリミングをはじめ、金属の溶接・切断にも使用されています。なかでも、Nd:YAGレーザーとYb:YAGレーザーは溶接などにも対応できることから、多用されています。

医療分野では眼科での白内障治療や、美容皮膚科でのシミ・アザの除去、歯科での膿瘍切開・虫歯治療など幅広く使用されています。

YAGレーザーを使用する際の注意点

Er:YAGレーザーは波長2.94 μmの中赤外線で、組織への浸透性が低く、表面に吸収されるという安全性の高いレーザーです。しかしEr:YAGレーザーはミラーや金属に反射するものの、目には見えません。そのため、使用中はその場にいる人すべてにEr:YAGレーザー専用の防護用ゴーグルの着用が必要です。また電源のON/OFFは常に確認し、周囲に関係の無い人がいないことを十分に確認してから使用するようにします。

レーザー 波長

そしてレーザー照射する部位だけに意識を集中させないよう、常に周囲に配慮し、無関係な場所に照射してしまう事故は絶対に避けましょう。

参考文献
https://www.nuee.nagoya-u.ac.jp/labs/yoshidalab/equipments/NdYAG.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/basics/principle.jsp
http://www.obara.co.jp/jp/product/laser/yag.html