センサーコントローラ

センサーコントローラとは

センサーコントローラとは、センサに電流を流し、制御信号を出力する装置です。

直流用と交流用があり、トランジスタ出力とリレー出力があり、センサの信号を受けて信号を出力します。小型のセンサ等は、コントローラが内蔵されているものもあります。

センサ自体が多種多様なので、用途に合うコントローラを選択が必要です。パネルに表示させるパネルコントローラ等もあります。

センサーコントローラの使用用途

センサーコントローラは、光電センサやレーザーセンサ、流量センサなど、センサは多岐に渡り、それぞれのセンサをコントローラにつなぎ、制御しています。

電流や電圧、プラグの形状といった規格が合っていれば相互に互換性のあるコントローラが販売されており、最近では複数のセンサを1台のコントローラで制御できる製品が増えています。ただし、センサと同一のメーカーでないと動かない場合もあるので注意が必要です。

例えば、工場でのビンのキャップの有無をセンサで検知する際に、2つのセンサの入力信号をコントローラが受けて総合的に有無を判断して出力をオンかオフにしています。

センサーコントローラの原理

コントローラはセンサへの電源の供給はもちろん、センサの設置した場所が狭くても、離れた場所からセンサの値を確認し、制御できる機能を持っています。

また、センサの測定した値から、短時間でかつ十分な精度で制御できる高い情報処理能力が必要とされています。電流、回転数、位置といった制御変数とシステム精度の選定が重要です。

なお、センサーコントローラには接点がリレー接点、トランジスタ接点の2種類があり、用途に応じて適切な製品を選択することが大切です。

1. リレー出力

リレー出力とは機械的な接点機構を持っており、直流と交流どちらにも対応できる出力方式のことです。機械的な接点でスイッチのON/OFFを行っているため、接点に寿命を持つ点や後述するトランジスタ出力方式と比較して接点開閉の応答が遅い点がデメリットとして挙げられます。

一方で、出力ユニットに複数端子がある場合は直流と交流どちらにも対応できるためAC200VとDC24V等異なる回路電圧の負荷が接続可能です。

2. トランジスタ出力

トランジスタ出力とは、機械的な接点が無い無接点出力でDC12V〜24Vの負荷に対応可能な出力タイプのことです。対応可能な電流値が1点あたり0.5Aとリレー出力タイプの2Aと比較して小さい点はデメリットと言えます。しかし、械的な接点がないため長寿命であり、接点開閉の応答性はリレータイプと比較して高速です。

対応は直流負荷のみですが、リレーを介することで交流負荷を駆動することも可能になります。基本的には外部から入力された設定信号とセンサから送られる信号を比較して信号が一致するように制御し、動作を安定させています。

センサーコントローラのその他情報

1. センサーコントローラの使い方

センサーコントローラは光電センサーなどでよく使用されますが、最大の利点はセンサー部分と出力部分を絶縁できる点です。その特徴から、センサーコントローラは以下のような使い方がされます。

まず、センサーの種類を変更したときに使います。以前はAC200Vの接点切替を行う光電センサーも多く販売されていましたが、現在計装用電源はDC24Vが主流です。最新の型にする際に、電源がAC200Vでは使用できない場合はセンサーコントローラで電圧をDC24Vでセンサーに供給しつつ、AC200Vのリレー接点で電気信号を送ることができます。

次に、接点を増やす場合などに用います。一般に現場のセンサーは1接点しかもっていない場合が多いです。センサーコントローラを使用すれば、現場と制御盤の電源を絶縁しつつ複数の接点出力を実現できます。リレーで代用可能ですが、応答速度はセンサーコントローラの方が高いです。

また、センサーコントローラは多機能である場合が多いです。センサーのチャタリング防止としてタイマーを設ける場合がありますが、タイマーを内蔵したコントローラを使用すれば省スペース化が可能です。他にも、種類によってはセンサーの感度を変更することができるものもあります。

2. センサーコントローラのI/Oコネクタ

センサーコントローラとセンサーをI/Oコネクタで接続する場合があります。基本的にセンサーはリード線が出ているだけであり、圧着接続したり、端子上げしたりして使用します。圧着ペンチを使用し、電気作業を行う必要があるため、取り換えるには教育や訓練が必要です。

そこで、センサーコントローラへの配線にI/Oコネクタを使用することで、センサーをワンタッチで接続することができ、訓練が不要となります。設置工事の省工数化が可能となるだけでなく、保守も容易につながります。

参考文献
https://maxonjapan.com/book/_055/
http://www.fcon-inc.jp/MFC/Principle/Principle.html

高周波ケーブル

高周波ケーブルとは

高周波ケーブル

高周波ケーブルとは、高周波を利用した機器の間の接続に使うケーブルです。

通常は、内部導体の周りに包むように絶縁体が配され、これを囲むように同心円状に外部導体が配された構造です。さらに、シースという被覆がされています。

高周波ケーブルの使用用途

高周波ケーブルは、高周波を利用する機器の接続に利用されるため、高周波帯の電波を発信するテレビやインターネットの発信機器とそのモジュール間で多く用いられています。また、電子レンジやプラズマ発生装置などの装置の本体と電源間の接続もよ用途の1つです。

半導体分野などの精密工学分野では、プラズマ反応を多く利用しています。プラズマ発生装置と共に高周波ケーブルは、現代社会にとって不可欠な存在です。

高周波ケーブルの原理

高周波ケーブルは、内部導体と呼ばれる線が中心を貫き、この内部導体の周りに包むように絶縁体が配され、さらにこれを囲むように同心円状に外部導体が配された構造です。さらに、シースという被覆がされています。すなわち、内部導体により高周波信号が伝達されています。

高周波信号の伝送効率は内部導体の外径と外部導体の内径の比と、導体の間に挿入された絶縁体の誘電率によって決まります。そのため、高周波ケーブルの特性は外からの見た目ではなく、内部構造によって決まることに留意しなければなりません。

また、高周波ケーブルには、高周波信号を発生電源から各モジュールへ安定的にかつ効率的に伝送することが求められるとともに、外部ノイズからの影響を極力抑えることも必要です。このノイズ対策では、外部導体がシールドとして機能しています。

高周波信号を効率よく伝送するには、内部導体の外径と外部導体の内径の比がケーブル全領域にわたって同心円状に維持されることが必要です。ケーブルを屈曲すると、内部導体の外径と外部導体の内径の比が崩れてしまう可能性があります。そこで、高周波ケーブルでは限界曲げ半径が指定され、内部導体の外径と外部導体の内径の比が維持されるようにしています。

高周波ケーブルの種類

高周波信号の伝送には、一般的に高周波用同軸ケーブルが多く用いられます。高周波ケーブルの使用用途として、代表的なアンテナで受信した信号をテレビやレコーダーに伝送するケースでは、特性インピーダンスが75Ωの高周波用同軸ケーブルが主流です。

高周波用同軸ケーブルは品番で使用が分かるようになっており、例えば下記のように「5D-2V」や「S7C-FB」などの品番が付いています。これらの数字や文字がサイズや素材を表しており、上記の2種類は以下の通りです。

1. 5D-2V

  • 5: 外部導体の概略外径5mm
  • D: 特性インピーダンス50Ω
  • 2: 絶縁体がPE (半透明)
  • V: 外部導体が一重導体編組

2. S-7C-FB

  • S: 衛星放送対応 Satelliteの頭文字 (DIGITALとの表記もある)
  • 7: 外部導体の概略外径7mm
  • C: 特性インピーダンス 75Ω
  • F: 絶縁体が発砲PE (白)
  • B: アルミ箔テープ付編組線

高周波用同軸ケーブルでは、構造上、ケーブルが太くなると内部導体と外部導体間の間隔が大きくなります。そして、ある周波数を超えると特性インピーダンスが変わる、損失が増えてしまう現象が生じます。この周波数は限界周波数と呼ばれ、この周波数よりも低い周波数で使用しなければなりません。

ケーブルが太ければ太いほど限界周波数が小さくなるため、数GHzを超える超高周波の伝送には細いケーブルで同軸構造の外部導体が銅管とされているセミリジッドケーブルが使用されます。

高周波ケーブルのその他情報

高周波ケーブルのコネクタ

高周波用同軸ケーブルには各種のコネクタが用意されているため、用途に応じて最適なものを選定することが大切です。求められる周波数や電力をメインに、インピーダンスや伝送損失および配線形態などを考慮してどの種類を使用するかが決まります。

これに合わせたコネクタを選定することで、接続部のインピーダンスの乱れや、同軸の外部導体の編組の崩れによる不要な反射などを防止できます。また、接続先の形状や抜き差しが多いかなどの接続方法も考慮して、最適なコネクタを選定することが重要です。

参考文献
https://www.stack-elec.co.jp/?p=261
www.satellite.co.jp/coaxial-cable.html
https://www.doujiku-hikari.com/coaxial/connector/type/

FPC用コネクタ

FPC用コネクタとは

pc用コネクタ

FPC用コネクタとは、回路部品であるコネクタの1種です。

FPCと呼ばれるフレキシブル基板を接続します。機器内部の基板同士の接続に用いられるため普段目にすることはありません。

FPC用コネクタの使用用途

FPC用のコネクタは電子機器内部のリジッド基板に実装され、FPCの接続に利用されます。具体的には、自動車、医療機器、携帯電話、ノートパソコン、液晶テレビ、デジタルカメラ、ゲーム機器などです。

FPCやFPCコネクタは、電化製品の小型化や省スペース化に大きく貢献しています。電化製品やポータブル機器はさらに小型化が進む傾向にあり、今後の需要も増えていく見込みです。

FPC用コネクタの原理

FPCコネクタは、電気信号の接続を行うコンタクト部分と、コンタクト部分を保護するためのハウジング部分から構成されます。この構成は、通常のコネクタと同様です。

コンタクト部分の材料は金属です。の表面を金や銀、スズで表面処理した導通性の良い材料が用いられます。異種の金属同士の接触による腐食等を避けるため、接続対象であるFPCの表面処理と同種の金属を選択することが多いです。

ハウジング部分には、樹脂が利用されています。リジッド基板上に半田付けされるため、樹脂には耐熱性樹脂が使用されています。コンタクト部を覆うようにして金属端子の変形や破損を保護します。コンタクトとハウジングは、一度挿入したFPCをロックして勘合を維持する構造を取ります。

FPCコネクタの構造

前述したように、FPCコネクタにはロック機構があります。このロック機構には、ZIF構造とNon-ZIF (N-ZIF、非ZIF) 構造の2種類があります。

1. ZIF構造

ZIF構造では、コネクタに挿入したFPCをレバーでロックします。ロックした際に端子同士が接触します。

挿入に必要な力が少なく摩擦が軽減できるため、数十ピン以上の端子数でも作業性や接触性に問題が出づらいです。そのため、多くのFPCコネクタに採用されています。

2. Non-ZIF構造

Non-ZIF構造では、ばね性のある端子に対してFPCを圧入するように差し込みます。圧入するため差し込むだけでロックがかかります。

差し込むだけで接続が完了するため作業性は良いものの、摩擦が大きくなりコネクタ自身やFPCを破損させる恐れがあるため、数十ピンを超える端子数には不向きです。

FPCコネクタの種類

FPCコネクタは4種類に大別されます。FPCの接続方向で2種類、ロック機構で2種類あるため、2×2の組合せで下記4パターンに分類されます。

  • 水平接続ZIF
  • 水平接続Non-ZIF
  • 垂直接続ZIF
  • 垂直接続Non-ZIF

接続方向は、水平接続と垂直接続の2種類です。水平接続では、リジッド基板と水平にFPCを挿入します。垂直接続では、リジッド基板と垂直にFPCを挿入します。

ロック機構は、ZIFとNon-ZIFの2種類です。ZIFはFPCコネクタに挿入したFPCをロックレバーで固定する構造です。Non-ZIFにはロックレバーはなく、金属コンタクト部分にばね性を持たせるなどしてFPCを圧入気味に押し込んで固定する構造をとっています。

FPCコネクタの選び方

FPCコネクタには、前述した項目以外にも選ぶ上で考慮すべきパラメータがあります。使用用途や搭載する機器の特性に合わせた部品を選ぶことが大切です。

1. 端子間ピッチ

電極の中心から隣の電極の中心までの距離をピッチと呼びます。FPCの配線ピッチに合致したコネクタを選択する必要があります。

2. FPCの厚み

勘合の安定性と電気的な接続安定性を保証するために、FPCの厚みに合致したコネクタを選択する必要があります。

3. 電極数

リジッド基板やFPCの回路設計に応じて、適切な電極数を選択する必要があります。

4. 接点表面処理

信号の導通性や腐食防止の信頼性の観点から、接点がFPCと同じ金属となるようにコネクタを選択する必要があります。

5. 接点方向

FPCとの接点には上・下・両面の3種類が存在します。使用する機器の構造に併せて適切な接点方向を選択する必要があります。

6. 信号の種類

大電力用、高速伝送用など、FPCを通す信号の特性に合わせて専用のコネクタを選択する必要があります。

参考文献

https://www.elephantech.co.jp/pickups/how-to-choose-flex-pcb-connector/
https://ac-blog.panasonic.co.jp/nyumon_connector
https://ac-blog.panasonic.co.jp/

リセッタブルヒューズ

リセッタブルヒューズとは

リセッタブルヒューズ

リセッタブルヒューズとは、ヒューズとして過電流を防止する役割を果たしつつ繰り返し使用できる電子部品です。

ポリスイッチまたはポリヒューズとも呼ばれます。導電性ポリマーを使用したPTCサーミスタで、ヒューズとは基本的な原理が異なります。ヒューズは過電流が流れると加熱によってエレメントが切れることで回路を遮断します。

それに対して、リセッタブルヒューズは過電流によって素子内部の温度が高くなり、抵抗値が増大することで電流を制限します。ヒューズよりも小型な製品が多いため省スペース化が可能で、構造が壊れにくく衝撃や振動にも強いです。

リセッタブルヒューズの使用用途

リセッタブルヒューズは、繰り返し過電流が流れるような回路の保護に使われています。高密度の実装で故意に短絡させる場合にも使用されます。以下は、リセッタブルヒューズの使用用途一例です。

  • 小型モーターやスイッチング電源
  • 衛星放送受信機
  • 火災報知器
  • 電気カーペット
  • スマートフォンやタブレットなどの通信機器
  • コンピュータ

ただし、リセッタブルヒューズは電子部品を使用するため、大電流回路には不向きです。高圧回路保護用の限流ヒューズなどには、エレメント溶断によるヒューズが使用されます。

リセッタブルヒューズの原理

リセッタブルヒューズは、導電性ポリマーが金属の電極箔にはさみこまれている構造です。電極箔に接続するようにはんだ付けもしくは溶接でリード線が取り付けられています。PTCサーミスタと同じ原理であり、電流が大きくなると抵抗が大きくなる性質を持っています。

導電性ポリマーは、絶縁体ポリマーにカーボンやニッケルなどの導電性粒子を分散させています。量や材質を変化させることで、抵抗値の調整が可能です。抵抗値変化は10,000から1,000,000倍にも達する場合もあります。

過電流によりリセッタブルヒューズ内部温度が高くなると抵抗値が増大し、電流を制限します。リセッタブルヒューズはヒューズと異なり溶断せずに、内部の温度が下がればまた電流の流れが元に戻ります。そのため、繰り返し使用することが可能です。

電流値が高くなって温度が変化すると、急激に抵抗値が増加する性質があります。これは導電性ポリマーが融解するため発生する現象です。ただし、微小な電流の増加では反応性が低い場合があります。

リセッタブルヒューズの選び方

リセッタブルヒューズは定格電圧、定格電流、実装方法などを基に選定します。

1. 定格電圧

定格電圧は、リセッタブルヒューズが使用に耐える電圧の高さです。定格電圧を超えて使用すると、回路の破損や焼損などが発生する危険があります。

一般的にはDC72V程度の製品が多く販売されています。定格電圧が高い製品として、AC240Vの製品も市販されています。したがって、耐電圧が400V系統以上の製品が必要な場合は特注することになります。

2. 定格電流

定格電流は、リセッタブルヒューズが使用に耐える電流の高さです。定格電流を超えると抵抗値が高くなり、電流値を制限します。

一般的には数A程度の製品が多く販売されています。市販品は、最大で20A程度が限度です。

3. 実装方法

実装方法は、リセッタブルヒューズを取り付ける方法です。表面実装や差込端子実装などの製品が販売されています。

表面実装
表面実装は基板上にはんだなどで固定する実装方法で、差込端子実装と比較してスペースを取らない利点があります。ただし、表面実装の電子素子は小型の製品が多く、手はんだでの実装は正しい知識と技能を必要とします。

メーカーによっては、手はんだでの性能を保証しない場合も多いです。

差込端子実装
差込端子実装は、リード線をプリント基板に差し込む実装方法です。プリント基板には部品を取り付けやすいようにリード線取付穴が開口されており、そこに差し込んで実装します。さらに、部品を固定するために、取り付け穴にはんだ付けするのが一般的です。

差込端子実装は部品を簡単に実装可能ですが、スペースを多く必要とします。ただし、手作業で部品を実装する予定であれば、差込端子実装を選定する方が無難です。

参考文献
https://www.rs-online.com/designspark/article-18-jp
https://detail-infomation.com/poly-switch/
http://www.op316.com/pdf/fuse/polyswitch_summary.pdf

安全機器

安全機器とは

安全機器とは、自動化された装置の安全対策に寄与する機器の総称です。

可動範囲が大きかったり、大きな力や回転部を持つ工作機械や製造装置が稼働していたりするときに、人が近づくと巻き込まれなどの事故につながる可能性があります。そのため、装置の周りを安全柵で囲うなどの対策が必要です。

しかし、柵で覆うだけでは省略行為などで作業者が柵を開けて稼働中の装置に近づく危険性もあります。そのようなリスクを無くすために、多くの工作機械や製造装置は安全柵が開いている場合は装置が停止するような安全装置を組み込んでいます。安全装置に使用される個々の機器が安全機器です。

安全機器の使用用途

安全機器は、製造装置など安全対策を怠ると事故が発生するリスクが高い装置に組み込まれている場合が多いです。例えば、大量生産ラインでは大型ロボットなど、多くの機械が高速動作を行っています。これらの機械は制御プログラムによってコントロールされていますが、人の検知はできないため、機械に近づいた作業者に接触して怪我をさせるなどのリスクが潜んでいます。

このようなリスクを下げるために、機械の周りの安全柵にドアスイッチを設置したり、ライトカーテンのようなセンサー検知型の安全機器を取り付けたりする場合がほとんどです。製造装置や工作機械に使用される安全装置は、「インターロック」とも呼ばれます。インターロック機構は、装置のドアやカバーを開けると装置が停止するように構成されています。

安全機器の原理

安全機器として代表的なドアスイッチの仕組みは、以下の通りです。

ドアスイッチは開閉するドアの両側にスイッチが設置されており、ドアが開いている状態では電気回路が遮断されていますが、ドアが閉まると接点が閉じるように設計されています。ドアスイッチは2種類あり、両端の端子が機械的に接続されることで接点が閉じる機械的なドアスイッチと、リードスイッチの接点開閉に専用のアクチュエータに内蔵された磁石の磁力が使用される非接触式のドアスイッチです。

磁力を用いる場合はドア自体の接触が不要になるため、機械的な接触に比べて様々な用途に対応しやすいという利点があります。ドアスイッチのような回路を遮断するタイプの安全機器に対して、カバーや蓋などアナログに装置と人を遮断する安全機器もあります。つまり、装置の可動部に手や頭などが入らないように物理的にふさぐ手法です。

現場ではこのような安全機器を導入するだけではなく、非常停止ボタンも合わせて用意して緊急時は全ての動作を即座に停止できるようにすることも重要と言えます。なお、安全装置は装置のメインの制御装置とは独立していることが望ましいです。安全装置が装置のメインの制御システムの支配下にあると、メインの制御システムに不具合が生じた場合、装置を安全に停止させることができなくなります。

安全機器の種類

代表的な安全機器は以下の通りです。

1. 安全スイッチ

機械の動作を制御するためのスイッチです。作業者が緊急時に機械を停止できるようにします。一般的な例として、緊急停止スイッチやフットスイッチが挙げられます。

2. 安全センサー

安全センサーは、機械の周囲や作業領域で人や物体の接近を監視したり、ドアーやカバーの開閉を検知したりするセンサーです。光電センサーや近接センサーなどが一般的な安全センサーの例です。

3. 安全スピード制御装置

安全スピード制御装置は、機械の動作速度を制御するための装置です。作業状況に応じて機械の速度を制限することにより、危険な状況や事故のリスクを軽減します。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/safetynavi/feature/
https://tabetainjya.com/archives/koneta/_h/

プローブカード

プローブカードとはプローブカード

プローブカードとは、半導体の製造工程におけるウェーハレベルの検査に必要な器具です。

ウェーハ検査装置に取り付けて使用されます。半導体のコストの多くは製造設備で決まりますが、製造段階においてはパッケージ本体やパッケージングのコストも大きく影響します。このため、半導体としての製造工程を終えたウェーハレベルで製品の良否を判定し、良品だけを以降の工程に送るとコストを抑制することが可能です。

1枚のウェーハ上には数百~数千個のチップが並んでおり、これを個々に切断してパッケージングする前に良否を判定して選別する工程がウェーハ検査であり、ここで必要となるのがプローブカードです。

プローブカードの使用用途

ウェーハ検査は、チップに対してテストパターンと呼ばれる電気信号を入力し出力信号パターンを期待値と比較して判定するLSIテスタと、1つ1つのチップの電極端子に正確に信号接続するためのチップレベルの位置決め制御を行うウェーハプローバと、チップ内の数百~数万の電極端子に正確に当たるように位置決めされた同数の針 (プローブ) を持つプローブカードで実施されます。

このため、プローブカードはチップのデザイン毎に専用に作成する必要があり、それ自体にコストが掛かる上、使用による摩耗等により再作成も必要となりますが、製造コスト全体を考えると必須です。半導体チップはコンピュータだけでなく、生活の中のほとんどの製品の中で無数に使用されており、プローブカードはその支えの一つです。

プローブカードの原理

プローブカードは、ウェーハプローバ上に取り付けられ、ウェーハプローバを介してチップの電極端子とLSIテスタをつなぐコネクタの役割を果たしています。

LSIテストヘッドにはスピリングコンタクトピンや高密度ピンが接続用に実装されていますが、半導体チップの電極端子の配置ピッチは狭いもので数十ミクロンとテストヘッドのピンの配置密度よりも微細なため、プローブカードを介して両者を接続することが必要です。

プローブカードの構造

プローブカードの上側の面にはテストヘッドとの接続端子、下側には半導体チップの電極端子と接続するための針が取り付けられています。

テストヘッドとプローブカードの接続端子を繋ぎ、更に半導体チップの電極端子とプローブカードの針を繋ぐことで電気的な接続を構成し、LSIテスタからの電気信号による良/不良の判定をすることでシリコンウェーハ上の1つ1つの半導体チップに対して検査を行います。

プローブカードにはアドバンスト型、カンチレバー型があり、アドバンスト型は垂直型の端子が付いたブロックが基板に取り付けられていてプローブの配列が自由でメンテナンスしやすいです。カンチレバー型ではプローブがブロックを介することなく基板に直接取り付けられており、狭ピッチの端子に対応しやすい特徴があります。

プローブカードのその他情報

ウェーハ検査における微細で高度な信頼性を求められるため、プローブカードはセラミック製の基板が多く用いられています。例えば京セラの場合、DRAMフラッシュメモリやロジックデバイス等のプローブカード用に薄膜単層や薄膜多層のメタライズ付きセラミック多層基板が用いられています。

一般的に、LSI又はシステムLSIと呼ばれる大規模集積半導体回路の信号接続部分は、その端子にスプリングコネクタや高密度コネクタが用いられています。プローブカードはこのテストヘッドと検査対象のウェーハとの間の仲介役としての役割も持ち、高度な接続信頼性と電気検査性能機能を求められているため、その機構も材料も繊細です。セラミックなどの材料が使用されています。

しかし、プローブカードの耐久性には限界があり、物理的な衝撃による僅かな歪みでも使用目的を満たせず、修理も困難な消耗品でもあるため定期的に交換する必要があります。

参考文献
https://www.seiken.co.jp/semiconductor/probecard.html
https://news.mynavi.jp/article/20200603-1047480/

サマコバ磁石

サマコバ磁石とは

サマコバ磁石とは、 希土類磁石 (通称: レアアーズ磁石) のうちの1つです。

ネオジム磁石も希土類磁石一種で、希土類の元素を主成分とした永久磁石を指します。サマコバ磁石の正式名称は、サマリウムコバルト磁石です。サマリウムとコバルトが主成分で、強力な磁力を持ちながら、熱にも強い特性を持ちます。

また、サビにも強いためメッキの必要が無く、非常に使いやすい素材です。ただし、硬度が高いために、欠けやすく非常に脆い点がデメリットです。

サマコバ磁石の使用用途

サマコバ磁石は熱に強く、温度に対する安定性が高いのが特徴です。そのため、高温環境下で使用される製品によく使用されています。身近な例では、電子レンジやオーブンなどの家電製品などが挙げられます。電子レンジ内に設置され、真空管デバイスであるマグネトロン内に使用されています。

また、サマコバ磁石は、高温となるモーター・イグニッションなどに使用され、車載用磁石として好適です。さらに、サマコバ磁石は製品の小型にも好適であり、各種アクチュエータや小型磁気センサー、マイクロスイッチや小型リレー、レーザー機器などにも使用されています。

サマコバ磁石の性質

サマコバ磁石はサマリウムとコバルトが主成分であり、鉄を含まないことからサビに強い特性をもちます。また、サマコバ磁石はキュリー温度が高いため、熱に強く高温環境下での使用に耐えうる素材です。

キュリー温度とは、強磁性体が常磁性体に変化する温度です。言い換えれば、強磁性体はキュリー温度を超えると、磁力を失うため、キュリー温度が高いほど高温に耐える磁石になります。

サマコバ磁石のキュリー温度は約700~800℃であり、高温に対して非常に高い耐久性を有しています。ただし、サマコバ磁石はその希少性から価格が高く、常に変動するためコストが高くなりやすい点がデメリットです。

サマコバ磁石のその他情報

1. サマコバ磁石の発火

サマコバ磁石は熱に強い反面、条件によっては発火するおそれがあり、取り扱いに注意が必要です。特に、磁石表面が乾いている状態やきれいに研磨されている状態では発火しやすく、低い温度で燃えてしまう可能性があります。

また、サマコバ磁石は他の磁石と比べて脆く、衝撃によって欠けやすく、使用方法によってはサマリウムコバルト合金の微粉末が生じる場合があります。一般的に、希土類などの金属粉末は、燃えやすい性質です。

そのため、消防法の危険物第二類 (可燃性固体) 第一種の危険物に指定されています。摩耗や欠けによりサマコバ磁石の粉末が生じるような状況を避けて、安全に使用する必要があります。

2. 希土類磁石とサマコバ磁石の歴史

1960年代頃より希土類磁石の研究が行われてきました。それまで、元素自体が強磁性を有する「鉄、コバルト、ニッケル」の組み合わせが主流でした。しかし、鉄やコバルトなどの強磁性材料に希土類元素を組み合わせると磁石としての性能が大幅に改良されることが発見されました。それ以降、希土類磁石の研究が行われています。

1966 年に米国の研究者により,コバルトに希土類元素であるイットリウムを混ぜた化合物が磁石に適していると発表しました。70年代には希土類元素であるサマリウムをコバルトに混ぜると飛躍的に性能が向上するとわかりました。そののち、日本の俵好夫博士がサマリウムとコバルトを主成分とするサマコバ磁石を発明して現在に至ります。

なお、俵好夫博士が発明したサマコバ磁石は、Sm2Co17をベースにを含有させたものです。そののち、TDKが東北大学・金子・本間博士等の研究を受け継ぎ、1976年にSm2(Co,Fe,Cu,Zr)17の複合組成系で最大エネルギー積が30MGOeの高性能磁石の工業化に成功しました。

このSm2(Co,Fe,Cu,Zr)17の複合組成系のサマコバ磁石は、ソニーのウォークマンの初代機のモータ部に搭載され、当時としては圧倒的な小型・軽量化を実現しました。

参考文献
https://www.magna-tokyo.com/jishaku/smco/smco
https://www.neomag.jp/products_navi/smco/smco_introduction.html
https://www.neomag.jp/mag_navi/mames/mame_seibun.html
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/60/Snet60-1.pdf

ネジ研削盤

ネジ研削盤とは

ネジ研削盤

ネジ研削盤とはその名の通り「ネジを削りだす工作機械」です。ねじは「ねじ切り」と呼ばれる、金属材料に規定の溝を削ることで制作されています。 ネジ研削盤はその削り取る作業を行うための工作機械となっています。そのため、ネジを製造するうえで、欠かすことのできない工作機械なのです。

ネジ研削盤の使用用途

ネジ研削盤はネジを製造するときに必要になる「ねじ切り」と呼ばれる作業を行う工作機械です。

ねじを作成する方法としては、「転造」か「切削」と呼ばれる作業が行われています。それぞれの方法をご紹介します。

  • 転造
    転造とはネジを大量生産するために開発された方法です。名前の通素材を金型で挟みながら転がすことによって、溝を掘る方法となっています。 塑性変形と呼ばれている、一定以上の力を描けると元に戻らなくなる性質を利用しています。
  • 切削
    切削がネジ研削盤で使用されている方法となっています。こちらも文字通り、金属を削り取ることでねじ溝を掘ります。 精度が高く、多くのねじが切削を利用して作られています。デメリットとして削り取るので切りクズが出てしまう点などがあります。

ネジ研削盤の原理

ここでは切削によるねじの製造を解説します。 切削は前述の通り、金属を削り取ることでねじを製造する方法です。 切削のメリットとして、最大のメリットは「精度が高い」という点があげられます。転造は金型を押し付けて塑性変形させる方法なので、その時の温度や金型の耐久によって出てくる精度が変わってしますので、精度が出にくい場合があります。 切削では1つ1つを数mmの精度で加工することができるので、かなり精度を出せることがわかると思います。 そのため切削によるネジ加工は、精度が必要な少量生産や、試作品の加工などに使用されています。 ただし、切りくずが出てしますので、転造よりも処理が増えてしまう点も大量製造に向いていないポイントとなっています。 ねじ研削盤ではねじを自動的に削り取ることで、かなりの精度を出すことができる工作機械となっています。

参考文献
https://www.skenma.jp/use/screw.html

フライス盤

フライス盤とは

フライス盤

フライス盤とは主に金属などの固い材料を削り、目的の形に仕上げるための工作機械です。素材を削って目的の形を作るという意味では「旋盤」と 同等ですが、「旋盤」では材料を回転させる。「フライス盤」では刃物やドリルを回転させる。との違いがあります。

フライス盤の使用用途

フライス盤は部材を削って目的の形を作る工作機械です。 単純に部材を削り取り、彫刻のように形を作ることが主な使用用途です。その他にも、ドリルなどを取り付けることで任意の位置に穴あけなどの加工を施すことも可能です。 フライス盤には刃物を取り付ける主軸が動く範囲によって、使用用途が異なります。一般的なフライス盤は立体フライス盤とされており、表面から立体を削りだす加工や、R面の加工に使用することができます。 フライス盤は1つで外形と穴あけの作業を行うことが可能なので、非常に使い勝手のいい工作機械となっています。

フライス盤の原理

ここではフライス盤の動作原理や種類について解説します。 フライス盤はまず素材を台に固定し動かしません。代わりに刃物が付いている主軸を回転させ、それをXYZの三面に動かすことで、立体を削りだすことができます。 ただし、フライス盤には大きく分けて2種類あり、1つが「ベッド型」もう1つは「ヒザ型」と呼ばれているものがあります。それぞれの動きをご紹介します。

  • ベッド型
    ベッド型では主軸がZ方向の上下に動くことができます。XY平面上はテーブルが動くことによって素材を動かすことができます。大量生産の現場ではベッド型が優れているとされています。
  • ヒザ型
    ヒザ型では主軸を動かさずに、テーブルが上下左右方向に動くことによって、部材を移動させます。最も汎用性が高いフライス盤とされています。 フライスでは取り付ける切削工具によっても役割が異なります。その中でも代表的なものを紹介します。
  • 正面フライス
    平面を削り取ることができる最も一般的なフライスの工具です。切削能力が高く、また刃先を交換することで再利用が可能となっています。
  • 側フライス
    外側に刃を持ったフライスで、主に側面の切削加工を行う工具です。サイドカッターとも呼ばれています。
  • エンドミル
    外周加工や、穴あけ、溝加工、などができるドリルに似た性能を持つ切削工具です。非常に万能な工具なので様々な加工に利用されています。

フライス盤の工具

フライス盤は主軸工具を交換することで様々な加工を施すことができます。

フライス盤で最も一般的な加工である平面加工にはフライスカッターを使用します。フライスカッターはよく使われる工具なので、大きさも様々ですし、荒削り用と仕上げ加工用もあるので、切削する範囲や1回の取り代によって最適なカッターを選定します。

フライスカッターと並んで使用頻度が高い工具で、側面加工や溝加工、薄板の穴あけ加工ができる工具がエンドミルと呼ばれる刃物です。エンドミルは、側面と底面に刃がついていて、材料の側面と平面を加工することができ、段付き加工や溝加工に最適な刃物です。

エンドミルには、底面がフラットになっているスクエアエンドミル、底面の刃先にRを付けて剛性を高めたラジアスエンドミル、刃先が球面になっているボールエンドミルなどの種類があり、得意分野がそれぞれ異なっていますので、同じエンドミルでも加工方法によって選定していく必要があります。

また、ドリルを用いてボール盤のように穴あけ加工もすることができ、ドリルでの下穴加工から高精度穴を加工するリーマやボーリングカッター、ねじ切りに使うタップまであらゆる工具が使用可能で、一連の穴あけ加工はすべてフライス盤では可能となっています。

フライス盤の特徴

フライス盤は旋盤と違って刃物が回転して切削していくという特徴に加え、立て型と横型、汎用やNCフライスと、実に様々な種類があることが特徴です。ひとつずつ解説していきます。

立て型は、地面に対して主軸が垂直方向に取り付けられたフライス盤で、作業性が高く、最も普及しているフライス盤です。

横型は地面に対して平行に主軸が取り付けられていて、溝加工や切断に適しています。加工した際に排出される切りくずが重力で落ちていくので、治具に切りくずが溜まりにくい特徴がありますが、立て型に慣れるとXYZの方向を間違えやすいので注意が必要です。

汎用フライスは、手動でハンドルを操作して加工し、人の手で寸法を調整していく手作業用のフライス盤で、1点もののオリジナル作品を作るのに適しています。

NCフライス盤は、NCプログラムを用いて自動的に加工することができ、量産加工に向いています。

参考文献
https://www.kousakukikai.tech/milling/#i-12
https://www.senban.jp/nyuumon/10.html
https://www.furaisuban.com/info_01_2.html#1
https://www.kousakukikai.tech/milling/#i-3

ワイヤ放電加工機

ワイヤ放電加工機とは

ワイヤー放電加工機とは、水や油等の液体の中で電極となるワイヤーに通電させることで発生する液中放電現象により加工材料の加工を行う工作機械です。

通電させたワイヤーは液体の中で火花を起こし、熱によって溶融した金属が液体により冷却・飛散を繰り返すことで、加工材料の外形部を形成していきます。加工用のワイヤーには、直径が0.05~0.3mm程度の極細の真鍮 (黄銅) ワイヤーが使われています。

また、加工に使用するワイヤーから電気を放電させるだけで加工材料には直接接触しない非接触での加工のため、電気を通す性質を持つ材料であれば、原理的にはどんなに硬い材料でも加工できるという点が特徴です。

ワイヤ放電加工機の使用用途

ワイヤ放電加工機は、非常に硬い材料を精密に加工する必要がある場合に用いられます。具体的には、プレス金型の製作や超硬工具の刃先加工などです。

ワイヤ放電加工機は、電気を通す素材であればなんでも加工できます。例として、超硬合金チタン、ステンレス、モリブデン、インコネルなどが挙げられます。ただし、加工対象の大きさや素材により、加工時間が異なる点に注意が必要です。

ワイヤ放電加工機の原理

ワイヤ放電加工は、加工材料を装置の加工液に浸した後、以下のような流れで行われます。

  1. 加工液内で、絶縁状態にあるワイヤと加工材料が接近する。
  2. 火花放電を開始し、パルス電流が流れることで、何千度もの温度が発生し、加工材料が溶ける。
  3. 発生した高温によって加工液が水蒸気爆発を起こし、この衝撃で溶けた金属が吹き飛ばされ、除去される。
  4. 除去されて加工材料にできた凹部分に水が入り込んで冷却される。

上記の流れを加工したい形状に沿って繰り返すことで、ワイヤ放電加工による加工が行われます。「どんなに硬い材料でも加工可能」、「精密な加工が加工が可能」といった利点がありますが、一方で、上記のような加工方法となるため、基本的に加工速度は遅く、大量生産には不向きです。

また、底部分を残した加工や水平方向の加工はできないという欠点もあります。

ワイヤ放電加工機の特徴

ワイヤ放電加工機の特徴は、主に以下の3つがあります。

1. 様々な形状の加工が高精度で可能

ワイヤ放電加工機は、あらかじめ登録したプログラムに沿って極細のワイヤで加工を行うため、複雑な形状でも高精度で加工することができます。その特徴を活かした例が、微細なギアの加工です。

ギアは部品としての特性上、「軸穴の形状が真円に近いこと」「歯先形状が正しいこと」など、加工精度がギアの性能差に繋がりやすいです。微細ギアでは、φ0.05mm以下の寸法精度での加工が必要となることがあります。しかし、切削加工などの通常の加工方法では、この精度を実現するのは難しいです。

これに対し、ワイヤ放電加工の場合は極細のワイヤを用いるため、ギア中心部の穴や歯先形状なども寸法通りに加工することができます。

2. 難削材の加工が可能

放電時の電気エネルギーで加工材料を切断していくため、導電性の材質であればどれだけ硬くても加工できます。この特徴を活かした例が、超精密プレス型加工です。プレス型は、プレス加工時に非常に高い圧力がかかるため、金型の材料として硬度の高い金属素材を使用します。

切削加工などの通常の加工方法では、複雑な形状を高い精度での加工することが難しいため、ワイヤ放電加工による切断加工が用いられています。

3. 加工材料に外力がかからない

ワイヤ放電加工は非接触で加工するため、加工材料に負荷がかかりません。そのため、め切削・切断加工と比べ、切断面にバリが発生せず、面取りの作業が不要になります。

ワイヤ放電加工機の構造

ワイヤ放電加工機の構造は、以下のもので構成されています。

  • ワイヤ
  • ワイヤを送り出す駆動装置
  • 加工材料を設置するテーブル
  • 加工液を貯める加工槽
  • 脱イオン装置
  • 電源ユニット
  • NC装置

放電するための回路はコンデンサー放電回路とトランジスター放電回路の2種類に分かれており、トランジスター放電回路はコンデンサー放電回路と比較して、放電時の電気エネルギーを制御することが可能です。

出力を大きくすると加工速度が向上しますが、切断部の面粗さが粗くなります。反対に小さくすると加工速度は遅くなりますが、面粗さは細かくなります。 

参考文献
https://seizotimes.com/
https://bisaikakou.net/