絶縁コーティング剤のメーカー6社を一覧でご紹介します。まずは使用用途や原理についてご説明します。
目次
絶縁コーティング剤とは、コーティング剤のうち絶縁性の膜をコートできる製品です。ポリイミド系、エポキシ樹脂系など、含有する成分にはさまざまな種類があります。
コーティング対象の物体に絶縁コーティング剤を用いると、表面に絶縁性の高い膜が形成されます。この絶縁性の膜によって物体から電気が漏れにくくなるため、漏電による感電事故の防止などに有効です。
絶縁コーティング剤の塗装方式としては、スプレーやディップなど一般的な方式以外に、より均一に塗装できる静電塗装や電着塗装なども普及しています。
絶縁コーティング剤を用いてコーティングすると、電圧に対する耐性を高めることが可能です。主に自動車や家電製品など、高電圧がかかる製品の部品の絶縁処理に用いられます。
たとえば電気自動車やハイブリッド車は動力として電気を利用しているため、バッテリーやモーターなどの周辺部品に高い電圧耐性が要求されます。電圧に対する耐性が不十分だと漏電が生じる可能性があり、場合によっては火災などの事故につながってしまうのです。そのためこうした部品の絶縁コーティングは、事故防止において重要です。
絶縁コーティング剤は、絶縁性の高い絶縁体を対象物の表面にコーティングする製品です。絶縁体は電気を通さない物質であるため、耐電圧性が要求される対象物に使用できます。
物体における電子のエネルギー準位には、価電子帯と禁制帯、そして伝導帯の3つが存在します。この3つの中では、価電子帯、禁制帯、伝導帯の順に高いエネルギー準位です。一般に電子は、エネルギーが低い価電子帯からつまっていく性質があります。
導電性に大きく影響するのは、エネルギーが高い伝導帯の電子です。金属などの導電体では、一部の電子が伝導帯に存在しています。この伝導帯の電子が自由に動くことによって、電気を通すことができるのです。
一方絶縁体では、価電子帯に電子が存在しますが、伝導帯には存在しません。電子は光や熱のエネルギーを用いて、低いエネルギー準位から高い準位に励起することが可能です。しかし絶縁体は、価電子帯から伝導帯まで電子を励起するために、多大なエネルギーを必要とする性質を持っています。このため、実質的に電子を伝導帯に励起することが難しく、電気が通らないのです。
プリント基板において、耐久年数よりも早期に故障の原因となるのが錆です。これを防ぐために、防湿絶縁コーティング剤が使用されています。これにより長期間の使用ができ、安定稼働するといったことから、人気の高い技術です。
しかし、人気なために安定した生産ができなくなりました。その理由は二つあります。
一つ目は、乾燥時間です。防湿絶縁コーティング剤の乾燥時間は24時間とされており、もともと大量生産に適したコーティング剤ではありません。このため、需要に対して生産が追いつかないことが課題です。
これにより考えられた対策が、加熱温度の設定です。加熱温度を上げることで、乾燥時間を短縮することが可能です。しかし、ラインの増設、ランニングコストの増加といった障害が発生します。なにより、製品を痛める懸念があるため、実現とはなりませんでした。
二つ目は、コーティング剤の代用です。これは同等以上の防湿絶縁性、速乾性が求められます。そして、その条件にあったコーティング剤を見つけることが課題です。
しかし、現在使用されるコーティング剤に代わるものを見つけられませんでした。
これら二つの理由から、防湿絶縁コーティングしたプリント基板の安定した生産は難しいとされています。その課題は、ランニングコストと乾燥時間、代用がきかないコーティング剤であることです。
防湿絶縁コーティングしたプリント基板の安定した生産のため、新しいコーティング剤が模索されました。そして発見されたコーティング剤が、フッ素系コーティング剤です。これは、ランニングコスト、乾燥時間といった、これまでの課題を全て解決する性能をもちます。
防湿絶縁性はもちろん、柔軟性、防水性、耐熱性などにも優れています。また、不燃性のため、引火の可能性がなく安心です。そのほかにも、低い粘度を利用して、細かい隙間への塗布も可能です。
最大の特徴は、高い速乾性です。フッ素系コーティング剤は、15分で完全乾燥が可能です。これにより、乾燥時間を大幅に短縮します。
そして驚くべきは、その乾燥温度が25℃であることです。加熱の必要がなく、高コストなラインの変更、増設は必要ありません。
このコーティング剤の導入により、最小限のライン設計で、防湿絶縁コーティングを施したプリント基板の大量生産を可能にしました。"
参考文献
http://www.motogoh.com/service/insulation.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/67/12/67_682/_pdf/-char/ja
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https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2019/19-0325.html
http://www3.muroran-it.ac.jp/hydrogen/lec/ceram_file/Ceram07doc.pdf
http://kccn.konan-u.ac.jp/physics/semiconductor/basic/2_2.html
https://www.agc-chemicals.com/jp/ja/library/case/005/index.html
https://www.agc-chemicals.com/jp/ja/library/case/005/index_2.html
https://www.agc-chemicals.com/jp/ja/products/detail/index.html?pCode=JP-JA-G020
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